雨乞い式ボードゲーム制作


皆さんこんにちは。りかちと申します。普段は四等星というサークルでゲームを作っています。
最近はコスト変動型でハードパスのワーカープレイスメント『サン・ドニ』を2019秋のゲームマーケットで頒布しました。あれ? ここ3年くらいボードゲーム作ってないですね。


皆さんこんにちは。りかちと申します。四等星というサークルでごくまれにゲームを作ることがあります。

アドベントカレンダー、毎年楽しく読ませていただいてます。皆さんゲームを作るの上手でいらっしゃる。いろいろな人の記事を読んでいると、自分が苦労しているところはするりと突破して、自分とは全然ちがうところで苦労しているように見える。

そんなわけで今回の記事では私のボードゲーム制作の手法を共有し、珍しい制作の仕方をしているやつがいるなと見世物にしてやろうと思います。読者諸兄におかれましては共感控えめ物珍しさ多めでご笑覧いただければ幸甚です。
ちなみに私は記憶力があまりよろしくなく、今まで作ってきたゲームがどのような流れで完成に至ったか覚えていません。デザイナーズノートとか書ける気がしない。したがってこれから始まる記事においては制作中の「ユージュアルアクションズ(仮)」の制作過程をベースにして話を進めていこうと思います。

1.アイディアが降ってくる

ゲームの作り始めはアイディアが降ってくるところから始まります。新しいアイディアに触れるとワクワクします。アイディアというのはゲームの核となる部分であり、ルールを聞いてテンションが上がる部分のことです。ルール説明の時に一瞬頭が混乱するようなアイディアが脳内に降りてくると思わずニヤけてしまいます。

例として製作途中のユージュアルアクションズのルールの概要を説明します。

このゲームはアクションフェイズと収入フェイズを繰り返してゲームが進みます。アクションフェイズではスタートプレイヤーから順に建築、出荷、集金の3つのアクションから1つを選んで実行します。全員が1回ずつアクションを行うと収入フェイズになり、その後スタートプレイヤーが左隣に移動します。
集金をすると1金が得られます。出荷をすると勝利点が得られます。建築ではお金を支払ってゲームを有利に進めるための建物を建てられます。なお、このゲームは無限に借金ができます

既存のゲームで、たとえばプエルトリコで無限に借金ができたらどうなるでしょうか。初手に港を買って出荷点で圧倒するのもよいですし初手コーヒー建築で借金を返済しつつ2軒目ギルドホールから速攻も楽しそうです。

このアイディアを形にしたい。こうしてまたしてもゲーム制作の第一歩を踏み出したのでした。

2.脳内テストプレイ

ゲーム制作のセカンドステップは妄想です。上の文章でもやってますね。
「ねえねえ。無限に借金出来たらどうする? 私、港買っちゃう~」
みたいなやつです。私のゲーム制作は多くの時間が通勤中の徒歩や自転車での移動中です。まだ見ぬゲームの存在しないプレイ風景を脳内で再現しては少しずつ理想のゲームの骨格を探っていきます。
一方、楽しいプレイ風景を想像する傍らでプレイ感のチェックが行われます。今回のゲームなら無限に借金ができるからこそあえて借金をしないプレイングが成立するようにしたいです。大量の借金を抱えて建物効果でブーストをかける戦術がある一方で借金を抑えめに堅実に勝利点を伸ばすプレイングが成立するようにしたい。収入フェイズを用意すること、借金がないと基礎収入が増えるというルールはすんなり思いつきました。

このゲームの面白さはどこにあるのだろう。「無限に借金できる」はゲームの核ですが、面白さとは別な気がします。借金して強い建物を買うことによりゲームが加速していき借金返済が間に合わなくなるというのはどうでしょうか。プレイヤーは借金をするべきかせざるべきかで悩むはずです。借金返済の目途が立ったプレイヤーが他のプレイヤーに対して
「おたくさんは強気の拡大路線でうらやましいわ~」
と皮肉を言えるとめちゃくちゃ楽しそうです。

3.モヤモヤ

作りたいゲームがどんどん形になっていきます。ここで注意してほしいのが、こういうゲームになったらいいなという理想はどんどん具体化していくのに手元のゲームに関する具体的なルールは何一つ決まっていないということです。
こういうゲームが作りたい。こういう展開が欲しい。こういう要素があると良さそうだ。妄想は膨らむばかりです。では果たしてそういうゲームはどうやったら作れるのか。

私にはわかりません。

来る日も来る日も実装を考える日々が続きます。いろいろな実装のアイディアを試せればまだ良いほうです。選択肢が多くて途方に暮れるのではなく、選択肢が見つからなくて絶望するのです。多くの場合ここで芽が出ずにゲーム制作が頓挫します。できることはただ一つ。アイディアが降ってくるように祈りを捧げ、日々考え続けること。

雨乞い式ボードゲーム制作です。

4.アイディアが降ってくる(セーニョ)

幸い、ユージュアルアクションズはアイディアが降ってきました。アクションを建築、出荷、集金の3つに絞るというアイディアでした。お金をためて建築特化で逃げ切り、出荷系の建物を確保して高火力で押し切る。建物を無視して出荷で速攻ゲームエンドを狙うなどのパターンが用意できそうです。
ゲームの具体的な流れが決まると自然と建物の効果が湧き出てきます。

5.テストプレイ

意気揚々とモックを作り、テストプレイに臨みますが、テストプレイで理想とのギャップに打ちひしがれるのが通例です。作りたいのは理想のゲーム。かたや手元にあるのはテストプレイ用のベータ版。ずれが生じるのは当然です。
ここで厄介なのが、理想と現実がずれていることだけは明確にわかるが、何がずれているかわからないということです。なんか違う。

6.モヤモヤ

テストプレイで感じたコレジャナイ感と向き合い、直すべきところを考えます。今回感じたのは見通しが良すぎるということでした。建物はすべてオープン。ランダム要素もない。あと何ターンでゲームが終わり、何点差で誰が勝つか本気で読めば読めなくもない。
ランダム要素を増やせば解決するじゃないか、そう思ったのですが、脳内テストプレイをパスしません。建てられる建物にランダム要素が入ると、先の見通しが立てづらくなることで不利になるのは建築メインのプレイヤーであり、出荷のクリアさがますます際立ってしまいます。出荷にランダム要素を入れるのも現実的な案が出てきません。

D.S.

7.ゲーム制作は雨乞いである

結局、テストプレイの問題点を解決するアイディアは「出荷アクションで1金支払わせる」というものでした。意味が分からないですよね。テストプレイで感じた問題点は見通しが良すぎることではなく出荷をしながら余ったお金で建物を建てるプレイが強力すぎることだったのです。
この文章がミステリだったら「そこが嘘とか聞いてないんですけど???」と怒り心頭に発するところですが、現実がそうだったのだから仕方がない。
これで無事にゲームができたかといえばそんなことはなく、次のモヤモヤが生まれて、モヤモヤと格闘しております。記事を書いていて一つアイディアが降ってきました。

ゲームが完成するまでに幾度もアイディアの降臨を待つことになります。したがって完成した頃には大抵こんな気分です。

自分が作ったという実感がない

制作期間は読めないわボツになる確率が高いわでろくな作り方ではないことは確かです。皆様のゲーム制作の仕方を私が少しでも参考にできればうれしいです。

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