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【欧州現地企業人事の呟き】スウェーデン企業で学んだリーダーシップの多様性
海外の女性リーダーに学んだマインドセット
私はスウェーデンで4年間、ずっと女性リーダーのもとで働いてきました。その中で、日本とスウェーデンのリーダーシップの違いを強く感じることがありました。特に、女性リーダーから学んだマインドセットは、これまでの「リーダー像」とは違うものでした。
1. リーダーシップの多様性と「人となり」の重要性
日本では、リーダーといえば「みんな、私についてこい!」という昭和時代の男性的(Muscline)なスタイルが一般的なイメージとして根強くあるかと思います。年功序列制の企業も多いので、年長者がリーダーになる企業も実際多いですよね。しかし、スウェーデンでは必ずしもそうではありません。リーダーシップにはさまざまな形があるのだなと実感しました。
例えば、スラムダンクの安西先生のようなリーダー。派手に引っ張るのではなく、静かに見守りながらメンバーが自分らしく活躍できる環境を作る。いざというときには支え、メンタルのサポートを欠かさない。私の周りにいたリーダーは、まさにこのようなスタイルでした。
彼女たちは、「あなたを信じているから、どこでどう働こうと気にしない」という姿勢を常に持っていました。(実際によく言われた) プレッシャーをかけるのではなく、信頼をベースに自由を与える。欧米の企業では、男女問わずこのようなリーダーシップが多いのではないかと思います。
また、長年築かれてきた「伝統的なリーダーシップ像」を基準に、リーダーとしての適性を決めつけるのは大きな間違いだとも感じました。リーダーの多様性を受け入れない組織は成長の機会を失いかねません。
2. 仕事は大切。でも、あなたの人生はもっと大切
「人生は仕事だけじゃない。」
この考え方を私に教えてくれたのも、スウェーデンの女性リーダーでした。
私の仕事は採用・ヘッドハンティング。チームワークもありますが、基本的には1対1で人と向き合う個人完結型の仕事です。トラブルが起きたり、難しいポジションや候補者と向き合うとき、私はよく元上司に泣きついていました。そのたびに、彼女はこう言ってくれました。
「でも、これはただの仕事だからね。」
もちろん、仕事には責任を持って取り組む。でも、仕事のプレッシャーで自分を追い込みすぎないことも大切。「たかが仕事」という気持ちを持つこと。上司である彼女のこの言葉に、私は何度も救われました。
スウェーデンでは、子供の迎えを男女交互に担当するカップルが多く、3時や4時に退社して、夜に家で仕事をすることも一般的です。このような柔軟な働き方が、心の余裕を生む要因になっていると感じました。
3. リーダーの多様性が企業の成長につながる
従業員の多様性、そしてリーダーの多様性は企業にとって非常に重要です。例えば、日本政府や伝統的な大企業のように男性中心・年功序列の組織にもメリットはあるのかもしれません(現代では疑問ですが……)。しかし、それでは多様な顧客のニーズを理解しにくく、多様な従業員を適切にマネジメントすることも難しくなります。
特に、これから国際的に成長する企業にとっては、多様な人材を受け入れ、活かす組織であることが不可欠です。
Equity(公平性)とEquality(平等)の違い
ここで、私がオーストラリアの大学で学んだ「Equity(公平性)」と「Equality(平等)」の違いについて補足したいと思います。
**Equality(平等)**は、すべての人に同じ機会やリソースを与えることを指します。
**Equity(公平性)**は、それぞれの状況に応じて必要なサポートを提供し、すべての人が同じスタートラインに立てるようにすることです。
例えば、身長が違う3人が同じ高さの踏み台を渡されたとしても、全員が同じ高さの壁を越えられるわけではありません。Equityの考え方では、それぞれの人が壁を超えられるように適切な高さの踏み台を用意することが重要だと考えます。
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この考え方を企業に当てはめると、一律のルールを適用するだけではなく、多様な従業員がそれぞれの強みを活かせる環境を作ることが必要だとわかります。
「多様性を受け入れるリーダーシップ」こそが、これからの企業の成長に不可欠なのではないでしょうか。