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350以上の社会課題現場に向き合うリディラバが考える、企業が「社会課題解決事業」を立ち上げる時の「難しさ」と「乗り越え方」(後編)
ESG投資の拡大、SDGsの取組への注目が高まる中、企業も社会課題解決への取り組みが求められています。
前回のnoteでは、社会課題に関する事業立案の「難しさ」を考えました。今回のnoteでは、リディラバが実践する「乗り越えるためのポイント」について考えたいと思います。前編はこちら
◆社会課題に関する新規事業立案で大切なこと
社会課題に関する新規事業立案にはいくつもの難しさがある中で、事業性を担保しつつ、社会的インパクトを生み出す課題を特定するには、どのように事業立案を進めていけばよいのでしょうか。
重要になるのは、「取り組もうとする社会問題の全体像を捉え、核となる課題を特定すること」と考えています。
どんな新規事業開発においても、「顧客の課題は何か」「顧客の不を探せ」ということは必ず問われ、繰り返し考えていると思います。
こと社会課題に関連する領域においては、上記に加えて、事業として取り組もうとする課題が
「その社会課題全体にインパクトを与えうるものなのか」
「お金を払ってでも解決したいと思うプレイヤーはいるのか」
「自社として取り組むことで、課題解決のための価値を提供できるのか」
といった複数の視点から検討し続けることが必要になります。
取り組もうとする社会課題に関する理解を深めながら、自分たちが取り組む課題をどのように設定し、事業の種として読み解くのか。これが社会課題に関連した事業立案における、困難を突破する鍵だとリディラバは考えます。
◆リディラバが社会課題解決に向けた事業開発に取り組む場合
リディラバの事業開発チームは、10年以上350を超える社会課題現場と向き合い続けた知見とネットワークを元に、企業の方々と社会課題解決に向けた取り組みに挑戦してきました。
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【リディラバ×関西電力】
自分たちが取り組む社会問題の全体像を捉え、核となる課題を特定するために、リディラバが実際に新規事業開発を進める上では、事業開発のプロセスにおいて3つのポイントがあると考えています。
①テーマの設定
事業で取り組む領域を定義する。自分たちが取り組む事業に関連して、誰のどんな困りごとがあり、どのような世界を目指すのかを明確にする
②課題と要因の構造的な分析
自分たちが取り組む課題の全体像を整理し、それぞれの課題が生じている要因を詳細に明らかにする。課題の分析にあたっては、デスクトップリサーチだけではなく、フィールドワークやヒアリングを通じた現場の声を重視し、課題が生じている具体的なシチュエーションや要因を精緻に理解するために仮説検証を繰り返す
③ソリューションの検証
明らかにした課題のシチュエーション・要因から提供価値を設定したら、その提供価値がどのように顧客に受け入れられるものなのか、実証をもって確認する
当たり前のようなことが並んでいるとお感じの方々もいらっしゃるとは思いますが、実際の事業検討において躓いたり出戻りが派生するのは上記を徹底できずに事業検討が進んでいるケースが多いためと思っています。
例えば、自社が提供したい技術等の「手段」を元に事業検討して、顧客の存在が不在になる。顧客が抱える課題を深堀しきらないまま検討が進み、煮え切らない事業案しか出ずに社内稟議段階で行き詰まる。実証までやったものの、顧客への価値が実証できずに終わってしまう。こうした状況に陥らないためにも、リディラバでは上記の3つのポイントを意識しつつ、事業検討を実践しています。
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具体的な取り組み事例を元に、リディラバが企業の方々とどのようにそれぞれのプロセスを実践しているのかについては個別の記事でも紹介していきます。本記事ではそれぞれのポイントのみ紹介します。
①テーマの設定
既存事業の延長にない新規事業を会社として立ち上げる場合、会社のマテリアリティや重点戦略分野からテーマを設定するケースが多いかと思います。
重要なのは「手段」に陥らないテーマ設定。自社の強みを活かすことは重要ですが、ソリューションありきでテーマを決めると、真に顧客が抱える課題を捉えた提供価値が設定できず、最終的に事業検討が行き詰まってしまうことが多くあります。最終的に事業化したときに大きな社会的インパクトが生めるように、たくさんの課題に連関するような、社会における根が深い「不」(課題)を広く捉えられるようなテーマ設定が重要になります。
リディラバが企業とご一緒する場合には、「自社アセットの抽象化」、「領域設定」というプロセスを通じてテーマ設定を行います。
「自社アセットの抽象化」は、企業が持つ技術力や商材といった強みについて、そのままソリューションとしての転用を目指すのではなく、「誰のどんな課題を解決しているものなのか」に注目し抽象化して社会における機能として捉え、その価値が発揮されやすい社会課題領域を検討します。
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「領域設定」は、マテリアリティやSDGsで掲げられるレベルの大きなテーマから、そこに関連して生じている具体的な課題を洗い出しながら、自分たちが取り組む領域にどんな課題があるのかを整理します。
得てして、自社のメンバーだけでアセットの抽象化を行うのは難しかったり、具体的な課題の洗い出しを行うにも幅が出ないことがあります。リディラバでは、幅広い社会課題専門分野に向き合ってきた広い知見を元に、企業が持つアセットの社会的な価値や、領域にある具体的な課題の洗い出しを通じて、社会的インパクトを最大化するためのテーマ設定をリードし、企業の方々と事業検討しています。
②課題の分析
領域が決まったら、取り組む課題を洗い出し、深堀していきます。リディラバとして最も重視し、時間をかける作業です。
ポイントは「構造化」と「現場主義」です。
繰り返しにはなりますが、社会課題は要因が多岐にわたり、複雑に絡み合っています。今起きている事象を適切に理解するために、リディラバは10年以上一貫して「構造化」という考え方を通じて社会課題を紐解いています。
構造化の詳細はここでは省きますが、具体的には、課題に関係するステークホルダーとそれぞれの関係性・行動原理、そして背景にある社会的文脈を整理し、課題が生じている「ボトルネック」や、「何が変われば全体が大きく動くか」に関する仮説を構築していくプロセスとなります。
同時に、課題を構造化しながら詳細に分析していく上で、リディラバが最も重視している要素のひとつが「現場主義」の考え方です。
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構造化を繰り返す中で見えてきた課題仮説に基づいて、フィールドワークやヒアリングを何度も繰り返し行い、徹底した現場主義の姿勢で課題を分析していきます。課題が起きている具体的なシチュエーションは何か。なぜ起きてしまっているのか。生じている理由の奥にある、本当の要因は何か、といった問いを明らかにすべく、その領域で活躍するトッププレイヤーや当事者の元に足を運びながら仮説検証を繰り返していきます。
事業開発の現場では、デスクトップリサーチで見つけた課題をそのまま事業検討の土台としたり、十分なヒアリングをしないまま検討を進めてしまうケースも多くあると感じています。しかし机上の検討だけでは、新しい事業につながる新たなインサイトは獲得できません。
企業が自ら、社会課題現場に入り込んで調査を行うことは容易ではありません。社会課題現場へのスタディツアーを皮切りに10年以上事業を続けてきたリディラバは、全国に350を超える現場とのネットワークがあります。環境、福祉、一次産業、etc.それぞれの分野で活躍するNPOや社会起業家、あるいは先進的な取り組みを進める自治体等、幅広いプレイヤーと連携しながら、課題の解像度を極限まで高めて、取り組むべき課題を企業の方々と一緒に特定していきます。
③ソリューションの検証
課題の分析と同じく、ソリューションの検証においても現場主義の考え方が非常に重要となります。自分たちが設定した提供価値が本当に顧客にとって価値を感じてもらえるものなのか。顧客の目線に立った時に、使いたいと思うサービスになりえるのか。事業としてリリースする上では、現場での検証が必須となります。
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「VRオンライン旅行サービス」の実証事業の様子
実証についても、リディラバが持つマルチセクターとのネットワークを活用します。中央省庁や全国100以上の自治体とのリレーション、多業界にわたる大企業とのネットワークを元に、実証の場をアレンジし、ソリューションの価値や改善点を明確にしていきます。
以上、今回は、リディラバが実際に企業の方々と社会課題解決に向けた事業立案に挑戦する中で見えてきた「難しさ」と「乗り越えるためのポイント」について考えてきました。
我々は日々、より社会インパクトのある事業を企業を含めた様々なステークホルダーの方々と検討しています。社会課題に関する事業開発におけるお困りごとがございましたら、ぜひご連絡ください。
<お問い合わせ先>
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