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そんなヒロシに騙されて

そんなヒロシに騙されて

足掛け10年近く務めたスナックバイト。辞めてしまったんだけど(クビよ)ヒロシのことを書くためにnoteに登録したので書かせて。

店の前に来るヒロシと云う汚れた野良猫がいる。近所の人がそう呼んでるだけで名前の由来はわからない。推理してみた。

①単純に猫ひろしから 
②ヒロシです…の哀愁ある雰囲気から 
③猫なのに五木ひろしのように目が小さいから

…由来は今もわからないままだけど少しショボくれた猫です。ママさんも私も他の従業員も「貧相でブサイクで愛想悪い猫」と認識していました。そこら中ウロウロしてたから近所の飲食店の人達もショボイ猫・ヒロシのことはよく知っていました。

ところがどうでしょう!
見慣れてくると不思議なもんでよく見たら可愛いかも? って店内の評価がチョイ上がり。こっそりGoogleレンズで撮ったら、レッドポイントって血統まで出てきた。ヒロシ、こんな薄汚いなりしてるけど父母の代はお金持ちの家でぬくぬくと可愛がられてた? 貴種流離譚的な? …ただの妄想だけど。

それからしばらくして、ヒロシは愛想悪いままだけどママさんの手からちゅーるを食べるようになった。凄い。

お客さん達から噂もいろいろ聞こえてくる。
「凄く行動範囲が広いよ」
「駐車場のあたりにミケコという愛人がいる」
「喧嘩をしたら強い。デカイ黒猫に勝ってた(目撃談)」



愛人だと噂のミケコ

哀しい噂もあった。
「あちこちで嫌われてるらしい」
「不細工で性格悪いから?」

でもそんなことはお構いなしにヒロシは来たり来なかったり。いつもマイペースな猫です。

そしてある冬。しばらくヒロシが姿を見せなくなった。気まぐれな猫だから縄張りを変えたのかなあ。

ヒロシは側溝で倒れていました。お向かいのカフェのママさんが見つけて抱っこして店に連れてったそうです。絶対に抱かせてくれる猫じゃないのに。触られそうになるだけでも嫌がる猫なのに。本当に弱ってたんだ…。

そして一晩。今までの冬には経験なかったような暖かい部屋で休んで、それから亡くなりました。お墓にも入れてもらったそうです。猫の気持ちはわからないけど、最期は可愛がってもらって良かったねヒロシ。


ヒロシ

何が言いたかったといえば。ショボイ野良猫にも人生(猫生?)があるってこと。もっと言えば自分も含むショボイ人達にも人生があるってこと。でもそこまではなかなか思い至れない(今でもだけど)。ヒロシから学ばせてもらったことです。ありがとうヒロシ。ヒロシ。ヒロシ。合掌。

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