RightSight#006|サプリの効果実感、どうデザインする?
RightDesignによるポッドキャスト「RightSight」、#006は前回から引き続き「美容」をテーマに、サプリの効果実感がどう設計されているのか論じていきます。
これまでの美容特集が気になった方はこちらからどうぞ。
→#005|美容沼のデザインリサーチ
noteの記事では、会話のなかで名前の挙がったブランドやプロダクト、サービスを簡単にご紹介していきます。ぜひポッドキャストと合わせてお楽しみください!
飲むエルメス、効果は絶大
美容に関するプロジェクトに携わったことをきっかけにエステやスキンケア、美容医療など美容沼に足を踏み入れた3人が最近注目しているのが「美容サプリ」。日本でも近年広がりつつあるこの領域、果たしてどんな体験の面白さがあるのでしょうか。
まず小川が紹介するのは昨年日本にも上陸した「オーソモル」。ドイツから生まれたこのサプリは韓国のヘルス&ビューティストア「OLIVE YOUNG」などで人気を博し、近年日本でも知られるようになりました。
K-POPアイドルや韓国俳優も愛用し「飲むエルメス」とも呼ばれるオーソモルには豊富なビタミンが含まれており、美容や疲労回復に効果があると評判です。実際に小川は自宅に常備しており、疲れを感じたらすぐ飲むようにしているそう。
錠剤と液体がセットになったパッケージは日本ではあまり見かけないものであり、そのパッケージ自体がどこか“効く”雰囲気を醸し出しています。山道も「飲む行為の新しさが説得力を生んでいる」と指摘します。
なんとなくサプリを飲む人々
オーソモルに限らず、とくに海外では多種多様なサプリが売られており、腸内環境改善やストレス緩和などその機能も細分化されています。他方で、小川は「サプリは効果がわかりづらい」と指摘。肌に直接塗布するスキンケア製品やコスメと異なり、内服するサプリはすぐ結果が出るとも限らないため効果実感が得づらいことは事実でしょう。
自身の体験を振り返りながら、小川も石神も「なんとなくでサプリを飲んでいる」と語ります。むしろ、購買時の体験がサプリの効果実感の大きな割合を占めているのではないかと小川は続けます。
たとえば石神が先日韓国で実際に購入した「Fitamin」は、売場でいくつかの悩みや機能を選択することでオリジナルに調合したサプリを提供してくれるもの。30日分の錠剤が1回分ずつ分けられポップなデザインの箱に入れられていることで、自宅に置いていても邪魔にならずむしろ飲み続けたくなるような設計が印象的です。
サプリこそ体験デザインが意味をもつ
「サプリ」というと健康食品や医薬品のイメージが強いものの、むしろ栄養成分による差異化が難しいからこそ、体験デザインがもたらす効果も大きいのかもしれません。
事実、海外のサプリブランドを見ていると、アプリなどを導入しながら習慣化を促すとともにコミュニティを設計しようとする事例も多く見受けられます。たとえば「ROOTINE」や「Vitable」といったブランドは、デザイン的にもさまざまな工夫が見られる事例と言えそうです。
パッケージが生んだ新たなUX
こうした観点から改めてさまざまなサプリを見てみると、パッケージデザインが大きな意味をもっていることに気づかされると小川は語ります。たとえば海外のD2Cブランドであれば日頃から持ち歩きやすくデザイン性の高いサプリが多く見受けられますし、他方で茶色い瓶に入った持ち運びづらく不便なサプリも、そも不便さゆえに権威性や説得力が高まっている側面もありそうです。
さらに小川と石神はR1やヤクルト1000を挙げながら、形状そのものの新しさも大きな意味をもつと指摘。山道も「R1は呑み口が通常のペットボトルと一緒なのにボトルが小さいので自然と“濃い”ものだと感じてしまう」と語ります。これらの商品はその効能もさることながら、これまであまり一般的でなかった形状のパッケージを採用することで、ユーザへ新しいUXを印象づけているとも言えます。
「ハードルを設けることで効果実感が生まれる」と山道が語るように、サプリに限らずただ快適でストレスのない体験を設計すれば多くの人が満足するわけではないでしょう。ときには適切なハードルや負荷を設計することでこそ、ユーザの満足感が高まることもあるはず。ある種の「面倒くささ」が効果や価値を信じさせることにつながってもいるのかもしれません。サプリというと「顆粒」「錠剤」など決まったフォーマットを想起しがちですが、じつはまだ知られざるUXの可能性が眠っていそうです。
RightSightでは、毎回テーマを設定しながらポッドキャストを公開していきます。次回#007ではRightSightを始めるきっかけとなったRightDesignInc.の「リサーチ/インプット」習慣について話していきます。
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