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アメリカ医療通訳の私の英語遍歴④
あけましておめでとうございます。こちらはまだ大晦日です。今晩は、お寿司に年越し蕎麦と日本的に過ごそうと思っています。新年はパンケーキに卵のとっても洋風な朝ごはんになりそうですが。笑
それでは、私の英語遍歴の最終編を書いていきたいと思います。長いこと、お付き合いいただきありがとうございます。
のちに夫となる当時婚約者の転勤を機に、9年間、勤めていた大学を退職し、他州へと引っ越すことになりました。
引っ越し後は、高校やユーススポーツの派遣トレーナーとしてバイトをしながら、将来的にはリハビリを専門とする仕事がしたいと思い、進学準備を進めていました。(アメリカでは高校スポーツにもアスティックトレーナーの常駐が義務付けられています)
その中で、いままでの英語に対する姿勢を変える苦い出来事がありました。
当時、アメリカではアメフトによる脳震盪の長期的健康被害に関する研究が進み、元プロ選手や家族がNFLを訴えるという脳震盪問題が起こっていました。それに伴い、NFLではルールやガイドラインの改正が進められ、その流れは大学や高校スポーツにも及びました。
高校生アスリートに脳震盪の徴候や症状が少しでも見られた場合はどんなに軽くとも、その日の練習・試合には参加できないというルールが導入されました。
そんな中、派遣として某高校の試合をカバーしていた時、プレイ中に頭を打った選手がいました。本人は大丈夫だと言い、記憶障害などの目立った徴候も見られませんでしたが、頭痛があるということでした。
未成年なので、親御さんに状況を説明をすると、「本人が大丈夫だと言っているのに、なぜ試合に出られないんだ」と激怒。私は「頭痛があると言っています。お子さんの安全を守るためです。」と説明しましたが、親御さんは納得していない様子でした。それでも私はその選手を試合には戻しませんでした。試合中なので、ほんの数分のやり取りでした。
*患者の機密保持のため、少し設定を変えて書いています。
数日後、上司から連絡があり、「あなたのサービスに対する苦情が入ったので仕事を休んでほしい」と言われました。
同じ時期、厳しくなった新ルールにより、試合に選手を戻したいコーチや親御さんと他の派遣トレーナーの間でもトラブルが多発していました。苦情が入っても、「トレーナーとしての職務を全うしただけ」と、誰も責任を問われることはなかったのに、なぜ、私だけ?
話を詳しく聞いてみると、あの親御さんは「トレーナーが息子の試合出場を不当に阻止した。息子は頭痛があるなんて言っていない。トレーナーが英語を理解できなかったせいだ」と主張していたそうです。上司は「相手の言い分が嘘なのは分かっている」と言ってくれましたが、これ以上問題を大きくしないために、「もうあの高校には行かないように」と指示されました。
融通の効かないトレーナーだという苦情が来ることは覚悟していました。しかし、それが英語をターゲットにした虚偽の内容にすり替えられ、それが原因で仕事のシフトから外されることになったのは、想像以上にショックであり、自分の立場への危機感を強く感じました。
以前の職場では、限られた人々とじっくり時間をかけて信頼関係を築きながら働ける、恵まれた環境にいました。しかし、不特定多数のネイティブスピーカーを相手に短時間で結果を求められる仕事では、どうすれば良いのか、改めて深く考えさせられる出来事でした。
そして、やはり第一印象で舐められないためには 訛った発音を向上させるしかない、という結論に至りました。こうして私は、発音記号や発音アプリを活用し、これまでスペルや耳にだけ頼って学んできた英語発音を、一から学び直すことにしました。
この作業が、ほんとうに新鮮で楽しい発見の連続でした!
例えば、薬の名前「アスピリン」。英語では Aspirin と書きます。私は "P" の後に "I" があるので、音を聞いた時も「ピ」と聞こえているように感じ、自分もそのように発音していました。まるで空耳アワーのようなもので(笑)、一度そう思い込むと、それ以外には聞こえませんでした。
しかし、正しい発音は a·spr·uhn で、"P" の音から母音を挟まずにそのまま "R" に繋がります。このように、日常的に耳にして当然のように使っていた単語が、実は違う発音だったということに何度も気づかされました。これを私は「ローマ字の呪い」と名付けています。
こうして、新しい発見を楽しみながら、やっと英語と向き合い始めてしばらく経ちました。だからと言って、ネイティブのようになれたのかというとそうではなく、まだまだ発展途上中です。英語ネイティブの息子にときどき注意されながら、毎日、学びを続けています。
以上が私の英語遍歴です。
長い話にお付き合いいただきありがとうございました。もしこの記事を楽しんでいただけたら、フォローや「すき」、コメントをしていただけると励みになります。それでは2025年も宜しくお願いいたします。