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COMPASS

inktober2021 16日目のお題は「COMPASS」

小学生の頃、近所のおばちゃんが「あの人はコンパスが長い」と言っていた。「コンパスって何?」と尋ねると「足のこと」と教えてくれた。家に帰って祖母に「足のことをコンパスって言うんだって」と話したら「若い人はそう言う」と笑っていた。「そんな言葉は使わんでもいい」と言っていた。

先ほど、本当に足のことをコンパスというのかググってみたら、一時期の流行語だったようで、「死語」と書かれていた。そうか。そうなのか。

おばあちゃん子だったので、小学生の頃は友だちから「言語が古い」と言われていた。具体的になんと言っていたのかは思い出せないのだが、全体的に「大正時代」の話し方だったようだ。

一つ覚えているのは、祖母は算数のことを「さんじゅつ」とか「さんにょう」と言っていた。「うちのおばあちゃんは、算数のことをさんじゅつとか、さんにょうと言う」と言ったら、友だちが「さんにょうだって!」と爆笑した。「へーんなの〜」「なにそれ、方言?」と小馬鹿にされたので、ちょっと胸が痛かった。祖母を馬鹿にされたような気がしていた。だが一方で、恥ずかしかった。祖母のせいで笑われたと思った。

先ほど「さんにょう」についても調べてみたのだが、漢字で書くと「算用」であった。計算、収支のことらしい。宿題を見てくれていた祖母は、よく「ここのところ、もう一回さんにょうしてごらん」と言っていた。間違ってない。おばあちゃん、ごめんね。

言葉を知らないと、恥をかく。だから知ったかぶりをせず、知らないことは素直に「なんですか?」と聞くことにしている。先日、会議中に「あの人はOJTで来ている人だから…」と言われ、「OJTってなんでしょうか?」と聞き返した。その人は、まさに『鳩が豆鉄砲をくらったような顔』をして、その表情には『そんなことも知らないんですか!?』と太字のゴシック体で書いてあった。そのわずか2秒くらいの沈黙で、わたしは聞いてならない場面で聞いてはならないことを聞いたのだと悟った。顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったが、「知らんものは知らんのじゃ」と開き直って平静を装った。

会議が終わってすぐに検索してみたら、on the job trainingと書いてあった。なんで「新人研修」と言わんのだ。

まあ、「聞くは一時いっときの恥、聞かぬは一生の恥」と祖母からよく言われていたのだが、今回は一時の恥のインパクトが強かったなあ。



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りかよん
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