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紙辞書はもういらないの?

数か月前(今年のはじめ頃)の話なんですが、わたしが住む町の公立高校にメールをしました。

「英和/和英辞書を無料配布するのはやめてはいかがでしょうか」

仮にも町の年長さんから高齢者にまで英語を教えている身でありながら、辞書を高校生に与えないで、というメールをいきなり高校に送り付けるきっかけはレッスン中に聞いた受講生のある話でした。


1 Y高校に進学するのね…

 最初から高校はY高校と言っていたので、そんなに驚きではなかったのですが、どこかで中学3年になったら気が変わるんじゃないか、と期待していたのかもしれません。

 小学低学年から英語の個別指導をしてきた教え子が中3になったときに「高校は、どうするの?」と聞いたら前から言っていた通りY高校に決めていると返事が返ってきたのは一昨年の冬。その子は翌春、予定通りY高に入学しました。

衝撃の事実

 高校生は大抵電子辞書を使うことが多いので、どんな電子辞書を買ったか教え子に聞くと、Y高では分厚い和英辞書と英和辞書2冊が『与えられ』たと教えてくれたのが春入学して間もない頃でした。

 そして、高校1年の冬休み明けあたりに教え子とタブレット学習について話を聞いていて紙辞書の話題に…。

 「ねぇ、あなたたち、授業で紙の辞書は使っているの?」

      「いいえ。」

 「そうなんだ。辞書は家で使っているの?」

      「いいえ。学校に置きっぱなしです。道具を置く棚が一人一人
       あって、その棚に入れたままです。」

 「え、そうなの?一回か辞書を開いたことはある?」

      「いいえ、一度もないです。棚が狭いのに厚い辞書が二冊も
       あって結構邪魔なんですよね(笑)。」

私の紙辞書愛

 私は、英語学習には紙の辞書が一番良いと思っています。

 小学5年生になったら本人が気に入った辞書を買ってあげてください、と保護者にはいつもお願いしています。

 小学校、中学校で紙辞書を引いたことのない子は、電子辞書もうまく使いこなせません。電子辞書を使って単語を調べる受講生からレッスンで

 「調べたけど辞書に載っていませんでした」

 「この意味しか辞書に載っていませんでした」

と言われるたびに、

「紙の辞書で調べてその単語の終わりまでしっかり見てごらん」

「一文字一文字確認して」

と辞書指導から入るほど、辞書LOVE!なのです。

2 廃止だ!廃止!

 なのに!辞書が『置物』になっている!

『邪魔な存在として扱われている』

それを無料でY高生に買い与えている(町が教科書から制服、通学費用に至るまですべて負担)

 これは単なる無駄遣いだ、しかも環境に悪いじゃないか!!!
使わないなら与える必要はないんじゃないか?
ということで校長宛てにメールで「英語教諭が今後も授業で生徒たちに
使わせる予定がないのであれば、辞書の無料提供は辞めていただき、町税をもっと必要なところに回していただきたい。」とお願いした。

あっけない結末

メールの返事はしばらくしても来なかったので、完全スルーか!と思っていたらなんと電話が!

 『Y高の校長の〇〇です。先日はメールありがとうございました。その後担当教諭に確認したところ、今後も辞書の使用予定はないということですし、タブレットで検索することもできるので、ご提案の通り辞書の購入は来年度から辞めることにしました。」

3 結局


 とまぁ、なんの反論もなく、いともあっさり私の要望が通ったわけですが、私の心境はとても複雑でした。結局私が本当に望んでいたのは、授業でしっかりと紙の辞書を活用してほしい、ということだったのかもしれません。

 記事の写真ですが、左は娘が11歳のとき、イギリスの寄宿学校に入学する際に用意するものとして指定されていた英英辞書です。右は我が子が日本で小学校を卒業するときに記念品としていただいた辞書(英和和英辞書)です。二つを見比べてみて、言語というものに対する熱量の違いがあるのかな、頭の隅でふと思いました。

紙辞書はもういらないの?

 書店に行けば最近は、洒落たデザインの英和辞書が種類豊富に所狭しと並んでいますが、買ってしっかり活用している人はどのくらいいるのだろう、と思います。

 かくいう私も、最近では翻訳などの際に、DeepL や ChatGPT、Google 検索、Weblio などでささっと調べているのが現状です。パソコンに向かって仕事をしているからその方が『楽(ラク)』だから。紙辞書はもういらないのでしょうか?

 でも経験から言えることは、調べた単語はあまり記憶に残りません。そして、英語指導をしてみている限り、ネット検索や電子辞書で単語を調べている子は英単語の語彙力がイマイチな感じです。ページを実際にめくって調べて、ちょっと横道にそれて違う単語も調べてみて…なんていうアナログな方法が長期記憶に残る語彙力アップには一番!と経験で知っています。

 なのに今、小学校から始まる英語教育において、『一度も』紙辞書を使わずに大人になる子が増えている。これでいいのかな?日本人の英語力がなかなか上がらない原因の中のひとつが紙辞書利用の低下でないことを祈りたいです。

 紙辞書を使う子供たちを増やそうキャンペーンを心の中で勝手にやっています。私が開いている英語教室ではなかば強制的に小学5年生になったら紙辞書を購入してもらい、一行英文日記を課題にしています。課題を確認する中で、辞書の使い方も指導しています。英会話ばかり重視されてきましたが、会話をするには単語を知らなきゃならない、単語は日本の学校や家庭の中にはない!辞書の中にある!と私は信じています。

最後までお読みくださったみなさま、ありがとうございます。

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