子供の受験と抜毛症
抜毛症(トリコチロマニア)をご存知だろうか。髪の毛が抜けていく疾患ではなく、髪の毛を自分で抜いてしまい、それが癖となってやめられなくなってしまうものだ。
精神的なストレスで思春期に多く発症する。人口の1%ほどなので少数ではあるかもしれないが、決して無視できる数字ではない。
塾講師をそれなりに長くやっていると見たことがないということはないのではないかと思う。男女ともにあるが、女の子に多い。髪の毛を触りやすかったり、長くて抜きやすいからかもしれない。
4〜6年生の女子に多く、4年生だと受験を始めてみて、今まで学校で優秀な子が塾の中や模試だとふるわなかったり、学校では100点が当たり前のテストに慣れているので70点,80点のテストに愕然としてしまったりしてストレスを抱えてしまうケースが多いかと思う。5年生は多くなった課題や授業に対応できないケース、6年生は受験にまつわるプレッシャーに耐えきれないケースが多いのだろう。
仕事をしている大人でも毎日同じパフォーマンスは出来ないし、やる気のない日もある。しかし中学受験をしている小学生はテストで一定以上の点数を求められ、勉強のスケジュールがうまく消化できないのは許されない空気感がある。どう考えてもおかしいのだ。やれない宿題はあってもいいし、やる気のない日も許容されるべきだ。2,3年間同じ作業をし続ける中でストレスを強く感じてしまう子がいるのは自然なことなのである。
ただ中学受験をしている子が抜毛症になったから、その原因が中学受験とは限らない。学校でのストレスや親子関係で悩む子もいる。
とはいえ、やはり過度なプレッシャーと過剰な勉強量を強いるケースは決して少なくないのでやはり受験勉強が原因であるケースは多いのだろう。
考えている際に指でくるくるっと髪を触るようになったら少し注意が必要。そのうち指で絡め取っていくようになる。頭頂部、側頭部が多いが、眉毛を抜くケースもある。
その様子が見られたら、ストレスの原因となっているものを取り除くのが最優先。勉強量を一時的に減らしたり、求めるレベルを一段階下げる、場合によっては塾を変えたり、受験をやめることも考えなければならない。
ただ同時に抜かないように工夫(帽子をかぶる、何か手に持つ等)も大事だし、ストレスが溜まった時の解消方法を抜毛意外に持っていくのも大事。
うちは掃除をしていて机の周りに多く毛髪が確認できた場合はカメラでその様子が見られないかチェックしてすぐ報告する。家で見つけたら、初動が大事なので放っておかず、すぐ対応するべき。キツく注意したり、塞ぎ込んで悩んでも自然に解決する話ではない。
ストレスためたまま受験を推し進めてもいいことは何もない。見つけたらすぐさま中断しろとまでは言わないが、塾や学校の先生と連携取って防ぐようにするのは大事。悩んでいないですぐに周りに相談すること。病院やスクールカウンセラーに相談するのを躊躇わないこと。
場合によっては塾や受験をやめたっていい。課題を減らすこともできる。「その結果受からなかったらどうしよう」と不安になると思うが、受かる学校を用意することもできるし、仮にそうなっても大した話ではない。
中学受験に全滅はない。義務教育なのだから必ず進む先はあるのだ。中学受験はしなくても全く問題のない作業であり、近所の公立中学がある中で選択肢を広げるための作業をしているだけ。心身の健康より優先されるような話ではない。
抜毛症だけでなく、チックや自傷行為が無いかよくみてもらいたい。何かあったらしっかりブレーキを踏めるよう準備しておいてもらえればと思う。