そうだ、アイドルやろう
夏の終わりだった。
気付いたら夏らしいこともせずに日々に追われて、24時間テレビが終わっていた。
社会人1年目。職場にも慣れてきた。
仕事はめちゃくちゃに忙しかったけど、職場の人は優しくて面白い。いい環境だった。
ただ一つ胸に引っかかっていた
もうずっと人前で歌を歌っていなかった。
私はずっと歌が好きだった。小学生の頃はうるさいと隣の部屋の兄に怒られないように押し入れで弾き語りをしていた。
もっと戻ると、幼稚園の頃は祖母の家で毎週座布団を積んで立ち、リモコンを持ち、リサイタルを開いていた。音楽の授業の歌のテストだけはヒーローになれた。
大学では念願のバンドのギターボーカルをして、初めて人前で歌う喜びを知った。最高だった。
そんな私が、ずっと歌を歌っていなかった。
いつものルーティン。仕事終わりの一服。
(ボーカルのくせに喫煙、は一回置いておいておいて その後煙草やめたからゆるして)
疲れてしゃがんで煙草を吸ってると、隣で煙草を吸ってる歳上の人たちの仕事の愚痴が聞こえてくる。
突然思った
「あ、わたしの居場所ここじゃない 抜け出さなきゃ」
このままぼーっとしてたらぼーっと歳をとってしまうと思った。
表舞台で歌いたいなんて非現実的で鼻で笑われそうな夢だけど、5年後も心に潜めたままここで煙草を吸ってるわけにはいかない
鼻で笑われればいい。失うものが無いのにぼやぼや踏み出さないでいるクセはこれまでの人生で体に刻まれてしまっていたけどここでやめてしまおう
そしてそれまでバンドのギターボーカルをやっていた私は何故か思い立った
「そうだ、アイドルになろう!」
一ノ瀬リカが出来上がった瞬間でした
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