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クロスポイント 完結編〜ひまわりとの約束。

※お知らせ:当作品「クロスポイント」専用の
単独のマガジンを
クリエイターページに設置致しました。
よろしくお願いします。
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前編です。

中編からの続きになります。

前編、中編をご覧頂いてから
完結編をご覧頂けたら
幸いです。

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「その丘にある十字路の中心は
「想い」が天へと通じる場所」


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丘へ向かう車の助手席で、
僕は記憶の中にいる彼女と向き合っていた。

小さい頃の僕は
弱虫で寂しがり屋。
よく泣いていたし
些細ないたずらで泣かされていた。


それをいつも庇ってくれていたのは
他でもない彼女。
いつしか、彼女もいたずらのターゲットに
されてしまった。


自分の事には強気だったのに
ある日、確か親への悪口だったと思う。
大泣きしていたっけ。

いつも庇ってもらってた僕だけど
泣かせた奴に言い返す勇気は無かった。
一生懸命折った鶴を渡したのは
励ます事しか出来なかったから。

...それを最期の日まで
ずっと持っていてくれた。


彼氏との別れ話の時、彼女の目に
泪の跡があったのを覚えている。
別れたのがショックだったと思って
過ぎた事を忘れてほしくて
茶化したつもりだったけど

あれは違う意味だったんだ。
自分のした事への後悔と
僕に気持ちを気付いてもらえない
心の痛みで泣いていたんだ。

別れる最後の瞬間までふざけ合っていたけど
お母さんの病気の事もあって
本当は身も心もボロボロだったんだ...


バカだ...本当にバカ...。
会いに行く資格なんて僕にあるのか...


「帰りたい。」

思わず口に出てしまった。


「一生後悔するよ。」

普段はサバサバしてる姉が
静かに、厳しく言い放った。
刺さってしまった。

「会うのが怖い」「会いたい。」

対極する感情が心を殴りつける。


この期に及んで決着は付かないまま

フロントウインドウの向こうから
丘への入口が近づいてくる...

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「想いの届く丘」

そこにあったのは

舗装がボロボロになった道と
季節が過ぎて
役目を終えた様に頭を下げる
萎れかかったひまわり。
そして...


「想いが届く」割に
人っ気一つ感じない。


荒んだ丘に、夕日が差す。

踏ん切りのつかない気持ちのまま
車を降りる。
その丘に...


彼女の面影を感じる。

僕は十字路へ向けて
歩みを始める。
ボロボロの折り鶴を握りしめて。

自分の意思で足を動かしている訳じゃない
心の中の記憶が足を動かしてる。
一歩ずつ、ゆっくりと...

そして

とうとう十字路へたどり着いた。
たどり着いてしまった。


怖い。


恐る恐る空を仰ぐと
真上に黒い雲が立ち込めていた。


雨粒が落ちてきた。
彼女を感じる。
感覚が高まっていく。


もう抑えるものなんて何も無い。
心が、想いが理性を突き破り
天高く叫んだ。



「俺...俺...
君が!!」


叫んだ瞬間、雨が
強く、激しく打ち付ける。
地面を、僕を。


まるで
子供のときに泣きじゃくっていた時の
君の様に。


聞こえた。


十字路に打ち付ける
雨の音の音階が、

君の声が。


「ゴメンネ。」

そう言って、

雨の中で

手を押さえて
泣きながら震えてる
君が見えたんだ。


「好きだ!
君が好きだ!!」


十字路に崩れ落ちた。
溢れて止まらない涙。
僕は獣のように
叫ぶ、吠える、止まない泪の空へ。


泣き続ける君へ。

 

届け、届け!届いてくれ!!


「好きだ!好きだ!
うぁあああああああああ!!」




...



...



...


もう声が出なくなった。雨は止んだ。

僕は十字路に倒れ込んで動けない。

「届いたかな、俺の想い...」


車から降りてきた姉がタオルを
掛けてくれた。そして
僕の目の前を指差した。

萎れていたはずのひまわりが
一輪だけ
泪の雨粒をきらめかせて
咲いていた。

そこに、泣き止んだ君の笑顔が
見えたんだ。


ずっと、ここにいたい。
君を見ていたい。でも...

君はそれを望まないんだよな。
ひまわりが、また少しずつ萎んでいるから。

俺、明日へ行くよ。
だから、さよなら。
ありがとう。

十字路から起き上がって
手を振った。

ひまわりに夕日が当たった。
暖かい光。



「アリガトウ。」



君がそう言ってるように見えた。


帰る車に乗り込む前に
振り返って
もう一度見た
丘に咲いたひまわりは


他のひまわりのように
すでに萎んでいた。

僕と君は、つかの間だったけど
やっと一つになれた。
そして、お別れできた。


新しい道へ進むために。

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あの後知った事だけど

実は姉はあの丘で愛を叫んでいなかった。
行ったことすらない、と。

結婚相手の父があの街に暮らしていて
彼女のお父さんが仕事仲間だった事から
結納の時に
あの丘の話になったらしい。

姉が気を聞かせてくれていた。


姉から丘での話を聞いた彼女のお父さんは
肩の荷が降りたように号泣していたと
聞いた。


地元に帰った僕は
吹奏楽に本気で取り組む様になった。

気になっていた先輩が声を掛けてくれたのは
僕のチェロの実力に一目置いてくれていた
だった。
...異性としてはむしろ無理って言われたけど。


俺、いつかプロのチェロ奏者になって
あの日の
「嘘のような奇跡」を曲にして
演奏してみたいと思ってる。

でも、分からないかな。

「俺と君だけの
嘘みたいな秘密の恋物語」に
しておきたい
そんな気持ちもあるからさ。


未来あしたの交差点をどう進むか、
僕の選ぶ道を見守ってて欲しい。

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「その丘の十字路の中心は
「想い」が天に通じる場所。
「今まで」と「これから」を指し示す

クロスポイント。」


※この物語はフィクションです。





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