青写真 | 未来 | #シロクマ文芸部
青写真を描いて生きろと言われても、常に俺の頭の中は明日、あさってのことでいっぱいで、未来なんて見えていなかった。将来の職業を思い描き今を努力している友人もいたが、ほとんどのクラスメイトはあまり先のことまで考えていなかったように思う。いやそう思い込んでいた。
しかし、クラスメイトたちは違った。就職活動の時期となり、こんな企業がいい、福利厚生はこれくらい、賞与は月給の何倍、こういう会社へ行きたいんだと希望を語り出したのだ。
青写真を描いていないのは自分だけだったことに愕然とした。
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今、自分は中小企業に勤めている。
勉強をしてこなかったので、学校推薦をうけられるのは無名の企業だけだった。もちろん有名企業の求人もたくさんあったけれど、それは成績優秀者たちが根こそぎもっていった。それは当然のことだ。世間では無名の今の会社に入社することは嫌ではなく、むしろ考えずに就職先が決まり、ありがたかった。
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社会人になって5年、仕事も覚えたし困っていることもない。
同年代と比べると給料は少ないが、実家暮らしなので困ることはない。
だからこの仕事に満足している。
最近、職場の後輩女性のことが気になっている。
彼女は仕事をそつなくこなし、職場を笑顔で明るくしてくれるアイドル的存在だ。
告白してみようか…でも…
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会社の飲み会で、偶然と彼女の隣の席になった。
これはチャンスかもしれない。
でも何を話したらいいのかわからない。
彼女は皆に酒を注がれれば飲み干し、また注がれれば飲み、すっかりいい気分になっているようで饒舌だ。
俺はますますしゃべれないで、ただ隣で笑っていた。
「私、高みを目指さない人キライなんですよね!」
「向上心がないのって人としてどうなんだ!ってことですよ!」
どきりとした。俺のことだ。
何か聞かれたらどうしよう… 資格も取得しろと会社には言われているが、のらりくらりと胡麻化して勉強などひとつもしていない。
俺はだんだんその場が居心地悪くなってきた。
それ以来、彼女と話すことが怖くなり、彼女を避けて仕事をするようになった。
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彼女は数年後、同期の出世頭と結婚した。
当然の結末だ。
俺はどうなんだ…
青写真はいつになっても、何歳になっても頭に浮かばない。
未来ってなんだ。
将来ってなんだ。
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「ごはんはまだ?」
「母さん、夕飯はさっき食べたよ!」
これが俺の未来だったのか?
俺が青写真を描かなかったからなのか…
何が正しかったのかいまだにわからず、日々の生活に追われるのであった。
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「青写真」から始まるお話を書きました。
シロクマ文芸部 さんの企画に参加しました。
※2024.2.2 18:42
タイトルがあまりに露骨なので修正しました。
申し訳ありません。