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野生のポルチーニ茸をドキドキしながら食べる

パリ郊外の宿を出て車を走らせること30分、森沿いの道に出た。

何があるわけでもないのに車が6、7台とまっている。森に入って行く人も森から出てくる人もバスケット(籠)を持っている。そこから覗いているのは、走っている車からもそれとわかる大きなキノコだ。

急いで車を止め、バスケットはないので買い物用のエコバックを掴み、森へ向かって歩き出した。


と言っても、いったいどんなキノコをどんなところで探したらいいのか。

誰かに訊ねようにも、さっきまで赤ちゃんとバスケットを両脇に抱えてその辺にいたカップルはすでに森の彼方。仕方なく適当に森を歩いていくと、袋をもった初老の男性がいた。

「キノコですか?」
「いや栗だよ」

山栗も捨てがたいが、キノコが先だ。時どき栗も拾いながら、さらに先に進んでいくが、それらしきキノコは見つからない。あっても、どう見ても毒がありそうなシメジに似たキノコや、食べると幻覚の現れることで有名なベニテングダケなどしかない。

ところがその時、何かに見つめられているような気がした。

ふと少し先に目をやると、木も草もない少し開けたところに、傘も柄もぷっくりとした大きなキノコが、文字どおり「立って」いる。

ヨーロッパを舞台にした絵本やおとぎ話では、こういうキノコは大抵、毒があったり魔法にかかっていたりと罠がある。しかし、その姿はいかにも端正で美しく、何よりも美味しそうで、わたしは罠にかかるのを覚悟でそれを地面からもぎ取った。

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