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本に愛される人になりたい(15)「ポップ・アップ・ブック」

 趣味というと履歴書に生真面目に書き込む感じがするので、あくまで嗜好のひとつとして、ポップ・アップ・ブックを集めています。集めていると言っても、ギラギラとした眼で探し求めるわけではなく、たまたま目にしたりもらったりしたものになります。感覚的には「なんか、たまたま、良さそうなのを見つけたから」という緩ーい眼差しです。
 最初にポップ・アップ・ブックに目覚めたのは、私が国立市に住んでいたころです。駅前近くに数坪ほどの海外で出版された本を取り扱う本屋さんがありました。政治学や経済学、哲学やら人類学やら、近くに一橋大学があったせいもあるかと思います。そして、魅力的な絵本のコーナーもあり、そのコーナーに、ポップ・アップ・ブックがいつも何冊か置かれていました。これまでの経験上ですが、私が好きなポップ・アップ・ブックは、こうした味わい深い小さな本屋さんに存在するのではないかと思っています。書棚には何十冊かのポップ・アップ・ブックが眠っていますが、いずれも出版社が狙い過ぎてないものばかりです。幼児用のポップ・アップ・ブックは、もちろん教育的な目的があるので狙うのが当然ですが、大人が手に取り愉しむためのポップ・アップ・ブックでは、狙い過ぎたのは敬遠したくなります。その「狙い臭」とは何かは、実際に手に取ってみないとなんとも言えませんので、「狙い臭」論については、別稿で考えたいと思います。おそらく、「売る為に」臭なのだと思いますが。
 さて、手元にあるポップ・アップ・ブックの一点一点につきあれこれ綴りたいとは思いますが、それだけで一冊のぶ厚い本になりそうなので、ここは我慢して一点だけのお話にします。
 写真に掲げたポップ・アップ・ブックは、2001年こアカデミー賞授賞式に出席し、そのあと関係者のみで開催されるガバナーズ・ボールというパーティーでのお土産です。この、ガバナーズ・ボールはアカデミー協会の関係者や会員、そして受賞者たちが何十もの丸テーブルに座り、食事をしたり談笑したりするパーティーですが、生バンドも入っていて、あちらこちらでダンスに興じたり、立ち話を楽しんだり……とてもカジュアルなパーティーです。これまで、何回も、このガバナーズ・ボールに参加しましたが、ここに掲げたポップ・アップ・ブックを手にしたときは、感極まりました。ま、単純に「おー!」という感じでしたが。
 このポップ・アップ・ブックのタイトルは「どうやって映画は始まったか(HOW THE MOVIES BEGAN)」で、草創期の映画的なものが、ポップアップされ、プロフェッショナルな説明文が付されています。有名な、馬のギャロップを見せる装置などが取り上げられ、ページをめくるごとに、映画の始まりの話が楽しめるポップ・アップ・ブックとなっています。
 このポップ・アップ・ブックは、非売品であることもありますが、心から映画を愛している製作者(アーノルド・シュワルツマン)の手によるものだと、ひしひし伝わってきて、前述したような狙い臭は一切ありません。
 いつの日か、私の物語をベースにしたポップ・アップ・ブックを作ってみたいなぁと考えているところです。もちろん「狙い臭い」を感じないポップ・アップ・ブックです。中嶋雷太

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