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肩関節の夜間痛について

夜間痛とは

就寝時に生じる疼痛の増悪により目が覚める症状であり、基本的には肩関節の三角筋付近に鈍痛を惹起し、起床後もしばらく持続するのが特徴である。

夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴
赤羽根良和,他

夜間痛の原因は明確にわかっていない。

夜間痛についての研究

腱板断裂(保存・術後)か肩関節周囲炎(炎症期・拘縮期)の夜間痛を対象としている物が多い。
 主な因子として語られているのは肩峰下圧の上昇であり、その要因として就寝姿勢、肩峰下滑液包と腱板の癒着、肩甲骨下方回旋・前傾アライメント、骨頭上方化(AHI)などが多くの論文で検討されている。簡単な解剖学の確認と複数の論文を以下にまとめる。

肩峰周囲の解剖学の確認

肩峰と関節包の位置関係 肩甲骨が下方回旋・前傾すると肩峰下のスペースは狭くなる
棘上筋の走行 肩峰下滑液包の下を通る
夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴 より
AHIは骨頭上方化、GHAは肩甲骨下方回旋を示す

研究まとめ

肩関節周囲炎と腱板断裂どちらにも言えること

  • 肩峰下圧の上昇が引き金となっている

  • 体幹の肢位によって肩峰下圧が変化する(患側下側臥位>背臥位>座位)
    ※ただし、圧上昇が直接的な原因ではない可能性が高い。
     →肢位を変えてもすぐに痛みにつながらないため。
      肢位変化→圧上昇→何らかの反応→夜間痛 となっている?

肩関節周囲炎に言えること

夜間痛を生じる肩関節周囲炎にはタイプが2つあり、炎症によるものと拘縮によるものがある。またどちらも肩甲骨下方回旋傾向(疼痛回避姿勢)である。

腱板断裂に言えること

  • 手術後に夜間痛が軽減した症例では肩峰下圧が低下していた

  • 関節鏡所見に有意なものは見られていない

  • 骨頭上方化は多くの論文で要因とされているが、それのみでは夜間痛を引き起こさないという意見もある

臨床上重要な評価と対応

評価
問診:夜間痛の有無、睡眠障害の有無、夜間痛の頻度、寝る際の肢位など
ROM:特に内外旋、肩甲上腕関節内転+肩甲骨上方回旋
超音波画像検査:炎症症状の有無、肩峰下(棘上筋)の滑走性
アライメント:肩甲骨の位置(下方回旋、前傾していないか)

結局何すればいいか

・炎症があるなら炎症のコントロール(関節へのストレス軽減・消炎鎮痛)
・1st内外旋ROM向上
 →求心位保ったまま骨頭のみでの可動を
・肩甲上腕関節の上方組織の滑走性向上
・マルアライメント修正
 →胸椎後弯、肩甲骨前傾・下方回旋
・睡眠時の姿勢指導
 →患側上側臥位+抱きまくら or 背臥位+肘下クッション

参考文献

関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹.2014
夜間痛を合併する肩関節周囲炎の可動域制限の特徴とX線学的検討.2002,林
五十肩における疼痛の解釈と運動療法.2011,林
肩関節周囲炎における夜間痛の発生に関わる背景因子について.2015,内平
夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴.2017,赤羽根
夜間痛を有する肩関節疾患保存治療例の特徴と治療効果.2020,伊藤

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