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本に愛される人になりたい(92) スティーヴン・キング「書くことについて」

 書くことについて、特にエンタテインメント・ビジネスでのオリジナルな作品の土台となる原作(小説)を書くことについて深く考え始めたのは2015年ごろだったかと思います。
 ふり返れば京都の太秦に実家があったころのこと、斜陽化する映画産業の煽りを受けた映画関係者から聴こえてきた声の多くが、「予算がないから映画が撮れない」というものでした。まだ子供だったので深くは考えませんでしたが、予算がなければ自分で撮りたい物語を書けば良いのではないかという思いは残ったまま、やがてエンタテインメント・ビジネスに関わり数十年という月日が経っていました。
 そろそろオリジナルな物語を書いてみようかと発起したのが2015年ごろ(WOWOWのシニア・エグゼクティブ・プロデューサーになったころ)で、やがて2018年夏に第一作「春は菜の花」をデジタル出版して以来世に出した小説は二十作品を超えました。これらの作品はすべて私が観たい/製作したい映画やドラマの為の原作のようなもので、小説とは言い難いものだと思っています。あくまで、ストーリー・テリングです。
 この2015年ごろから、書くことについてかなり深く考えてきたり、書くことについての本を読んだりしましたが、私が大好きな作家の一人であるスティーヴン・キングの「書くことについて」は、大きな一つの指針になりました。
 本書の冒頭にある「履歴書」という章では、まだ無名で豊かではない暮らしをする彼の日々の心情が描かれていて、今や大家となった彼がとても身近な存在になり、その後に続く「書くことについて」のテクニック論的な話がぐっと心を捉えました。
 「ものを書くときの動機は人さまざまで、それは焦燥でもいいし、興奮でも希望でもいい。…動機は問わない。だが、いい加減な気持ちで書くことだけは許されない。繰り返す。いい加減な気持ちで原稿用紙に向かってはならない」という彼のはっきりしたスタンスを読み込んだとき、スティーヴン・キングがスティーヴン・キングである理由を知ったようでした。
 さてと、私もいつか「書くことについて」を誰かに語れるようになりたいものです。中嶋雷太

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