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流量計測とは


流量測定のシステム

流量を測るには、流量計本体以外にも次図に示すような流量計を含むシステム全体を検討する必要があります。次図には最大限の構成要素を示しました。流量計の種類によって、この中のいくつかが必要になります。高価格で高性能な流量計を使用しても、必ずしも高い精度の流量測定ができるわけではありません。表示器、積算器などの関連するハードウェアだけではなく、用途別にどのような流量計を選ぶか、精度をどうやって保証するかなどのソフトウェア技術も重要になります。

測定流量の種類

流量という言葉は、JIS規格「バルブ用語(JIS B 0100:2013)」上では「単位時間に流れる流体の体積又は質量」と定義されています。つまり、流量には「単位時間に流れる流体の体積である体積流量」と「単位時間当たりに流れる流体の質量である質量流量」の2つの定義が存在することを意味します。

多くの流量計は、配管内を流れる体積を測る仕組みになっています。一般的に、質量流量を知りたい場合には、温度計と圧力計あるいは密度計による補正をして、体積流量から換算して算出する必要があります。コリオリ式質量流量計や熱式質量流量計などの直接質量流量を測るタイプの流量計も開発されて、半導体製造などの特定の分野で普及しつつあります。

体積流量

体積流量の計測は、単位時間当たりにある面を通過する体積から流量を割り出す方法です。単位は「㎥/s(立法メートル毎秒)」を用います。また、日本の計量法では「㎥(立法メートル)」を「L(リットル)」に、「sec(秒)」を「min(分)」「hour(時)」に置き換えることも認められています。体積流量の算出式は、一般的な配管内の流れであれば以下となります。

ただし、体積は圧力や温度によって変化するため、測定条件を明示する必要があります。一般的に標準状態を測定条件とします。

質量流量

質量流量の測定は、単位時間当たりにある面を通過する質量から流量を割り出す方法です。単位は「kg/s(キログラム毎秒)」で、「kg(キログラム)」を「g(グラム)」「t(トン)」、「sec(秒)」を「min(分)」「hour(時間)」に置き換えることも認められています。質量流量の算出式は、一般的な配管内の流れであれば以下となります。

それ以外にも、瞬時流量と積算流量という流量の定義も存在します。「瞬時流量」とは、ある瞬間にどのくらいの量が流れているかを示すもので、流量の監視や調節に有効な数値です。一方で、「積算流量」は流量計をどのくらい物質が通過したかを示すものです。ちょろちょろ流そうと、どっと流そうと、結果に変わりはありません。水道メータやガスメータ、ガソリン計量機などはすべて積算流量が重要で、瞬時流量の表示部は付いていません。複数の物質を一定割合で混ぜ合わせながら出荷するシステムがありますが、この場合には、瞬時流量と積算流量が重要になります。

また、流量測定には脈動流・間欠流など振動流の影響もあります。ダイヤフラムポンプやプランジャーポンプから出てくる流れは脈動しているので、流量計の種類によっては正しく測定することができません。特に、脈動の振幅が大きくなった極限は、流れたり止まったりする間欠流です。この場合には、瞬時流量は何の役にも立ちません。

測定対象

一般的な測定対象には、液体、気体および蒸気が考えられます。それ以外にも、ベルトコンベアなどで運ばれる石炭や鉱石も「流れ」ですから、固体の流量を知りたいときもあります。

また、液体と気体、気体と固体など複数の相が混在する二相流あるいは多相流という測定対象もあります。多相流の測定には特別な工夫が必要で一般的な流量計では測定できません。ただし、液体の中に細かい固体粒子が存在するものは「スラリー」と称し、いくつかの種類の流量計で測定できます。

測定対象が流れる配管の断面状態も次図に示すように様々です。一般的な丸パイプのほかに、角ダクトがありますし、天井のない開水路もあります。下水道は円形断面ですが、通常は非満水状態です。ほとんどの流量計は、丸パイプを完全に満たして流れる状態を想定しており、それ以外の状態では正常に動作しません。

流量計の種類

流量計には実用化されている主要なタイプだけでも10個ほど存在します。これは、測定対象である流体の特性や流量範囲、必要な精度などに応じてなるべく経済的に流量を測定するためです。では、理想的な流量計とはどのようなものでしょうか。

  1. 液体、気体、蒸気およびスラリーなどの流体の種類に依存せず測定可能であること。

  2. 高粘度、腐食性の流体が測定可能であること。

  3. 流路に障害物がなく、圧力損失がないこと。

  4. 磨耗部品や可動部品がなく、保守点検が不要なこと。

  5. 設置工事が簡単で、どのような姿勢でも使用できること。

  6. 小型軽量、かつ流量計の前後に直管部が不要なこと。

  7. 測定の精度が高く、再現性も高いこと。

  8. 測定設備、保守点検、精度の維持管理および廃棄などのトータル費用が低いこと。

これらすべてを同時に満たす製品はありません。測定対象と用途に応じて、どの種類の流量計が最適か検討する必要がありますが、かなりの経験と知識を必要とし、間違いとはいえないまでも最適ではない選択がよく見受けられます。


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