就活なんてやってられるか(泣)

僕は大学を卒業するにあたって、1万3千字以上の卒業論文を書かなければならなかった。本を読み漁って、引用して、それについて抗議や共感をする。それには、自分の持ちうる力を出し切らなければならない。
小説は趣味として書いていたが、卒業論文はまったくの初見である。それに加えて、初見の就活を同時進行するなど、僕にとって酷すぎた。
だから、卒業してから就活をすることにした。


少し語弊があるのでもう少し話すと、3回生の時点で就活に関する履修とセミナーは義務としてあった。必修なら仕方ない。全部受けた。行動はしてないけど、知識だけ増やしている感覚である。


本来なら大学4回生の春の時点で、履歴書をたくさん出して、面接にこぎつけて、8月頃には内定をとる。
──なんていうのがセオリーかもしれない。

「50社エントリーした」
「履歴書の手書きがつらい」
「面接で落ちまくって心折れた」

在学中、就活生の口からは、たいてい辛い言葉ばかりが飛び出していた。

かく言う僕も疲弊していたのだが、ほんの少し、周りとは違う方向性で悩みを持っていた。

卒業論文だけでもかなり精神力を使うのに、そこに並行して就活をぶち込むのは、苦行以外の何者でもない。
二兎追うものは一兎も得ずである。やろうと思えば、両立出来たのかもしれないが、そこまでして頑張れる精神力を僕は持ち合わせていなかった。


しっかりと確実な方法を取りたい僕は、就活を卒業後にした。当然、両親に反対される道である。しかし、就活を含む社会人としての第一歩。責任を取るのは両親ではなく、自分自身である。


就活を始めた時点で、責任はすべて自分のもの。


自分でうまく責任を取れないのなら、リスクをおかしてまで、周りに合わせる必要はない。

新入社員は、離職率を考えて3年以内であれば、新人として認めてくれる会社は多い。いわゆる、第二新卒である。卒業後1年以内に内定を貰えなかったからと言って、焦る必要はないのだ。

僕自身考えはあるものの、その事が両親にはうまく伝わらず。在学中、ほとんど就活をしない姿に、両親からのプレッシャーは精神に堪えるものだった。
何故か、僕より両親の方がかなり焦っていた。きっと従来の方法から、外れたやり方をしていたからだろう。

しかしながら、お先真っ暗である。
卒業論文のために就活を後回しにしていたとはいえ、学生という時代が終わりを迎えるのだ。どう足掻いても、見知らぬ世界に飛び込まなければならない。自分の在り方にも相当悩んだ。

僕は基本的に競争を好まない性格なので、必死になればなるほど、自身が疲弊していくのである。心にヒビが入る音を聞きながら、それでも生きていくために通らなければならない関門。

父と言い合って、自分で修復不可能な程に心の芯が折れて、死にかけたこともある。
「言葉の刃が鋭くて、時に人を自〇に追いやるってこういうことなんだろうな」と、体感してしまった。

ちなみに我が家は、喧嘩らしい喧嘩がほとんどない。父と毎日狭い台所で、じゃれあって遊ぶほど仲が良いことを補足しておく。
どんなに仲が良くても、時にぶつかれば、とんでもないクリティカルヒットをかまされることはあるものだ。……あって欲しくない現実だが、事実である。

お世話になっていたハローワークの担当者に、心の傷を手当てして修復してくれた時は、これ以上ない恩を感じた。言葉の傷を、言葉で癒してもらうとは、なんとも皮肉な話である。


最終的に僕は、卒業してから半年間就活にいそしんだ。

履歴書は、5社に提出。
面接は、2社受けた。
インターシップは、2社。1日体験型と3日体験型である。

面接まで行ったのは、近所の銀行と、とある大手製造業。受かったのは大手の1社だけ。

面接をした5時間後に内定が来た時は、吹っ飛んで驚いた。「2週間ほど待て」と言われていたので、それまで待つつもりだったのだが……。
既に帰宅して、私服に着替えて母とのんびりしていた時だったが、すぐさま学校とハローワークに報告しに行ったのを覚えている。


僕が言えるのは、「周りに合わせるのも時には大切だが、自分のペースで進めて欲しい」ということだ。

たくさんエントリーすれば、その分、内定先を選ぶ選択肢は増える。普段入れない会社にお邪魔して、貴重な体験をすることもできる。経験に勝るものもないので、自由に活動して良いと思う。

僕は卒業して半年後の中途入社だったので、同期が居ない。4月にある入社式に出たこともないが、頼れる先輩社員は居る。頼れる人が居るのなら、僕はそれ以上求めるものはなく満足している。


人生は、どの道に行っても間違いはない。
しんどいなら毎日帰り際に、自分にとびきりのご褒美をするのもアリだ。山あり谷あり、好きなことして楽しんで、寝て、気張らない程度に就活に挑んでほしい。

#就活体験記

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