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ベルリンかたぎ
ベルリンといえば、ベルリナー・ルフトといって、固定観念を嫌う開放的な気風で有名。このオープンな雰囲気に引き寄せられ、世界中から集まったアーティストたちは、相互に影響を与えあいながら、既成イメージへの挑戦を繰り返しています。したがって、ここでは何かと伝統重視のアルゼンチンタンゴもベルリナー・ルフトの影響を免れることはできません。
(タイトルイメージ from Estación Central)
新しいタンゴ、といってもいわゆるタンゴ・ヌエボにとどまらず、音楽・ダンス共に様々なアプローチが試みられていて一つ一つ取り上げているといくら字数があっても足りません。そこで、まずはふんわりと、雰囲気の一端を感じていただけるようなビデオを一つご紹介したいとおもいます。
ご紹介するのは Estación Central というミュージックビデオで、ミュージシャンはベルリンをベースにするエレクトロタンゴユニット Narcotango 。ダンサーとして、これまたベルリンがベースの Luciano de Esbornia と Natasha Barbará が参加しています。
ビデオはタイトル通りベルリン中央駅のプラットフォームから始まり、カラフルな普段着の Natasha と Luciano は、楽し気に駅や街中を踊り抜けてナイトクラブ Tangoloft Berlin へと向かいます。そして、そこでミステリアスなダンスホールへ足を踏み入れたとたん、二人は大変身🪄。
ここではひとつ二人のファッションにご注目を。お約束のセクシードレスと黒スーツじゃありません。これは……ファイナルファンタジー? NARUTOのテンテン? それともウクライナのコサック戦士??
やるな~。こういうイメージだったら、ゲーム好きのティーンエージャーも踊ってみようかなって思うかも。……これって私の好みとはちょっと違う、っていう感想はあって当然なんですが、やっぱり、新たに踊り始める人達が入ってきてこそダンスフロアも活気づくわけで……。
クラブシーンのメッカとして飲んで踊って夜通し遊ぶ若者のイメージが強いベルリンでも、コロナ禍、物価高などの影響で夜遊びをする人たちが減り、また比較的アルコールを飲まないZ世代などはクラブを敬遠するため、客層が「灰色化」(日本語だとシルバー化、ですかね)して、このままでは負のスパイラルで活気がなくなってしまう、という危機感が漂ってます。たかが夜遊びなんですが、ベルリンっ子は「たかが」とは思っていないらしく(ベルリンのテクノクラブシーンはユネスコの無形文化遺産に登録済み)老舗クラブの廃業などはニュースでも取り上げられ大きな話題になっています。
どこも似た問題をかかえているんだなあ、だけどどうしようもないよねぇ、と思っていたところにこのビデオ。ビデオを作ったアーティストの意図はそこではなかったかもしれませんが、四の五の言ってる場合じゃないよ、あらゆる手を使って新しい血をどんどん入れなきゃね、とベルリンっ子にいわれた感じがしました( Latina の小松良太さんのインタヴュー記事にも考えさせられていた時だったし)。確かに、シーンに活気がないと遊んでいても面白くない……。また話が横にそれちゃいましたが、いろいろな意味で挑戦を続けるベルリンのタンゴシーン、2025年も要チェックですね🌹
©2025 Rico Unno