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マイ・ライフ・サイエンス(39)「あまりにも刹那的な健康感」

 新型コロナ禍が始まったばかりの2020年の春ごろ。スーパーへ買い物に行くと、納豆コーナーにあるべき納豆が一つもなく、その夜調理しようと考えていたイカ納豆スパゲッティを断念したことがありました。その後の数週間も納豆の品切れ状態が続いていたので、Googleで検索してみると、「新型コロナ・ウィルスには納豆が効く」的なニュースがあり、SNSの世界でそのニュースが拡散されていたようで、朧げながらその原因を突き止めました。食品や健康に関わる研究者もどきの方々も、今ぞ儲け時だと思われたようで、声高に「新型コロナ・ウィルスには納豆が効く」と主張されていたようです。他にも、今になって冷静に考えれば、頭を傾げるような主張をされる方々がいて、テレビでも視聴率が稼げるからか、その根本の検証などせずに主張の垂れ流し状態だったように思っています。
 ところが、新型コロナ禍のピークが過ぎ去ったいまでも、健康食品や医薬品などのコマーシャルや情報番組などに触れると、「◯◯を服用すれば⬜︎⬜︎に効果がある!」と喧伝されることが多々あります。おそらく、実験結果としてある成分◯◯は⬜︎⬜︎に効果があるとされ、厚生労働省的にもOKなのでしょうが、その◯◯をどれぐらいの期間服用すれば、⬜︎⬜︎への効果があるのかは、甚だ疑問に感じています。
 人それぞれ、効果にはバラツキがあるというのが実際のところでしょうが、「◯◯を服用すれば⬜︎⬜︎に効果がある!」と喧伝に踊らされ、その◯◯を買い求める方が相当数いるのだろうなぁと思います。
 私のとっても私的な意見なのですが、そんなに即効性があるワケがなく、数十年かけての効果ではないでしょうか。医食同源という言葉がありますが、離乳食を口に運んだころからの、日常的な飲みものや食べものが、その人の体質を形作るわけですから、大人になって、ましてや老化現象が現れてから焦って◯◯を買い求め服用したところで、⬜︎⬜︎への効果はかなり減じられるのではないかと考えています。
 わが家の朝食はパン食で、母がコーヒーを好んででいたのもあり、私も幼稚園児のころからコーヒーを飲んでいました。(ヒステリックな現代の親なら、虐待だ!と騒ぐかもしれませんね)
色々と調べてみると、子供にはカフェインが良くない!とされているのですが、コーヒーほどのカフェイン量はありませんが、毎日ガバガバと緑茶をよく飲んでいた私は問題なかったのか?と考えざるを得ません。
 さて、そのコーヒーですが、2015年5月に、国立がん研究センター予防研究グループがコーヒーの健康作用についてレポートを発表し、習慣的にコーヒーを飲む人は、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクが低下するという結果を報告しました 。国立がん研究センターのホームページでは、コーヒーと死亡リスクとはどう関係しているのかについて、「なぜコーヒー摂取で死亡リスクの低下が見られるのでしょうか。第一に、コーヒーに含まれるクロロゲン酸が血糖値を改善し、血圧を調整する効果がある上に、抗炎症作用があるといわれています。第二に、コーヒーに含まれるカフェインが血管内皮の機能を改善する効果があるとされています。また、カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないかと言われています。これらの効果が、循環器疾患や呼吸器疾患死亡につながる危険因子の調整に寄与しているのかもしれません。本研究ではがん死亡については有意な関連が見られませんでした」とあります。がん死亡との関連性は見出されませんでしたが、コーヒーに含まれているカフェインの効能ははっきりしています。
 また、2024年8月に『Frontiers in Nutrition』でコーヒーの効能についての研究結果が発表されました。
 「…米国の8300人以上の成人を対象に健康データを分析。研究者らは参加者の筋肉量を骨密度スキャンで調べ、それをアンケート調査によるコーヒーの摂取量と比較した。その結果、コーヒーを毎日飲む人は、飲まない人に比べて筋肉量が11~13%多いことが明らかになったという。この結果を受け、研究者は、コーヒーは筋骨格疾患であるサルコペニア(筋肉減少症)の発症リスクを低下させるのに役立つ可能性があると結論づけた。さらに、ノンカフェインのコーヒーと筋肉量との間には関連性が見られなかったことも特筆すべき点だろう。研究者は、「骨格筋量の低下リスクが高い集団では、コーヒーとカフェインの摂取量を適切に増やすことが推奨されるかもしれない」と付け加えている。重要なのは、この研究が「コーヒーを飲むと筋肉量が増える」ということを証明したわけではなく、コーヒーを毎日飲むことと筋肉量が多いこととの間に関連性があるということを示しているだけにすぎないということ。キートリー・メディカル・ニュートリション・セラピーの共同経営者で登録栄養士のスコット・キートリー氏は、この研究結果について、「『コーヒーを飲むだけで、年齢を重ねても筋肉量を維持できるようになる』という決定的な証拠ではありません」と話す。しかし、キートリー氏はこの研究結果を「興味深い」と語り、「この研究は、コーヒーやカフェインの摂取と、骨格筋量の改善との間に明確な関連性があることを示している」と付け加える。その理由についてキートリー氏は、カフェインの抗炎症作用と抗酸化作用が関係している可能性があると指摘。炎症は筋肉量の減少につながるため、炎症を抑えることで逆の効果が得られるかもしれないと説明している」と、『Women's Health日本語版』で研究成果をコンパクトに公表しています。
 簡単に言えば、抗炎症作用と抗酸化作用がカフェイン摂取により認められるというものです。
 長々となりましたが、コーヒー(カフェイン含有飲料)摂取により効能はどうやら著しいようです。ただ、冒頭にも綴ったとおり、ならば今すぐコーヒー(カフェイン含有飲料)を飲めば直ぐに効果が現れるかというと怪しいものです。「◯◯を服用すれば⬜︎⬜︎に効果がある!」式で言えば、「カフェインを服用すれば抗炎症作用と抗酸化作用に効果がある!」わけですが、いますぐその言葉に飛びついても、その効能が現れるにはどれだけの時間がかかるかは誰も分からないのが現実でしょう。子供のころから緑茶やコーヒーを楽しんできているならば話は別ですが。
 新型コロナ禍が始まったころには買い求めるのが難しかった納豆も、今ではいつでもスーパーの棚に置かれています。あれから四年あまりがたち、納豆を食べ続けている方がどれだけいるのだろうかと、納豆棚の前を通り過ぎるたびに頭をよぎります。あの日、イカ納豆スパゲッティが作れなかった恨みもよぎります。
 もちろん、体質改善等に苦労されている方が藁をもつかむ気持ちで様々な食品や医薬品を試される気持ちは十分理解しています。
 ただ、あまりにも刹那的な健康感に踊らされることは、一過性のブームに乗っかっているだけだと、ご注意された方が良いかと。中嶋雷太

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