恋は落ちずに”アガり”たいのに

「今週、恋に落ちる人もいるでしょう」

星占いで予言された

そうかあ

異性に抱くトキメキから遠のいて久しい

気になる人もいない

だからどこか他人事

それより気になったこと

どうして恋は”落ちる”、なのか

朧げな記憶を手繰り寄せてみる

気分はウキウキ

肌ツヤの調子だってよくなる

自分にも他人にも、妙に優しくなれる

目に入るもの全てを淡いピンクに塗り替えたくなる

アガっている、間違いなく

いや、待てよ

それって初期症状だ

追いかけるように必ずメランコリーが襲ってくるんだった

愛の大きさをはかりたくなったり

見たことのない自分と向き合う羽目になったり

永遠なんてこの世のどこにもないことを知ってしまったり

ヒリヒリ、ズキズキ

痛い

アガった反動が心身を直撃する

大人になると安易に飛び込めなくなるのはそこか

そうそう

この人好きかもって認めざるを得なくなるあの瞬間は

真っ逆さまに落ちていく

それは突然やってくる

行き着く先も分からぬまま、真っ暗闇を一人で垂直に

だけど不思議と怖くない

まるで甘美な罰ゲーム

恋の本質は”堕ちる”にあるのかもしれない