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能登半島地震における立教独自の災害ボランティア活動がスタート!|立教チームでつなぐ被災地支援プロジェクト【第1弾】
立教大学ボランティアセンターでは、「令和6年 能登半島地震」の発生を受けて、「立教チームでつなぐ被災地支援プロジェクト(令和6年能登半島地震)」を立ち上げました。
立教独自のつながりを活かし、支援活動の拠点を「石川県七尾市和倉温泉」に設定。
今回は同地域の復旧・復興に向けた支援の第1弾として、7月1日(月)〜3日(水)の2泊3日で活動を実施しました。
学生たちは現地でどのような被害を目の当たりにしたのか、どのような思いでどんなことに取り組んだのか、活動の記録をぜひご覧ください!
「立教チームで活動する被災地支援プロジェクト(令和6年能登半島地震)」の概要
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立教大学ボランティアセンターでは、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に対する支援活動として、「立教チームで活動する被災地支援プロジェクト(令和6年能登半島地震)」を立ち上げました。
活動拠点は、石川県七尾市和倉温泉としています。
ボランティアを含めた支援者の動向を注視したうえで、七尾市が「奥能登に向かう支援者の通過点となってしまっている現状があり、支援を受けることができていない状況」にあること、さらに、同市内の観光地である和倉温泉には本学の卒業生が経営する旅館がある複数あり、「立教ならではのつながりを生かした支援を実施できること」から、同地域での活動を決定しました。
プログラム開発・現地での調整
6月には、ボランティアセンター長とボランティアコーディネーターが現地入りし、石川県七尾市内を回って、ボランティアニーズの確認とプログラム開発を進めました。
最初に訪れた「七尾市災害ボランティアセンター」では、七尾市社会福祉協議会の担当者から七尾市における地震被害の状況やボランティアの受け入れ・活動状況についてお聞きしました。
今回の能登半島地震では、奥能登までの交通経路に被害が出たり、道路が緊急車両が優先となったりしたことから、ボランティアの受け入れ自体にも苦労されたようです。
様々なお話をお聞きした中で、特に印象的だったのが、「七尾の人にとって、和倉温泉は誇りなんだ」と話されていたことです。
観光地というと地域外から観光客が訪れるイメージですが、それだけでなく住民の方々も人生の節目に和倉温泉の高級旅館を使用していたそうで、様々な思い出が詰まった場所であるとのことでした。
「復興したら全国から多くの観光客に来てほしい」ともお話しされていましたが、支援活動の拠点として検討していた和倉温泉がどのような場所なのか、その復旧・復興にどのような意味があるのかを深く考える機会となりました。
その後、本学の卒業生で「株式会社加賀屋」の人事部で働く新井初音さん(交流文化学科 卒)にご案内いただき、和倉温泉へ。
和倉温泉にある老舗旅館「加賀屋」は本学の卒業生である小田禎彦さん(経済学科 卒)が代表取締役を務めており、新井さんをはじめ多くの卒業生が働いています。
「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合1位を通算40回以上獲得するなど、国内外で高い評価を得ている旅館ですが、今回の地震による被害から現在は営業休止中です。
新井さんとは、縁あって事前に学内でお会いする機会があり、その際に今回の本プロジェクトについて相談させていただいていました。
ここでは、「株式会社加賀屋」の方々とお打ち合わせをさせていただいたり、加賀屋内をご案内いただきその被害状況を伺ったりした他、新井さんがつなげてくださった「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」の宮西直樹事務局長、宮西事務局長がつなげてくださった旅館「宝仙閣」の帽子山定雄会長・優社長とお打ち合わせの機会をいただきました。
どの方もそれぞれが大変な状況であるにも関わらず、復興に向けて前向きに話していたことが強く印象に残っています。
ここでの打ち合わせを踏まえて、和倉温泉の地域全体の復旧・復興を、我々がボランティアとして後押しすることが決定しました。
プロジェクトの目的と軸
プロジェクトの目的は、「令和6年能登半島地震における災害被災地の復旧・復興に、⽴教チームとして貢献すること」です。
参加する学生にとって、被災地が学びの場になることは間違いありませんが、学生の学びのために被災地があり、被災者がいるわけではありません。
あくまでも私たちは、被災地の復旧・復興が実現するように取り組んでいきます。
また、本プロジェクトでは活動の軸に、以下の3点を設定しました。
1.被災“地”の支援を通して、被災者を支援すること。
七尾市災害ボランティアセンターに訪れた際にスタッフの方からお聞きして印象的だったのが、「和倉温泉は七尾の人の誇りだ」というお話だった。
日本一の旅館として有名な「加賀屋」をはじめ、多くの旅館が立ち並ぶ和倉温泉は、日本全国・世界各国から旅行客が集まる日本有数の温泉街である。さらに、地元の方にとっては、人生の節目を祝う際に利用されるなど、多くの思い出が残っている場所でもある。
しかし現在は、観光地であることから同地域が支援対象としての優先順位が低くなっており、地震発生時の被害がそのままの状態で残っているところも多い。
そこで本プロジェクトでは、地元の方々が誇りとする「和倉温泉」という地域の復興を通して、被災された方々がこの地域に愛着をもち、住み続けようと思えるように支援を続けていきたい。
2.現地の声に寄り添い、現地の方々と共に復旧・復興に取り組んでいくこと。
復興支援の内容は、現地の方々の声に寄り添い、ボランティアニーズを丁寧に拾い上げながら調整していく。
また、その活動自体を現地の方々と共に進めていくことで、被災地の方々が前向きに未来を拓いていけるようにしていきたい。
3.⽴教チームとして、活動者が次の活動者へバトンを引き継ぐことで、継続的な支援を実現すること。
被災地への継続的な支援を実現するため、人が入れ替わりながらも立教生が次の立教生へバトンつなぎながら、”立教チーム”として活動を展開していく。
事前学習
いよいよ第1弾の活動が始まります。
募集期間は短かったものの定員を超える人数の申し込みがあり、選考を経て6名の学生の参加が決定しました。
6月28日(金)には、池袋キャンパス ボランティアセンターにて、現地での活動に向けた「事前学習」を実施。
参加者の顔合わせをしたうえで、プロジェクトの目的や軸を共有しながらチームビルディングを行いました。
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ボランティア活動自体が初めての学生もいましたので、災害ボランティアに関するレクチャーは丁寧に行いました。どんな装備・服装で活動するのか、どんなことに気をつけなればならないのかなども、細かく伝えたことで、学生の不安が軽減されたように思います。
最後に今回の活動における個人目標を設定し、現地での活動に向けた準備を整えました。
7月1日(月)【初日】の活動
「令和6年能登半島地震」の発生からちょうど半年を迎える7月1日に本プロジェクトの活動が本格的にスタートしました。
道中に、「地震から半年」というタイミングで一気に増えたメディア報道から情報を得たり、車窓から地震被害の残る街並み(屋根にブルーシートがかけられている家など)を見たりしたことで、だんだんと自分自身が被災地に向かっていること・被災地に来ていることへの実感が強くなっていきました。
和倉温泉地域の被害状況を確認
和倉温泉に到着後は、宿泊先である「宝仙閣」に荷物を置いて、早速周辺地域を歩いて回りました。
その際、地域を案内してくださったのは、今回のボランティア受け入れ担当者である「株式会社加賀屋」の新井さんです。
和倉温泉の観光名所を案内していただいたり、「加賀屋」及び周辺の護岸の被害状況、街並みの変化などについて説明いただいたりしました。
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多くの観光客で賑わっていたであろう場所も、閑散としていて工事業者のトラックが通る音が目立っていました。
また、意識して歩かないと躓いてしまうほど道路が凸凹しており、地震の影響が大きかった様子が窺えました。そして何より、その状況が半年経った現在でもそのままになっている現状を目の当たりにし、支援の必要性を改めて実感しました。
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「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」へのご挨拶
その後、今回の活動にあたって事前の調整段階からご協力いただいていた「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」を訪問。スタッフの方々にご挨拶をさせていただきました。
宮西事務局長からは、地震発生当時の状況(避難の動きなど)や和倉温泉における旅館の被害、復興に向けてまとめてきた「創造的復興ビジョン」などについてご説明いただき、学生たちの質問にも丁寧にお答えいただきました。
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翌日の活動場所である「加賀屋姉妹館 あえの風へ」
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続いて、「加賀屋姉妹館 あえの風」を訪問。
同旅館の久村支配人に館内をご案内いただきながら、地震直後の様子や現在の被害状況について見聞きしました。
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館内は地震の影響で天井が崩れたり、壁が剥がれたりしていたため、安全を確保しながらその被害状況を見て回りました。
客室の多くは、地震発生当時のままの状態になっており、慌てて避難したような痕跡や地震で落下した金庫がそのままになっている様子も確認できました。
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この日は、「令和6年能登半島地震」の発生からちょうど半年だったのですが、私たちが訪れる数時間前には、岸田総理も「あえの風」を訪れ、護岸や館内を視察されたそうです。
この半年間を被災者の方々が長く感じたのか、短く感じたのかはわかりません。
しかし、ちょうど半年というタイミングでだんだん見かけなくなっていた報道などが一気に増えたこと、地震直後から時間が止まっているような被害状況を自分たちの目の前にあることに、もどかしさを感じました。
夜の「ふりかえり」
夕食後には、一日の活動の「ふりかえり」を実施しました。
本プロジェクトにおける記録の蓄積は、オンラインツール「miro(ミロ)」を活用して行っているのですが、オンラインのボード上にその日の活動スケジュール・メンバーの動きを記載しているので、まずはそれに対して、それぞれがもっている情報をボードに書き出していきました。
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黄色い付箋には「事実・聞いたこと」を、ピンク色の付箋には「自分で考えたこと」を、青い付箋には「疑問・モヤモヤ」を書き入れ、それぞれの動きに対してボードに貼っていき、そこからそれぞれにとって印象深かったことを語っていきました。
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また、「本プロジェクトのゴールとは何か」についての意見交換や、活動後に開催する「活動報告会」に向けた話し合いも行いました。
学生ボランティアである私たちに何ができるのか、この現状を身近な立教生にどのように伝えていくかなど、明確な答えのない問いに対して、一人ひとりの考えを共有しながら議論を深めました。
実際に行ってみると自分が想像するよりも現状は深刻で、もっと継続して報道し、支援を呼びかける必要性を感じた。自分にできること、立教チームとしてできること、プロジェクトの最終目標の設定など新たな課題の輪郭が見えてきたので明日の自身の行動に生かしていきたい。
一番感じたのは町の人の温かさであった。震災が起こったことを受け止め、起こったからこそできることを模索しているように思えた。
実際に行って率直に感じたことは、ほんとに言葉が出ないほど、想像以上の被害だった。その上、この景色が昨日、一週間前に起きた出来事ではなく、半年も経っていることに、驚き、こんなにも作業が進んでいないのかと思った。でも、メディアにとり上げられる機会はみるみる減っていて、宮西さんが忘れてほしくないと言っていたことも、凄く心に響いて、そこに私たち学生にできることがあるのではないかと思った。
また、この街の関係人口を増やす、学生・若者に和倉温泉に関心をもってもらうためにはどうすればいいのか、まだまだ答えは出ないけれど、考えていきたい。
また、この報告会のやり方も学生の関心を考えると難しかった。でも、全体を通して、立教大学として支援をしていくが、できる限り早く、私たちの必要がなくなることがこの街の復興を意味するのではないかと思った。
まだ私たちはこの街にとってお客様である。もっと、心を開いていただけるようになって、事実を伝えてもらうだけでなく、本音を聞けるような関係性を築いていきたいと感じた。
7月2日(火)【2日目】の活動
メインの活動日である2日目は、前日館内を案内いただいた「加賀屋姉妹館 あえの風」で備品の運び出し作業に取り組みました。
スタッフの方々と共にオリエンテーションに参加
朝9時に集合し、他のスタッフの方々とその日の活動のオリエンテーションに参加。活動の流れや各作業の手順を確認し、実際の作業を開始しました。
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作業開始!
この日の目標は、「4階の全客室における備品運び出しを終えること」です。
これまでスタッフの方々は、1階部分から備品や什器の整理作業を行ってきたそうで、4階→5階→6階→・・・と、だんだん階数を上げていくような流れで作業をしていくとのことでした。
館内のエレベーター2基はなんとか修繕したものの、備品を集積する下階と客室のある上階を行き来するのは一苦労です。
旅館が震災による営業休止中のため、全国各地にスタッフが出向している状況もあり、日常的に作業できるわけでも、その作業を一気に進められるわけでもありません。
だからこそ、今回は立教生のボランティアがスタッフの方々と共に作業を進めていくことによって、必要とされている作業のスピードを上げていくことを目指しました。
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↓↓↓ 活動の様子(動画)はコチラ ↓↓↓
暑さとの戦い
実際に作業に取り組んでみると、想像以上にハードでした。
冷房がないため、階が上がれば上がるほど室温が高くなり、一つひとつの作業における疲労度も高くなります。さらに、安全確保のためにヘルメットやマスク、長袖・長ズボン、長靴を着用していたため、作業中は体から滝のように汗が流れました。
それぞれ熱中症にならないように気をつけながら、小まめに水分補給・休憩をしながら作業を進めました。
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各客室では、細かい備品から廊下に運び出していき、続いて、布団やテーブルや椅子、空気清浄機などの大きいもの、金庫などの重いものという順番でさらに運び出していきました。
一度、廊下に出した備品は、エレベーター2基で下の階に降ろします。
備品の種類によって移動させる場所が異なるため、館内の上階と下階を何往復もしながら台車で移動させました。
エレベーター待ちやお昼休憩の時間には、スタッフの方々とお話しさせていただき、一人ひとりが震災前にはどのような立場で旅館に関わっていたのか、現在どのような思いで作業しているのかなどをお聞きしました。
被災地に住む方々、被災地で働く方々の声に触れ、報道等を通した情報だけでは見えなかった震災の実情を知りました。
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作業中に意識していたこと
作業中は、どうしても「早く作業を進めよう」という意識になってしまいがちですが、スピードを上げることによって作業自体が雑になってしまうのでは意味がありません。
というのも、この備品の中には貴重な美術品や伝統工芸品、高価な寝具なども多くあります。それらに傷がついたり、壊れてしまったりすると再利用することができなくなってしまうのです。
再利用にあたっては、当然経済的な損失を軽減することもその意図としてあるのですが、それだけでなく思い出や歴史が詰まった備品をこれから先につなげていくという意味もあります。
愛着や思い出は、ボランティアにとって目に見えない(見えにくい)ものですが、この旅館に関わる方々にとっては大切にしたいものであることは間違いありません。だからこそ、今回のボランティア活動では、それらをいかに大事にできるかがボランティアに求められるように感じました。
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時間が止まった客室
客室によって被害の違いもありました。
今回の地震による館内での死者はいなかったとのことでしたが、重く硬い壁が剥がれ、座椅子に覆いかぶさっている客室もあり、宿泊者の方々は本当にぎりぎりで避難したのだなと感じました。
また、テーブルの上にみかんが置いてあったり、畳の上に食べかけの大福が置いてあったりする様子は、まさに正月。
哺乳瓶や子どものおもちゃが置いてあった客室もありました。
みかんや哺乳瓶の中身は当然腐って黒くなっているのですが、数分前までそこに人がいたのではないかと感じさせるような雰囲気もあり、時間が止まっているような不思議な感覚に陥りました。
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作業終了
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16時前には作業が終了。
目標としていた4階部分の作業は完了し、5階部分の途中まで作業を進めることができました。
最後に全員が集合し、進捗などを確認して解散。
たった一日の作業でしたが、少しでも復旧・復興の力になれていたら嬉しいです。
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夕食後に、屋台村へ
宿泊先である「宝仙閣」で夕食後には、被災した飲食店が集まって営業している「和倉温泉屋台村」へ。
たまたま、「あえの風」のスタッフの方々と遭遇し、日中とはまた違う距離感で、現状への思いを伺うことができました。
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夜の「ふりかえり」
前日と同様に、オンライン上のボードにそれぞれ記録した後、それらを共有しながら一日の活動をふりかえりました。
以下は、学生の記録の一部です。
地震の被害にあった建物の内部をそのまま見れて、当時の状況が頭に想像として浮かんできた日であった。
肉体的に大変なことが非常に多く、このような活動を何回もされている方々を見れば、若者の私はもっとできるはずだと思った。
今日はボランティアの立ち位置を深く考えた1日だった。私たちは労働者でもなく、お客様でもない曖昧な立場であるので、あえの風のスタッフの方々をはじめ多くの方々とフラットな交流ができたと感じる。
特に今日は共に具体的な作業を経験したことで、震災に対する主に視覚的情報からの具体性を高めつつの共有がかなった。それは抽象的である被災状況を映し出した画面を眺める経験、経済的な合理性が優先される経験ではなく、目の前の「自分ごと」として捉えることができた経験と言えるのではないだろうか。
一方でこの経験を一回限りにしてしまうことは「自分ごと」が単なる私の思い出の一つに化してしまうと感じる。私にとって継続していくことの重要性は自分の目標と照らし合わせると、和倉温泉を持続的に活気づけることにある。
今回お世話になった方々にとっても単に思い出の一つになってしまわぬよう、彼らの自分ごとに対して真摯に向き合い、重ね合わせられるような関係性を築いていきたい。
現地の方ともっと、色々なことを聞きたかったけれど、自分の発言によって相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないと思ってしまい、どう質問していいのか難しかった。
また、今日は作業がメインであまり話すことができなかったけれど、自分たちはまだまだこの町にとってお客様であり、気を使われている。もっとお互いの本音を話せる(こちらの本当の気持ちも伝わっていないと感じたため)関係になるためにも通い続ける必要があると思った。
一回限りでは、単なる興味できたと思われそうだ。
7月3日(水)【3日目】の活動
3日目は、午前中の電車で和倉温泉駅から帰路につきました。
電車の出発まで短い時間でしたが、初日と同様、加賀屋の新井さんに案内いただき、能登島や七尾市街地を回りました。
能登島、七尾市街地へ
七尾市街地は、和倉温泉と比べて住家が多いのですが、特に「一本杉通り」周辺では多くの家が崩れたまま、もしくは今にも崩れそうな状態のままになっていました。
解体しようにも工事業者の順番待ちで、見積もりすらとれていないところも。生活再建に向けた道のりの長さを改めて実感しました。
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帰路へつく
和倉温泉駅では、新井さんと久村支配人にもお見送りいただきました。
最後にメッセージを書いた立教ビブスをお渡しし、再訪を誓って帰路につきました。
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現地での活動を振り返って
活動を終えた学生たちは、何を感じ、何を考えていたのでしょうか。
学生たちが今回の活動の全体をふりかえって記した記録の一部を紹介します。
まず、現地に行くことの大切さを実感した。写真やニュースを見て状況は知っているつもりだったが、実際に目の当たりにするとにおいや空気感が加わって全く違うように見えた。
そして、お話しさせていただいた方々の温かさと、その方たちの明るさの裏に隠れた時々見える悔しそうな表情への気づき、数年後に復興した和倉を訪れた時には見ることができないであろう道路の隆起や、震災発生時そのままのホテル内部、建物のかたむきなど、現地に来なければ無かった出会いと気づきがあった。
また、自分事としてとらえるきっかけにもなった。自分の生活と切り離して考えるのではなく、自分の住んでる地域で起きた時のことを想像したし、帰ったら私の住んでるところはここと違って安全、などと考えるのではなく、地続きな問題であると心から感じるきっかけとなった。
こうしたボランティアを初めて行った自分にとって、ボランティアの在り方を深く考える機会になった。ボランティアはただ困っている人を助けるだけではない。「よそ者としての力」を使って私たちにしか出来ないことをすることが大事であると学んだ。
被災地内部では、協力が難しい場面もあるかもしれない。なぜなら、それぞれで被害の状況が違うため相対的な評価がなされてしまうからだ(行政の判断によって半壊・全壊と状況が異なるなど)。そうした不平等性を、客観的な立場から「力を添える」ことがボランティアの役目である。
この「力を添える」という表現は「力になる」とは違い、ボランティアが去った後もその地の人々が自立するために補助的な役割を持つという意味だ。特に和倉では観光地であるという側面から、震災からの復興だけではなく持続的な未来を目指す必要があるからだ。
(中略)自分がここで学んだことをどう立教大学もっとも東京に持ち帰って他者に発信するかという課題が挙げられる。現状、和倉について大手メディアが発信している情報ではまだ足りない・風化していると感じることが多かった(珠洲や輪島でさえもニュースの放送頻度は減っている)。この問題を今瞬発的に自分が変えられる訳ではない。しかし、身近なところから能登の事を伝えるという行動によって、少しでもプログラムをより大きなものへとしていきたい。
こんなにたくさん考えた三日間はいつぶりだろう。一つ考えてはまた一つ疑問が思い浮かんできたり、答えの出ない問いにぶつかったり、普段の学校生活では使わない部分の脳みそを動かした気がする。総じて感じていたことは人の温かさだった。
宮西さんや新井さんが言うように、本当に絶望した時、辛い時に這い上がるには、人とのつながりが必要なのだ。和倉ではそれを常に感じていた。昨今一人であることを肯定、美化する傾向があるが、それはそれでいいもののやはり人からしか得られないものが、満たされないものがある。
学生ボランティアとして今回和倉を訪れたが、自分にできることの少なさや、被災地の人を理解しようとすることのおこがましさを痛感した。
しかしボランティアという圧倒的他者、部外者だから見ることが出来るものや思いつくこと、感じることがあると思うし、学生ボランティアという立場だから聞くことのできる声もある。
和倉温泉が以前のような観光地に戻るには、私たちが思っているよりも長い時間がかかるかもしれないし、もっと早いかもしれない。その間私ができることは、和倉のことをいろんな人に伝えることだと思う。
忘れないでほしいと言っていた宮西さんや、また絶対にお客様に訪れてほしいと言っていた加賀屋のみなさんの想いは伝えられるべきである。能登半島地震について報道が少なくなっている今だからこそ、現状を伝える努力が必要で、それは私たちができることだと思う。
災害地に訪れることが初めてなこともあり、住民の方々にどう接すればいいか悩まされた。これは行く前も訪れた後も続いた。
災害についてどこまで触れていいのか、不快感を相手が感じてしまったらいけない。例えば、大学にゲストスピーカーとして来られる方は話せる方・伝えたい方のため質問をできるが、災害支援は私たちがその方々のもとへ訪れる仕組みであるため不安であった。
全体の目標であり、私個人の目標でもある「次に繋げる」。そのためにも能登の方々に立教大学のいい印象しか残したくない気持ちが質問をすることにストッパーをかけていた。
しかし、新井さんやあえの風の支配人である久村さんは私たちの疑問や質問に優しくお答えくださったし、質問することに嬉しいとおっしゃってくださった。私たちだけで考えても答えは出ない、敏感になりすぎず、質問していいと知った。関係性、相手の反応や場を見て質問する必要はあるがだ。
災害は私たちの生活に訪れ大きな影響を与える。それはふと来るかもしれないし、事前に予告をしてくれることもある。
今回は私たちが支援者であったが、次は被災者になる可能性は十分ある。しかし、人々は経験をしなければ目をそらしてしまう。能登は1日の半年前に地震があったが、対策を伸ばしてしまった。私たちも同様であろう。災害地に訪れ、被害を知っても、戻ってくれば緩くなる。結局は他人事になるのだろう。
どのようにすれば、他人事にならないのか考える必要があると思った。
この三日間を通して、とにかく色々な感情や気持ちを抱いた。こんなにも感じたことを言葉にするのが難しいと感じた経験はなかった。言葉にはできない感情というものを経験した。
現地に行かないと分からないものがある。伝えようと思えば、被害の大きさは伝えられるかもしれない。でも、その被害受けたうえでの、現地の人の思いや、暖かさ、街全体の雰囲気は行ったからこそ知ることができた。
私は正直、行く前は和倉温泉を知らなかったけれど、足を運ぶことで和倉温泉に特別な気持ちを持つことができた。だから、これからも和倉温泉の現状に関心を持ちづづけるだろうし、またボランティアに行くかもしれないし、東京でできることをやりたいし、何よりも再開したら必ず観光客として訪れるだろう。だから、まずは多くの学生に足を運んでほしいとおもった。
また、今回の三日間を通して、私たち学生ボランティアには何ができるのか、私たちにしかできないことって何だろうかと考えた。これだという答えは見つけられなかったけれど、私たちのような若者が和倉温泉に関心を持つことが大切なのではないか。関係人口を増やすためにも。
そのために、和倉温泉を発信していきたいし、ボランティアとして復興支援をやらせていただくことも、直接的にも間接的にも和倉温泉のためになるのではないだろうかと考えた。
第一弾として、まず立教大学がきてくれたということは知ってもらえたと思う。でも、まだお客様であり、本音を話してもらえる関係性ではなかったように感じた。これから通い続けることで、ただの一回きりではなく、本気で向き合いに来ているということをかんじてもらい、おこがましいかもしれないが、和倉温泉の皆様と共に和倉温泉を復興していけたらいいなと思う。
学内で活動報告会を開催!
第1弾の参加学生は、自分たちが経験したことを身近な人に伝えるため、そして第2弾の活動に参加する立教生にその思いを引き継ぐために、「第1弾の参加学生による活動報告会」を実施しました。
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7月31日(水)の午前中に新座キャンパスで、午後に池袋キャンパスでそれぞれ実施し、関心をもった学生・教職員や、第2弾の参加が決まっている学生が参加しました。
プロジェクトの概要を伝えた後、学生たちが今回の活動スケジュールと活動内容を伝え、最後は小グループに分かれて参加者からの質問に答えました。
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最後に
今回(第1弾)では、新井さん、久村支配人をはじめとする「株式会社加賀屋」の方々、そして「和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合」の方々、宿泊先である「宝仙閣」の方々に大変お世話になりました。
多くの時間を共にした新井さんは、本学の卒業生であること、学生との年齢が近いことから、学生にとって身近な存在に感じられたのではないかと思います。そんな新井さんが震災について語り、自分の職場の一つである旅館の復旧に携わっている姿は、学生にとって大きな刺激になったはずです。
本当にありがとうございました。
第1弾の活動では、「加賀屋姉妹館あえの風」での作業を実施しましたが、これから和倉温泉の地域全体の復旧・復興を進めるためには、活動範囲をさらに広げていく必要性も確認できました。
今回の気づき・学びを次回の活動につなげていきたいと思います。
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