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人生はまるで魔王のいないRPGゲームのようだ。

RPGゲームとは、ロールプレイングゲームの略で、自分のキャラクターを操作し、順番にクエストをこなしながら、他のプレイヤーと協力したりして、試練を乗り越えて目的の達成を目指すゲームである。

大抵はラスボスである魔王を倒すことが目的で、そのためにメインクエストを進めたり、サブクエストでお金を稼いで武器を買ったり、経験値を蓄えてスキルを習得したりする。

竹田での生活も人生もRPGゲームと似たような気がしている。

竹田で進めているクエストは大きく2つに分けると、「“ほしとたきのいえ”という場所の価値を高めること。」がメインクエストで、「3DCADなどデジタルファブリケーションの修行をすること。」がサブクエストになる。

1つの大きなクエストをクリアするためには、それに内包される小さなクエストをクリアしていかなければ、次のステージは開放されない。

例えば、“ほしとたきのいえ”という場所をゲストハウスにしようと思うと、保健所で営業許可を取らなければならない。保健所の許可を取るためには、消防署から消防法令適合通知書なる書類が必要になる。さらに、その通知書を得るためには消防設備の業者に設置を依頼しなければならない。

このように決められた手順を段階的に行うことは、まさにRPGゲームのメインクエストのように、1つクリアすれば次のクエストが開放される仕組みと同じだ。

もう一つのクエストである「3DCADなどデジタルファブリケーションの修行をすること。」がサブクエストである理由は、ゲームでいうところのレベリングにあたると考えられるからだ。

レベリングというのは、ゲーム内でキャラクターのレベルを上げるために取られる行動を意味している。一般的には戦闘やクエストで得られる経験値が一定の数値に達すると上がるようになっている。

毎日のように暗中模索しながらコツコツと3DCADのソフトをいじっているのは、モデリングの経験値を積み重ねて、自分のレベルを上げて、ものづくりスキルを獲得するためである。

Fushion360でモデリングしたサングラス

モデリングの練習は、いつでもでも出来ていつでも辞められるから、サブクエストのようにいつでも受注や辞退をして他のクエストを受注できる。だからサブクエストの要素が強い。メインクエストと比べれば得られる経験値は少ないが、やればやった分だけ経験値が上がるなどメリットがある点では、3D修行もサブクエストも同じようなものだ。

日常で行う大なり小なりのことは、ほとんどゲームのクエストに置き換えて考えられる。

ゲストハウスを作るために、色々な業者に依頼して届く、見慣れない見積書や請求書などの書類も、行政書士がやるような旅館業の許可申請も、何でもクエストだと思えば、取り掛かるハードルが下がる。

私は竹楽というお祭りで家に竹灯籠というアイテムを飾りたいと思った。そのための手順として、まずは竹を持っている団体を見つけなければならない。

そうなると自分で自分にクエストを発行して、自分というアバターを操作する必要がある。

【竹クエスト】
◎竹田エリアで竹を持っている団体を捜索せよ。

はじめに情報収拾する必要がある。町のみんなに聞き回ったり、ネットで調べたりして、そうやって竹田のNPO法人 里山保全竹活用百人会の副理事のおじちゃんと会うことができた。

これで【竹クエスト】はクリアしたことにできる。

【竹クエスト】
◎竹田エリアで竹を持っている団体を捜索せよ。
▶︎COMPLETE! 

おじちゃんが言うには、青竹の灯籠が余っているそうで、ボランティアに参加してくれたら青竹を譲ってくれることになった。

次のクエストはボランティアのクエストである。これは、自分でクエストを発行した、というよりかはクエストを探し出した、という方がしっくりくる。

【ボランティアクエスト】
◎毎週末の竹楽のお祭りに向けた準備のボランティアに参加せよ。

私は積極的にボランティアに参加して、お祭りの成り立ちや団体の取り組みなどの話を聞いた。
2週間にわたってボランティアに参加して、神社など各場所に配られる竹灯籠を仕分けたり、搬送したり、竹灯籠の大きさや質感や重さを体験しながらお手伝いをさせてもらった。

【ボランティアクエスト】
◎週末の竹楽のお祭りに向けた準備のボランティアに参加せよ。
▶︎COMPLETE! 

こうして、竹灯籠というアイテムを入手できた。「竹灯籠を飾る」というイメージを現実の形にする方法として自分にクエストを発行してゲーム感覚で物事を進めるやり方があってもいいのではないだろうか。

私は東京から竹田に来て「頭の中でイメージしたことを、現実の形にする」感覚を掴めた気がする。

竹楽に合わせて“ほしとたきのいえ”で竹灯籠を灯した写真 2018年11月17日

人生もRPGゲームも似通ったところが多い。だが、“人生”と“RPGゲーム”の決定的な違いは、魔王が設定されていないことだ。

つまり、人生というゲームには「ゲームクリア」という概念がない。人生には最初から決められた目的がないのだ。

まるで、Minecraftを初めて遊んだ時のように、クリエイティブモードの果てしなく広がる空間に、ぽつりと自分がいるだけで、どこを目指して、何をすればいいのか、ちっとも見当もつかない感覚だ。まるで人生みたい。

Minecraft(マインクラフト)とは、サバイバル生活を楽しんだり、自由に立方体のブロックを配置して建築等を楽しむことができるコンピュータゲームである。

Minecraftのようなsandboxゲームは、決められた手順の遵守を要求されないところが醍醐味であり、目的を自分で設定しなければいけないから複雑なのだ。

sandbox(サンドボックス:砂場、砂箱の意味)とは、定められた攻略手順の遵守を要求されず、プレイヤーが自由に目的や目標を決めてプレイするゲームデザインのこと。

人生はストーリーで構成されているが、Minecraftにはストーリーやシナリオといった設定はない。何かを作ろうと思えば作ることは出来るが、それらは全て内発的な動機によってプレイするゲームだから、RPGゲームのように外発的な作用をするNPCなどは存在しない。

NPC(ノンプレイヤーキャラクター)とは、プレイヤーが操作しないキャラクターを指す言葉。ゲームの進行やイベントの発生などの役割がある。

コンビニで買い物をする時にやり取りをする店員さんは、ゲーム内で言うところのアイテムを販売するNPCのようなものだが、もし店員さんとコンビニ以外で会話して恋にでも発展すれば、たちまちNPCではなくプレイヤーに見えてきて、「恋愛」というイベントクエストが発生するだろう。

そう思うと、sandboxゲームよりもRPGゲームの方が人生っぽい。

人生には他のプレイヤーやNPCが数多く登場して、やり取りをする内容やタイミングよってストーリー展開のパターンが無限に変化するようなゲームだ。ただし、ゲームクリアの条件である魔王がいないから、目標がない。

つまり、魔王がいない点は、sandboxゲームも人生も同じで、自分で魔王さえ設定すれば、人生という壮大なゲームを楽しむことができるということだ。

人生というゲームを楽しむ方法は、Minecraftから学べるかもしれない。

しかし、人生ゲームを楽しもうとすることを阻害するかのように、マウンティングを仕掛けてきたり、高らかに価値観を押し付けてきたりする他のプレイヤーもいるが、それらはNPCだと思ってしまえば、喜怒哀楽しなくて済むようになる。

だが、人生というRPGゲームでいつまでも魔王を設定しないでいると、他のプレイヤーからNPCだと思われてしまう。魔王を倒す勇者と比べればNPCには尊厳はない。

それではいけない。自分の人生ゲームなのにNPCみたいにモブ扱いされるのは、おかしい。それでは世界のどこにも主人公がいなくなってしまう。

だからこそ、自分の人生に魔王を設定して勇者になることが必要なのだろう。誰かにとっての魔王は、YouTuberかもしれないし、経営者かもしれないし、世界平和だったり、一家団欒だったりするかもしれない。

少し昔はみんな同じような魔王が設定されている人生RPGゲームの時代だったらしい。そこに、sandboxゲームのような自由にプレイできる要素を加えて、各自が自分の好きな魔王を設定できるRPGゲームにアップデートされたのが今の時代だ。

とはいえ、魔王の設定の仕方のチュートリアルを受けていないし、親世代は魔王を自分で設定するというバージョンでゲームをプレイしていなかったりする。だからMinecraftの世界に放り込まれたような感覚になる。

チュートリアルとは、使用方法や機能等を解説したもの。オンラインゲームの場合、画面の見方や操作方法、世界観の紹介等を、簡単なクエストを通じて教えるという手法がよくとられる。

でも、よく考えてみればMinecraftにはチュートリアルはなかったが、それでも適当に動き回って、ブロックを壊したり建てたりして、やり方がなんとなくわかるようになって、結局は楽しく遊べた。

つまり、人生というRPGゲームを手っ取り早く楽しみながら攻略する方法はこうなる。

①適当に動き回ってなんかやってみる。
②現時点で見える魔王を設定する。
③自分でクエストを発行する。
④自分でこなしたり、他のプレイヤーにクエスト依頼してクリアする。
⑤目的達成に必要とあればレベリングをする。
⑥つまずいたら人生の先輩プレイヤーとパーティを組む。
⑦邪魔してくる人はNPCだと思う。
⑧魔王を倒したら次のステージで魔王を設定する。

このやり方なら、人生ゲームに取り掛かるハードルも下がるし、より楽しくプレイできる気がする。

私はNPCからプレイヤーに、そして魔王を倒せる勇者になるために、クエストとレベリングを続けている。幸いなことに、私の竹田での活動はチュートリアルボーナスをくれるスポンサーがいてくれるので、とても幸運でありがたいことだ。

いつか来るログアウトの日まで、今日も人生というRPGゲームをプレイしていこうと思う。

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