脱ぎ捨てられた靴たち
いつも通らない道を使ったときのこと。橋の上に、汚れた白い長靴が脱ぎ捨てられていた。これが片方の靴や草履ならよくある光景と思う。道端で見かける靴は、たいてい片方のみで左右そろっているのってあまり見ない。しかも橋の上だったので、降りて写真を撮りたい衝動が沸いた。結局撮らなかったのは、その日カメラを持ち歩いていなかったのと、事件性を期待している自分の卑しさが鼻についたから。
それにしても、なぜ道の上には片方の靴がたくさん落ちているの。その靴が道路に転がるまでのストーリーを想像してしまうんだ、とドライブ中に話してくれたイラン人を思い出す。たしかに、クロックスみたいな草履はともかく、割と新しい革靴だと想像が膨らむなぁと私も真面目に考えた。
そして、女性ものの靴を見かけることは少ない気がする。ハイヒールとかフェミニンな靴は見たことがない。ここが田舎だからだろうか。ああいうのは都市に近い街の隅で転がっていてほしいとも思う。
乳幼児の靴は持ち主に届けてあげたくなるってイラン人がボソリとつぶやいて、それだけは悲しいストーリーであってほしくないなって私も思った。