シェリル・サンドバーグの「OPTION B」は最悪な事態から始まった
シェリル・サンドバーグの著書といえば、「LEAN IN(リーンイン)」を連想をする人も多いと思う。
「LEAN IN」をまだ読んでいない私だが、今年の初めに「OPTION B」を読む機会があった。これはLEAN INの後の著書である。
サブタイトルにある「レジリエンス」という言葉に私はあまり馴染みがなかった。コトバンクによると、
「レジリエンス」(resilience)は、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳される言葉で、近年は特に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えています。(引用:コトバンク)
落ち込んだり悲惨な状況から回復する自分自身の力のことなのね。
この本は冒頭から最悪の事態、シェリルの夫が急死するところから始まるんだけど、私はうっかりジムのエアロバイクに乗りながら読み始めてしまって後悔した。
読み進めるのが辛い・・と思ったけど序章はそんなに長くなかったし、最後は本人が元気になるという予想はついているので大丈夫。きっと読者とともに「レジリエンス」を鍛えていくストーリー仕立てなんだろうと思って読み進めた。
注:ここから先は、ネタバレする可能性があります。
一般人の私たちが最悪の状況から這い上がるには
この本には夫の急死で人生のどん底にいるシェリルの友人、心理学者アダム氏(共著)とともに「レジリエンス」を自分で鍛えるための具体的な方法を実践し、実体験とともに心情を語っているのだが、ちょっとナナメな感想がAmazonレビューに寄せられていた。
電話して相談する相手が、有名大学の心理学教授だったり、イーロンマスクが気遣って何かに招待してくれたりと。
ここから、どうレジリエンスを学べと。
どう、また立ち上がれることを学べというのか。
上記の意見もわからなくはない。キャリアも仕事も経済も恵まれていることは確かだ。でも、環境は違っても心の移り変わりは同じではと思うけどね。
まず、レジリエンスを鍛えるためにする「3つのPをしない」ことが大事だと共著のアダム氏。3つのPと言っても英単語なので、日本人にはPよりも以下の日本語の方がしっくりくると思う。
自責化:Personalization
普遍化:Pervasiveness
永続化:Permanence
自分を責めず、この最悪の状態がいつまでも続くと思わないことが大事と。ごもっともなのだが、当事者になると渦の中に飲み込まれるように感じてしまうもの・・特に文中の以下の部分に共感する。
・悲しみや不安の感情には二次派生する別の感情に二重に苦しめられる。
・「自分がその状態(=最悪の状態)であること」に落ち込む。
そこで、以下のことが重要であると。
・心の傷の回復までの時間は個々に違う。
・最悪な中でも「良いこと」に気づこうと努力する。
・最悪を受け入れることが必要で、「本当に最悪だわ。」と開き直ることで気が楽になる。
最悪の状況の人に周りはどうするか
もうひとつ特筆するならば、「最悪な状況になった本人に周囲はどう対応すると良いか」という視点で読むと良いということ。「落ち込んでいる本人が自分を”お荷物”だと思い込む傾向がある」というのはとても共感した。
以下は私のメモ。
・ひどく落ち込んでいる本人に「連絡を途絶える、誘わない」などの気遣いが本人に残酷に感じる。
・苦しむ友人に背を向ける、自分は無力だから何もしない、これらの行為は本人を傷つける。
・必要な時はいつもそばにいるよという寄り添い感が大事。
・遠慮せず顔を見せる、声がけをする。
特に「必要な時はそばにいるよ」は、心の拠り所があるのとないのとは大違いだと思う。私もそう言える人間でいたい。
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本の中でシェリル本人も言っているが「LEAN INではパートナーのいない女性が直面する困難について自分は分かってなかった」というようなことを書いている。実際に自分に起きた最悪な事態で思い知ったと。だからこそ、この本の内容に厚みが出るのかもしれない。
読後感は悪くはなかった。実際にシェリルが最悪の状況からどういうプロセスを経て執筆している時点でどういう状態になっているかはよく分かった。少なくともどん底からは脱出していて、最愛の人がいなくなった状態を受け入れており、さらに幸せになりたいと素直に思うところまで行っているというのは事実であるから。