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動きの模倣について

 おはようございます。
 愛媛県で理学療法士、スポーツトレーナーとして活動しています宇治村信明(うじむらのぶあき)と申します。

 今回は"動きの模倣"についてお伝えさせていただきます。
 

 まず『模倣』は、人間行動の中ではごくありふれたものです。生後72時間以内の新生児でさえも大人の顔や表情を模倣することができることが知られています。
 また、人間発達のどの段階においても様々な行動(または動き)は模倣を通して獲得されていき、この動きの正確な模倣は、人間の固有能力であり、他の動物には見られません。

 リハビリテーション場面やスポーツ現場において、基本的な動きを初めに指導者(セラピストまたはトレーナー)が学習者(患者または選手)に手本を見せ、それを学習者が真似ることによって運動学習を促す光景はよくあります。しかし、その模倣で本当に学習を促せているでしょうか。

新しい動きを習得しようとする場合には、
指導者の示範(手本力)が重要な役割を果たす

 上記の通り、学習には指導者の示範(手本力)が重要な役割を果たします。これは、言い換えると"指導者の手本力"で、学習の効果が変化するということです。
 
 また、指導者側の示範が有効に機能させるためには、学習者側に模倣能力が意識的かつ意図的な模倣能力が求められます。 
 ということは、、、

指導者側の手本力はもちろんのこと、
学習者になぜトレーニングをするのか(目的)やトレーニングの際に何を意識するのか、
説明しておく必要(環境作り)があります

 
 まず最初にこの"模倣能力"という言葉について説明していきたいと思います。

1.人間と動物との模倣能力の違い

 "模倣能力"は、人間を除くと一部の鳥類に見られるだけであり、それは"音声"の領域に限られます。
 『猿(動物)』に関しては動きを真似る能力を持っていますが、猿の模倣は真似る行為全体の輪郭を真似ているだけであり、動きの正確な模倣とはなっていません。また模倣する対象はすでに"できる"ようになっている動作に限定されています。
 動物による模倣能力の場合は、模倣すべき手本が"目の前"にいないと自発的な模倣は生じなません。

 では人間ではどうでしょうか。
 2歳頃の幼児になると、大人の動きを正確に模倣するようになります。これは『遅延模倣』と呼ばれており、1歳4カ月頃に現れるものであり、記憶保持能力に基づき、模倣対象を観察後時間が経過した後に模倣が生じるものです。
 『人間』は、幼児の頃から概念的思考、言語能力の発達に基づいて、"模倣対象がその場にある"ということから解放され、手本対象が目の前になくても、過去の記憶を呼び起こすことで動きの模倣が可能になります。

2.無意識的模倣と意識的模倣

 幼児は対人意識発達の初期(2歳頃)は、『癒合的社会性』の段階にあるとされています。この段階では、自己と他者が未分化(無意識的模倣)に止まっており、自分が見ている人の動作に似た動作を自らの身体で実現する能力を持っています。

人間の知覚は、問題になっている動作を
以前に学習したことがなくても、
運動的行為の再編成を引き起こす

 3歳頃の幼児になると、自己と他者の未分化を前提とした無意識的模倣に留まらず、自己意識と他者意識の分化を前提とした意図的、意識的模倣へと変化していきます。
 この『意図的、意識的模倣』は、他者の行動をそっくりそのままなぞるのではなく、"身振りや表情による感応"、さらには"筋肉的次元での下書き(運動パターンの習得)"へと縮約されます。さらに進むと、単なるイメージや概念によって可能的(実現可能な)行動を先取りし、模倣するようになります。

3.コピーとなぞり

 『真似る』には、仕方の異なる2つの方法があります。それは、"コピー"と"なぞり"です。
 例えば、スキーをする際、指導者の滑っているフォームを見て外形だけを真似してもうまくは滑れません(=コピー)。うまく滑るためには、指導者の視点に立って、動作を行い、その時に指導者が体験している心情や身体感覚を自らの中に実現しなければ習得することはできません(=なぞり)。

 ということは、指導者側が学習者側に指導を行う前に、指導者自らがそもそも手本となれる状態になっているのか。不完全な手本を学習者に模倣させようとするとどうなるか。パフォーマンスを向上させる目的だったとしても、低下させてしまうリスクがあります。

 また人間の身体的動作は、ただ単に反復運動するだけでは獲得されません。獲得するためには動作を繰り返す中で、何の目標のために行なっているのかが分かっている、この目標に照らしながら自らの動作の意味を解釈していくことによって得られるものです。

"形"をそのままコピーするのではなく、
主体的な解釈の努力を通して
状況に応じて変幻自在に変化する
"型"を身につけることが重要

 

4.まとめ

 今回は動きの模倣について、模倣とはないか、模倣をパフォーマンスアップに繋げるためには何が大事なのか、そのために指導者側がやらなければいけない事はなにかをお伝えさせていただきました。
 まずは自分自身の手本力を向上させ、患者様、選手のパフォーマンスを向上させれるように、日々研鑽していきましょう。次回は、トレーニング内容についてお伝えさせていただきます。

ありがとうございました。

 僕のInstagramに、トレーニング動画など投稿していますのでよろしければ見て行ってみて下さい。
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 ご質問などありましたら、DM(Instagramから)いただけたらと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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