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『銀色のステイヤー』河崎秋子/角川書店 直木賞作家の新たな挑戦ー輝くターフを駆け抜けろ!

『銀色のステイヤー』河崎秋子/角川書店

 河崎秋子と言えば馬か熊。それも土着的な世界で血塗れ、喰い合い、動物と人間の境界線を曖昧にする暴力性が、これまで読んだ作品から溢れて来るものだった。その河崎秋子が『銀色のステイヤー』とは!?
って即買いしたんですけどね。芦毛のステイヤーは、あたしの大好物。

え?なんだそれ?
そう競馬を知らない読者にはちんぷんかんぷん。そして、競馬を知らない読者、もしくは競馬ファンになったばかりの人たちにこそ、読まれたくて書かれた小説だ。

 子馬が生まれる生産育生牧場から始まり、一頭のサラブレッドが、いかに「競馬馬」になって行くのか。競馬産業とはどんな世界なのか。
今の時代に添った言葉使いとわかりやすい展開で、軽快に読ませていく。
全体に明るい。競馬の非情な現実は描かれるが、無惨な描写はない。

ほんとに河崎秋子なのか?
と思うけど、律儀な文体、繊細な馬への視線、毛並みや鼻息や涎や馬糞や…リアリティある表現は、やっぱり河崎秋子なのだろう。

ハードな内容を求める固定客もあるかもしれないが、新しい読者も開拓しなければならない。羊飼いになり、小説を書き、作家として自立するために羊飼いをやめた作者らしい。挑戦の心を見る一作だった。

古参の競馬フアンなら、小説の主人公、シルバーフアーンのモデルは、すぐピンと来るはずだ。
芦毛のスーパーアイドル。希代の癖強馬。気まぐれなあの灰銀の馬を。




#河崎秋子
#銀色のステイヤー
#反対はスプリンター
#あたしはホワイトストーンが好き
#そりゃオグリキャップね

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