【利尻島編】大人の自分探しの旅
ひとりになりたい。海が見たい。
亡き母との思い出がないところに行きたい。
30歳を前に自分探しの旅、始めました。
2019年、季節は夏。
私は北国へ向かいました。目的地は利尻島。
飛行機で稚内まで行き、そこからはフェリーで。本当は飛行機で利尻島まで行く予定だったのですが、天候事由の欠航で急遽フェリーになりました。利尻島行きの飛行機の欠航はよくあることみたいなので、お気を付けくださいね。
最初は南国へ行こうと思ったのですが、夏休みの南国は家族連れが沢山いるだろうな、と。南が駄目なら北へ、そんな単純な思考回路で利尻島行きを決めました。
「よそはよそ、うちはうち」
今ならよく分かります。私が隣に居て欲しいのは私の母であって、他人の母ではない。でも、当時は気持ちが不安定だったので、羨ましかったんです。よその母娘を見ると「母親が生きてていいな」「なんで私の隣には居ないんだろう」って思ってしまわずにはいられなかった。
何故、利尻島だったのか。
理由は簡単で、車を運転出来ないからです。
ネット曰く「自転車で島一周出来る」とのことでしたので。結果、申し上げると、無理でした。ママチャリは玄人ですが、それ以外は素人。
休憩を挟みながら8時間程漕ぎましたが、3/4程でのリタイアとなりました。
利尻島の中央にある登山の名所「利尻富士」は、曇天で残念ながらお目にかかることは出来ませんでした。北海道銘菓「白い恋人」のパッケージは利尻富士とのこと。
大変失礼な話なのですが、私、利尻島に関して「自転車で1周出来る」という知識しか持っていなくて…自転車を漕いでいると沢山沼と遭遇し驚きました。後、雲丹と昆布のお店が沢山あり、美味しく頂戴致しました。
自転車を漕いでいる間、私は念願のひとりになれました。
外で大きな声で叫ぶなんて、大人になってから初めてで。最初は恐る恐るでしたが、すぐに慣れてしまいました。だって、本当に周りに人がいない、どころか民家もなかったので。誰の目も気にしないで、大声で歌い、笑い、文句を言い、泣きました。自分の感情を自由に解放出来て、それが空気に溶けていく。とても心地良い時間を過ごすことが出来ました。
小さい頃から海を見ることが好きです。
私は自己肯定感が低い癖に、負けず嫌いなんです。誰でも彼でも構わず、構劣等感を抱かずにはいられなくて。でも、海は広いな大きいな、ではないですけど、圧倒的な存在過ぎて勝てないと本能が分かっているから。海の前では素直になれます。
ひとりになりたい、そう思って始めた旅でした。ですが、結果、人のやさしさに触れた温かい旅になりました。
トイレを貸してくれた民家のおばあちゃん、ありがとうございました。
公衆トイレ及び民家全くないエリアが複数あるので自転車旅の方はご注意を。下手すると次のトイレまで3時間自転車漕ぎます。
自転車で島1周を諦めた時に車に乗せて宿まで送ってくれたおじさん、ありがとうございました。最初、警戒心むき出しでごめんなさい。なのに、お土産屋さんまで寄ってくれてありがとうございました。
地元の方曰く、街灯が少ないため陽が落ちた後のサイクリングは危険とのことでした。
私はひとりになりたくて、誰とも関わりたくなくて、利尻島に行きました。
でも、ひとりになるのって難しいなって思いましたし、本当はひとりになりたくないんだろうな、とも思いました。人のやさしさって中毒性があって、一度やさしさを知ってしまったら、知らなかった状態には戻れない。
「やさしさは鏡」という言葉が私は好きです。他者のやさしさを素直に受け止め、やさしさを返せるような人間でありたい。
心の鏡が雲ったら、また旅に出よう。