【2021年版】気候変動について伝えたい10のメッセージ
11月4日に、COP26にて、「気候変動について伝えたい10のメッセージ 2021年版」が公表されました。その報告書の中身を紹介します* 。
「気候変動について伝えたい10のメッセージ」は、地球温暖化に関して直近1年間に新たに分かった科学的知見をもとに、政策決定者や市民に向けた10項目のメッセージとしてまとめたものです**。
原題は「10 New Insights in Climate Science 2021」(10NICS2021)。フューチャー・アース、アース・リーグ、WCRP(世界気候研究計画)という3つの国際的な研究組織により2017年から毎年発行され、その年のCOP(地球温暖化に関する国際会議)で公表されています。私も2019年版の執筆に貢献しましたが、今年はお呼びもかからなかったです(笑)。
今年は、8月にIPCCの第6次評価報告書(自然科学的根拠)が公表されたばかり、というタイミングのため、メッセージの根拠となる研究結果に大差はなく、主要なメッセージも大きく変わるところはありませんでした。
ただ、IPCC第6次評価報告書は、その前の第5次評価報告書から8年も間が空いたこともあって、ものすごく内容が多く、研究成果がてんこ盛りとなっていました。政界や行政関係者用に分かりやすく書かれたはずの「政策決定者向け要約」(Summary for Policy Makers, SPM)も、いろんなデータが羅列されていて、メインメッセージが伝わりづらかったように思います。
今回の「気候変動について伝えたい10のメッセージ」では、IPCC第6次評価報告書(自然科学的根拠)では含まれていなかった温暖化の影響や緩和に関する研究も加えつつ、特に重要で、最近注目されている研究に絞り込み、たった10項目のメッセージとしたところに、大きな特徴があります。
気候変動に関する10のメッセージの要点は以下のとおりです。
(意訳です。)
1.1.5℃の温暖化で安定化させることはまだ可能。そのためには、世界全体で、ただちに、大胆な行動を起こす必要がある。
2.メタンと亜酸化窒素の排出量の急速な増加により、地球は2.7℃温度化する。
3. 気候変動は、これまでにない大規模な火災ー巨大火災ーを誘発し、甚大な被害をもたらす。
4.気候の「転換点」(ティッピング・エレメント)は、非常に大きな影響を及ぼすリスクを伴う。
5.世界的な気候変動対策は、公正でなければならない。
6.家庭での行動変化を推進することは、気候変動対策に不可欠。
7.政治的な課題のために、「炭素の価格付け」(カーボンプライシング)の効果は抑えられている。
8.パリ協定の達成には「自然に基づく解決策」(Nature based solutions)が不可欠。
9.気候変動に適応した保全と管理、そして国際的な責任ある管理により、海洋生態系の「回復力」(レジリエンス)を高めることができる。
10.気候変動の緩和にかかる費用は、それにより救われる命や疾病の減少、および環境の保全と回復のための経済的価値と比べ、低いか同程度である。
こうやって並べてみると、専門用語がゴロゴロしていますね。
用語の説明は、報告書の中に書いてあります。ただ、用語の解説を読まないと理解できないようなメッセージは不親切かな、とは思いました。これらの用語に関しては、またいつか記事にしたいと思います。
よろしければ、動画もどうぞ。(英語です。)
COP26での記者発表の動画はこちら↓ ヨハン・ロックストローム博士より、10のメッセージについて簡単な説明があります。
(文:知の共創プロジェクト プロジェクト・リーダー 大西有子)
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