見出し画像

あやしい笑顔

いつもニコニコしている人の中には、仮面だなと感じる人がいる。その人の裏の顔を知ったとき、カンが当たったことに私はホッとする。あ、人間だった、と。

友好的な態度を常に表に出す姿勢は、本当は見習うべきだと思う。それはそれとして、私が興味なさそうにしていてもお構いなしにニコニコして、必要以上に近くにいられるのが苦手だ。何かを売りたいなら、早くそう言って(営業をかけて)ほしい。何か褒められるところを見つけて褒めてくるけれど、それが定型文だったり使い回しのフレーズだったりする。こちらも微笑の仮面をつけざるをえない。あれ、疲れるのに。

営業目的なのは仕方ないとしても本心から困るのは、こちらが好意を持っていない人に「懐かれる」ことだろうか。

「懐かれる」とは、ただ好意をもたれるのとは違う。公園で見かけた犬と少し遊んだら、もっともっと遊んで、と家にまでついてくるような「懐き方」。いわゆる、人との距離感の取り方がズレている人。

仕方がないので庭先でなら遊んであげよう。でも家の中には入れないよ、とこちらが境界線を引かないと、とことん同化しようとする。一度でも家の中に入れてしまえば、オレたち昔からの親友だったよねという顔をして居座ってしまう。勝手にクローゼットをあけられて、こっちの方が似合うよなんて服を入れ替えさせようとする。ほら、お揃い。双子コーデ。なんて鏡の前でニコニコされたら堪らない。そのニコニコは心からの満足のこもったものだろうけど、私には企みをもったあやしい笑顔にしか見えないのだ。

だって、お前は私を飼いたくてそうしているんだろう。犬のふりをして従順さをアピールしているけど、本心ではこちらを連れ歩くペットに据えて、周りに見てもらいたがっている。その、周りに見てもらいたがる態度こそが私が君に好意をもてなかった理由のひとつなんだけどね。





いいなと思ったら応援しよう!