「サイゼリヤでもええやん」と思っている私
「デートにサイゼリヤ」論争から距離を置きたい
当サロンは美容と健康を良い状態に保ちたいとお望みのお客様が来られるので、婚活を頑張っておられる女性も男性もよく来られ、施術の合間に色々なお話を聞かせて下さいます。
この日はオーナーに「男性としてお話を聞いてあげて欲しい」と言われ、若手の管理職としてお仕事を頑張っておられる、30代前半の女性のお話を聞くことにいたしました。施術後、近くのコーヒーショップで席に着くや否や、その女性はやや早口で語ってくれました。
「それでね、その男性は毎週木曜日がお休みだっていうから、その日は何とか定時であがって合流したんです。そしたら、連れていかれたのがどこだと思います!?サイゼリヤですよ!」
出た、「デートにサイゼリヤ」問題。
「その人、席でメニュー広げて、妙に爽やかな笑顔で『お疲れ様。お腹いっぱい食べて下さいね。』って。いやいや、中高生のデートやないんやから!」
「ナイスガイですな。」
「ええっ、ほんまにそう思ってる!?Inaさんはグルメらしいからファミレスとか行かへんのとちゃいます?」
「僕がグルメやって誰が言ってたん…。」
別に男性を弁護しているわけではなく、本当に好きです、サイゼリヤ。
けっこう美味しいのに驚くほど安い。壁一面に飾られているルネサンス時代の絵画のレプリカも好きです。イタリア料理好きで美術好きの私には良いお店だと思います。
それはもちろん、より高級でこだわりのあるイタリア料理のお店に行った方が格段に美味しいですけど、あのお値段であの品質のものを出せるのならすごいと思います。
「ええやん、サイゼリヤ。」
「ええー…。」
さらに言うと、長居公園でランニングした後、デニーズでステーキとパフェを食べるのもとても好きです。鳥貴族の焼き鳥も美味しいです。全国展開のチェーン店には大きくなるだけの実力があるのだと思います。
美味しいものへの関心が薄いのかも知れない
本日の相談の趣旨はまさか、「デートでファミレスに連れて行かれたから交際終了」という気持ちに傾いていて、その踏ん切りがつかないので背中を押して欲しいのだろうか。そんな嫌な予感がしたのですが、私は男性の立場としてその男性の味方になりたい気持ちもあり、結論を急かさず、お客様のお話がひと段落つくまで黙って聞くようにしています。
お相手の男性は一つ年下で、自宅から自転車で10分くらいの距離にある、住宅街の中の整骨院で整体師として勤めておられるそうです。長身で細身の筋肉質。ジム通いが趣味の快活なスポーツマンタイプだとか。
「会話は弾みました?」
「そこはまあ、わりと楽しく会話できました。せやけど、お会計も確か2,000円いくかいかないかでしたよ!?私はあの人に安く見られてるんじゃないかって、そこが気になって…。」
「うーん…。食事代が高いか安いかは問題じゃなくて、その人、食への関心が薄くて、美味しいお店とかあんまり知らないんじゃないですかね?」
「えっ?」
「自宅から職場まで自転車で10分ならふだん電車にも乗らないでしょうし。スポーツマンなら食事もきっちり管理してお酒も飲まないんじゃないですか?」
「確かに、食事中は水しか飲んでなかったけど。でも炭水化物は持久力になるから摂っても良いらしいです。」
「やっぱりな。これが美味しいとかじゃなくて、必要な栄養が摂れるかという基準で食べている。」
「筋肉質の長い腕と脚がセクシーなんです。そこは魅力的なんですけど、ケチな人はちょっとなぁ…って、そこだけなんですけどね、気になるのは。」
この人は一体、私にどう言って欲しいのだろう。冷めてしまったコーヒーに口をつけながら少し考えました。
貴方が行きたいお店に決めてあげれば良い
「〇〇さん。お相手が美味しいお店に詳しくなくても、貴方はけっこう詳しいのですよね?だったら、デートの時は貴方がお店を決めてあげれば良いんじゃないでしょうか。」
「えっ、でも、彼の仕事が遅いから、行けるのが木曜日しかなくて…。木曜日だって、私が毎回早く終われるとは限らへんし。」
「もしかしたらそれがあるから、予約しないと入れないお店ではなく、気軽に入れてゆっくりできるお店を彼は選んだのかも知れませんよ。それに木曜日にしなくても、日曜日はお二人とも休みでしょう?」
「だけど、日曜日は彼はトレーニングがあるらしいから…。」
プライドが邪魔をするのでしょうか。自分で自分を制限するような発言が目立ちます。
「デートの日くらいトレーニングは早めに切り上げてもらえるようお願いすれば良いかと思います。それか一緒にトレーニングして、その後でお食事に行くのも良いですよね。そんなに受け身に構えなくても、自分から行動すれば良いと思いますよ。」
「そうですかね…。」
お話を聞いたところ、お相手の男性のことは良いなと思っておられるようですが、自分に自信がない為に、ささいなことを過剰に気にして、「自分は安く見られている」などと苦しんでいたようです。
ふだん食へのこだわりが無い男性であっても、美味しいものを食べたら嬉しくなると思います。一緒にいるから美味しいものが食べられるのなら、一緒にいる幸せを感じられて仲が深まるのではないでしょうか。
そうすれば、たまに仕事が遅くなった時に合流して、遅くまで開いているサイゼリヤで食事しお話しても、とても美味しく充実した時を過ごせると思います。絵画の中にいるマリア様も祝福してくれることでしょう。