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速読術の真実と革新

速読の誤解と新たな視点

これまでの速読術といえば、目の動きを訓練し、一度に多くの単語を視認する技術や、特定のパターンで文字を追う方法が主流でした。しかし、それらは生まれつきの能力や厳しい訓練が必要で、誰にでも習得できるものではないという印象がありました。

本書が提示する速読法は、それらの既成概念を根底から覆すものです。「速読は特別な技術ではなく、読むためのストックを蓄えることで誰でも身につけられる」と説きます。この考え方が、従来の速読術とは大きく異なる点です。

速読の前提:「ストック」の重要性

著者は、速読が可能になる要因として「知識や経験のストックがあるからこそ、見るだけで理解できる」と述べています。これは、知らない言葉を速読することができないというシンプルな原則からも明らかです。

例えば、『石の上にも三年』という言葉を知っていれば、「に上も三の石年」と書かれていても正しく認識できます。しかし、『恒産なき者は恒心なし』という言葉を知らなければ、『産はな者心き恒しな恒』と認識することはできません。

つまり、速読とは単に目を速く動かす技術ではなく、「知識を増やすことで読むスピードが上がる」という、極めて論理的なメソッドなのです。

「わかろうとしない」ことで速く読める理由

速読の大きな障害となるのが、「わかろうとする意識」です。通常の読書では、一つひとつの言葉の意味を確認し、コンテクストを把握しながら読むため、どうしても時間がかかります。

本書では、この意識を手放し、以下のポイントを意識することで速読を可能にすると説明しています。

  1. 音にしないで読む(心の中でも音読しない)

  2. わかろうとしないで読む(わからなくても読み進める)

  3. ストックしながら繰り返し読む(何度も読むことで内容を定着させる)

こうすることで、読書のスピードが劇的に向上し、結果として深い理解へとつながるのです。

「高速大量回転法(KTK)」とは

著者は、この新しい速読法を「高速大量回転法(KTK)」と名付けています。これは、一度で本を理解しようとするのではなく、何度も繰り返し読むことで理解を深めるという方法です。

具体的には、以下のステップを踏みます。

  1. 最初の2〜3分で目次を5〜10回転する

  2. まえがき・あとがきを5〜6分で10回転する(この時点で本の要約ができる)

  3. 本文は見出しの拾い読みをしながら5〜6分で3回転する

  4. 残りの15分で、自分の気になった言葉や箇所を中心に回転読みする

このように、全体の流れを把握しながら繰り返し読むことで、速読が可能になるだけでなく、深い理解も得られるのです。

速読を阻害する「目的読書」のリスク

著者は、「目的読書」のリスクについても警鐘を鳴らしています。読書には「自分の中にあるストックを活用しながらも、新たな知識や考え方を得ることで、ストックそのものを変化させる」という側面があります。

しかし、「特定の目的のために本を読む」と決めてしまうと、その枠の中でしか情報を受け取れなくなり、新たな発見や知見の広がりを妨げてしまう恐れがあります。だからこそ、速読においては、ある程度「わかろうとしない」姿勢が重要なのです。

速読の本質:「センス・オブ・ワンダー」

本書の最後に、速読に必要な大切な言葉として紹介されるのが、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』です。

「美しいもの・未知なもの・神秘なものに眼を見張る感性」

速読は、単に本を速く読む技術ではなく、好奇心を持ち、新たな世界や考え方を受け入れる姿勢そのものでもあります。速読を通じて、知識のストックを増やし、さらに広い視野を持つことで、読書そのものがより楽しく、意義深いものになるのです。

まとめ:新たな速読の可能性

従来の速読術は、「目の使い方」や「速く読む技術」に重点を置いていました。しかし、本書が提示する速読法は、「ストックを増やし、繰り返し読むことで速読が可能になる」という、より実践的で論理的なアプローチです。

「わかろうとしないで読む」ことで、結果的に速く理解できるようになる。 「音にしないで読む」ことで、スピードを落とさずに読める。 「ストックしながら繰り返し読む」ことで、知識を蓄え、速読が加速する。

この新しい速読の考え方を取り入れることで、誰でも簡単に速読のスキルを身につけ、より多くの知識を吸収し、読書を楽しむことができるでしょう。


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