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悲しきガストロノームの夢想(70)「辛い辛い辛い」

 5月の連休ごろから11月の晩秋にかけ、辛い野菜たちがJAの即売所の店頭に並び、私は辛い季節を堪能することになります。掲載した写真の辛い野菜は、メヒカーナ、弥平とハラペーニョで、いま冷蔵庫にはありませんが「インド人嘘つかない」という変わった名前のひょろ長いのもよく楽しみます。
 テレビなどで激辛がブームのときは、とにかく辛さが賞賛されるばかりで、辛い野菜のそれぞれの風味や甘み、野菜特有の新鮮な香りなどは完全に無視されていたので、とっても残念でした。
 子どものころの食卓には、夏場になると唐辛子を使った料理が副菜としてありました。古い京都の家系だったので、先ずは万願寺とうがらしとチリメンジャコの炒め物は定番でした。そして青唐辛子を焼いたもの。これの上に鰹節をのせお醤油をかけて食べるのですが、万願寺とうがらしはまったく辛くないものの、青唐辛子の場合、ものによっては激辛なのがあり、ハヒハヒ言いながら食べたのを覚えています。
 湘南・片瀬海岸にある自宅から車で30分のところにある地元のJAの即売所へたまに買い物に行き、ハラペーニョなどが売られていると、冷蔵庫のなかの在庫のことなど何も考えることなく買ってしまいます。すべて採れたての新鮮なものなので、前述したとおり辛味だけでなく、甘みなどの風味がしっかりとあり、私の調理には欠かせぬ食材のひとつになりました。
 食べ方は様々で、カレーにトッピングしても良し。チリビーンズに煮込んでも良し。サルサソースに忍ばせても良し。乾燥した赤唐辛子では楽しめない味わいが食欲を増してくれますし、さらに身体の細胞の新陳代謝を活発にしてくれると考えています。
 5月の連休ごろから11月の晩秋にかけて路地もの的に栽培され販売されるのですが、5月連休明けごろは暑熱順化のため、梅雨から真夏にかけては猛暑対策のため、そして落ち葉が落ち始め木枯らし一号が吹きそうな季節には寒冷順化のために、この辛い野菜たちは欠かせぬものになっています。
 日本の気候が四季どおりにゆっくり変化していくのであれば、そして極端な暑さや寒さがないならば、こんなにも好きにはならなかったのかもしれませんが、四季が二季のようになり、暑さ寒さが極端化した日本の気候には、この辛い野菜たちがとても身体に良く、適しているのではないかと思っています。そして、純日本風の料理だけでなく、チリビーンズやサルサソース店等々、私が調理したいレパートリーの幅がかなり広がってきたのもあり、辛い野菜たちは重宝しています。
 辛い辛い辛いとハヒハヒ言いながら楽しむハラペーニョやメヒカーナや弥助やインド人嘘つかないなどの辛い野菜たちは、これからも私の食を楽しませてくれること間違いありません。ただ、外食で提供されるこれらの辛い野菜にはかなり厳しい点をつけざるを得なくなりましたが。中嶋雷太

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