前頭葉:補足運動野(SMA)について
前頭葉の中にある、補足運動野(以下:SMA)は前回お伝えしたM1の前に存在しブロードマンのマップでは6野に相当します。
本日はそんなSMAについてまとめていきます
SMAの役割ってなに?
SMAの役割を主に3つにまとめてみました。それは…
①運動プログラムの生成(記憶依存性)
②両側性の協調動作
③複数動作の順序制御
の3つです!
この3つを詳しく解説していきます!
まず1つ目の
①運動プログラムの生成(記憶依存性:インターナルループ)って?
私たちは普段何気なく『歩く』が、ただ歩いているわけではなく何かしらの目的があって歩いています。
例えば、『トイレに行きたい』から歩く
『お腹がすいた』から、コンビニまで歩く
といったように、『トイレに行きたい』・『お腹がすいた』など前頭葉で思考(内的欲求)が生まれ
⇩
じゃあ歩いてトイレまで行こうか(行動計画)
⇩
歩く(記憶を元に動く:記憶誘導性の運動)
といった流れで運動が生じます。
この『内的欲求』→『行動計画』までの流れは、SMAで計画を立てておくと言われています。
これらの計画があってこそ、M1で運動を起こすことが可能となります。
簡単に言うと、運動の計画書がSMAで立てられると言うようなイメージですね。
しかし!!あくまでこれらは、今までの過去の記憶を元にした(記憶誘導性)運動になります。
これが、今まで脳が記憶したことがない運動(=やったことのない運動)を行うとなると..
例えば、アイススケートをしたことがない人がいきなり今から初めてトリプルアクセルを一発で決められることが可能か…と言われると、想像できるかと思いますが、できないんですよね。
そもそもスケートの上を滑ることすら困難な方の方が多いと思います。
これはなぜ、トリプルアクセルを決められないのかと言うと、
トリプルアクセルを行うとなっても、頭の中で企画ができない
(なぜ企画ができないのかというと、過去に経験がないから)
⇩
SMAなどが働かず、運動の実行ができない
と言うような流れになると言うことですね。
記憶依存性=経験依存性 と言うことになるわけです。
SMAの情報をもとにM1で実行されるので、SMAにトリプルアクセルの計画書が必要になると言うわけです。
その計画書は、経験するとゲットできると言うような感じですね。
②両側性の協調動作
次に、②両側性の協調動作について説明していきます。
次の画像は、左のサルは何も障害がない
右のサルはSMAに障害があるサルになります
左のサルは右手でエサを押し込んで左手で取るという計画が立てられており、きちんと実行できていますね。
しかしながら、右のSMAに障害があるサルは左右の手を協調的に使う計画が立てられないので、右手でエサを押しても左手でキャッチできていません。
SMA単体で傷害されても、運動麻痺は生じないと言われています。
しかしながら、SMAが傷害されている右側のサルは運動麻痺がないのにも関わらず、左手でキャッチができていません。
運動麻痺がないのに、左手でキャッチができない
これも、経験(記憶)に依存していると言われており、過去の似たような場面から照合していると言われています。
もし、臨床場面で運動麻痺は軽度なのに左右の協調的な運動ができない方がいらっしゃったら、SMAに障害があるのかな?と想定することが可能になります。
③複数動作の順序制御
最後に、③について解説していきます。
以下の画像は、
A)記憶・学習された手順・動作(いつもの着方:麻痺側の右肩まで通して左手を通す)
B)記憶・学習されていない手順・動作(いつもと違う着方:右肩に通す前に左手で着込む)の画像になります。
Aはいつもの着方(学習された着方)になるため、SMAが働いてスムーズに実行できています。
しかし、Bでは普段とは少しでも異なった着方になてしまうので、SMAにこのBの着方は学習されておらず、SMAが働くことができません
そのため、Bでは少し手こずったような着方になってしまい、スムーズに運動が実行できていませんね。
記憶されていないような手順での着方は、SMAは活性化しない
といことになります。
同じ着替え方でも、手順が少し変わるだけでSMAはこの着方を『経験(学習)していない着方』と判断してしまうので、SMAは活性されないということになります。
なぜ活性されないのかをおさらいすると、SMAは記憶をベースに運動を組み立てるところだからということになります。
しかしながら、SMAは繰り返し練習することで活性化する(経験がたまってくる)と言われているので、Bの普段とは違う着方を繰り返し行っていけば、経験として積み立てられ、最終的にはBでも動作獲得できるようになり、徐々にスムーズに運動を行うことができるようになると言うことです。
臨床場面で、反復練習が大切!と言うことをよく耳にしますが、脳科学の観点から見ると、このこと言っているのかもしれませんね。
SMAに病変がある方に対して反復練習は特に大切になるということです。
以上がSMAについての解説となります。
脳科学の観点から臨床を見ていくと、なんだか面白く感じますね
次回は、前頭葉の運動前野についてまとめていきます。
本日もご覧いただきありがとうございました。!