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イメージの崩壊、あるいは方向転換。再生するべきなのは、むしろ新庄さん自身。ファイターズの明日は、15000人のファンとともに。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ba3bc35c3cee925614d759e624f6f25c4f3745d2


 4月23日、ファイターズ、6勝14敗の最下位。5月の連休前に負け越し二桁、いわゆるところの借金10以上になってしまったら、相当まずい状況になると心配していたが、なんとか回避している。故障者も多く、チーム状況は見た目通りに芳しくない。

 新庄さんの神通力も効果がなくなってきた。
そもそも「スーパースター新庄」イメージ大の人である。
野球に関するバックボーンは、現役時代の実績のみ。15年間、野球からも野球界からも遠ざかっていた。かつての活躍を知る層はともかく、若い人はテレビのバラエティやYouTubeで見ている「有名人」なのが現状だと思う。

ファイターズが、北海道に移転した時も、唯一、全国区で名前と顔を知られているのは、新庄剛志だった(それとGM高田繁)。「日ハム」は内地ですらマイナー球団だったんだから、北海道の民が知る由もない。知名度のあるスターはどうしても必要だったはずだ。

北海道に生まれ育った自分だから言うけど、北海道の人は、内地=本州へのコンプレックスと憧れがある。本州の有名人が大好きで、その本人が「わざわざ北海道へ来てくれたんだ!」としたら。それは熱心に応援したくなる。

2003年に移転してきたファイターズ。2004~2006の3年間、新庄さんが懸命にファイターズを盛り上げ、ひいては北海道も盛り上げてくれた、みんなで神輿に乗っかって駆け上がる力になったのは、間違いない。日本一の頂上へわっしょいわっしょい。

どういう経緯で新庄さんがファイターズの監督になったのか。わかるはずもないが、去年、今年の様子を見ていて思うところはある。
まず2021年の栗山監督最終年、終了時点で、看板選手の中田翔、西川遥輝、太田泰示を放出。新庄新監督就任、いきなり人気者杉谷拳士に「オフのバラエティ番組出演禁止令」が出る。野球に懸ける!という意志の現れだったようだが、拳士の影はどんどん薄くなり、オフに引退。

侍ジャパンに選出されていた近藤健介もホークスにFA移籍。この時点で、全国区の有名選手、野球に興味なくても名前と顔くらいは知られているような選手は、ファイターズには、一人もいない。(清宮幸太郎がいるけど実績が伴わない)知られているのは、つまり「新庄剛志」だけである。

ファイターズは、2016年の日本一以降(18年は3位)Bクラスに低迷、言うてみれば、北海道に移転してきた頃の「日ハム」の状況に戻っている。そこに救世主として現れる「スーパースター新庄再び降臨!」というストーリーを、もしかすれば球団なのか電通なのか知らんけど、作成していたのかもしれない。

 だとしたら、そのストーリーから抜け落ちていた事柄がある。
「19年間、北海道で野球をしてきたファイターズ」それ自体を。
19年の間に、新庄さんがいなくなった15年の間に、紡がれてきた北海道とファイターズの物語、それはファイターズを愛してきた一人一人のファンとチームとの物語でもある。

19年前、北海道民は、プロ野球にほとんど無垢であった。しかし19年の間に野球好きは増え、熱心に野球中継を見聞きし、チームを熟知し、作戦を読みチーム構成を想定する、スコアブックを毎試合つけるような、ファンがいっぱいいる。そうさせたのは、もちろん他でもないファイターズだ。

なのに、新庄さんに監督を要請したファイターズ球団は、あからさまにその自ら育てたものを無視する。「ないこと」にしてしまった。

敢えての、新庄剛志一択。
新庄の知名度を最大限に活かして、全国的な認知度を上げ、来るべき北広島新球場の開幕に向けて集客を図るー

というわかりやすい図式は、もろくも崩れ去る。
いっぱしのプロ野球通と成長した北海道のファンは、いかな新庄さんが奇抜な作戦を連発してみたり「トライアウト」などと笛を吹いても踊らない。
負けが込んだチーム。最終年の札幌ドームから客足はすでに遠のいていた。

盛大に開幕した、エスコンフィールド北海道 開幕3連戦こそ満員御礼だったが、すぐに半減する。「平日で15000人!😢」と嘆くけれど。平日のナイターでも最下位ぶっちぎりでも「北広島までファイターズを見に来てくれるファンが、15000人も残っている」と考えるべきではないのか。

19年間で蓄積した、北海道日本ハムファイターズを支えるファン。
それは、何を置いてもスーパースター新庄を愛するファンだけではなく、日ハムでありファイターズであるチームを愛し、生きる支えにしている人たちでもあるはずだ。

こうして眺めてみれば、敢えて知名度の高い選手を放り投げ、若い無名の人々によってチームを再構成し、新庄剛志の冠のもと、北広島に伝説を打ち立てようと、本気で挑んでいるのだとしたら。

今現在の荒涼とした無の中に、それでも声を張る、15000人を、どこまで新庄さんが大事にできるのかで、未来は見えるように、思える。

北海道に来た時のファイターズは、地面を見ていた。地面を見つめ、こつこつろ歩き、庶民の顔を見て、一人一人に挨拶していた。
そういう地道さを古いもの、無駄なことと切り捨てて、メディア戦略、ネットの情報と広告収入への依存。

漠然としたイメージの切り売り。中身のない言葉。実質を伴わないチームの喧伝。今のファイターズは、そんなもので出来ている。
それはイコールで新庄監督のことでもある。

現実にあるのは、勝てない監督と、それでも一生懸命応援しつづける15000人のファン。若いチームを「成長させる」と経験の乏しい監督がいうのは、傲慢だ。一緒に成長するしかない、変わっていくしかないんだって、心から思うけれど。

豪奢なお城の中に、たった一人で暮らしている王様のように、世界に向かって叫んだって意味はない。

勇気を持って、「計画」を変えてもらいたい。
計画通りにはならない。だって相手のあるゲーム。それが野球というボールゲームの面白さなんだから。
15000人のファンのために、まずは野球を始めて欲しい。

(文中敬称略)









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