ショート・ショート・コドン・コード【短編小説】
電話が鳴った。そのままでもよいのだが、鳴っている電話を放っておくのは不思議と罪悪感がある。これが経験によるところの刷り込みなのか、生物学的な反応なのかはわからない。たぶん、すぐやるべき事を放っておくと知らぬ間にストレスを抱えるのかもしれない。だが、そのメカニズムを探るよりも、大元を断ってしまった方が精神衛生上よさそうだ。
僕は電話を取った。
「こんにちは。神崎です」
「こんにちは。神崎様。わたくし、元村証券株式会社の藤堂と申します」
「なんだ。環(たまき)か」
「環よー」