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【音楽遍歴】中学生の頃に聴いていた音楽②

はじめに

前回は、中学に入学後、周りに影響を受けてThe Beatlesを聴き始め、その後Duran DuranやらCulture Clubやらの当時チャートを席巻していたいわゆる「第2次ブリティッシュインベイジョン」と呼ばれるムーブメントの音楽を聴き始めた話を書きました。

中学2年生の終わりまでは、そうしたテレビの洋楽番組で日常的にプロモーションビデオが流れたり、FMラジオの洋楽チャートのトップ10に入ったり、音楽雑誌で特集が組まれたりするような曲を中心に聴くような、(一般的な意味での)「健全な」ミュージックライフを過ごしていたのですが、中学3年生のときに佐藤くん(仮名)に出逢ってから、「陽の当たらない道を孤独に歩くミュージックライフ」を送る人生に針路が変わってしまいました。今回はその頃の話を書いてみることにします。

佐藤くん(仮名)兄との出会い

中学3年生に進級するときのクラス替えで、岡田くん(仮名)と佐藤くん(仮名)と同じクラスになりました。

岡田くん(仮名)は、それまで同じクラスになったことはなかったのですが、共通の友達がいたこともあり、その友達も交えて遊んでいて、当時お互いが聴いていた健全な洋楽の話をするような間柄でした。

佐藤くん(仮名)は今まで話したことがなかった友達でした。キッカケはすっかり忘れましたが、あるとき佐藤くん(仮名)から「お兄ちゃんが色々レコードを持ってるから、今度遊びに来いよ」というようなことを言われました。

佐藤くん(仮名)のお兄さんは彼よりも2歳年上の高校2年生らしく、佐藤くん(仮名)曰く、「ちょっとマイナーな音楽を聴いている」ということでした。「ちょっとマイナーな音楽」という言葉に惹かれて、僕と岡田くん(仮名)は学校帰りに佐藤くん(仮名)の家に寄って、レコードを聴かせてもらうことになりました。

そのときに聴いたのが、"Upstairs at Eric's (Yazoo)"でした。A面にレコードの針が落ちて、1曲目の"Don't Go"のイントロが始まった瞬間に、(大袈裟ではなく本当に)衝撃が走りました。初めて聴く冷たいシンセサイザーを前面に押し出したイントロで驚いていると、ソウルフルなAlison Moyetのボーカルが加わった「
デジタルと人間とのせめぎ合い」が始まり、岡田くん(仮名)と顔を見合わしたのをハッキリと覚えています。

佐藤くん(仮名)は「YazooってのはDepeche ModeのメンバーだったVince Clarkが脱退して新たに作ったバンドで、Muteっていうインディーレーベルなのに、結構チャート上位に食い込んでるんだぜ」的なことを言っていたように思いますが、正直殆ど理解できていませんでした。

下のビデオは当時衝撃を受けたYazooの"Don't Go"です。今聴くいてみると、安っぽいスカスカのシンセとドラムマシンの音ですが、1980年代初頭の中学生の耳には別世界の音のように鮮烈でした。

下のビデオは同じアルバムのB面1曲目の"Only You"。こちらはAlison姉さんのソウルフルさは影を潜めて、とってもメランコリックな一曲。一緒に住んでいた祖母(当時60代)も気に入って、ときどき鼻歌で歌ってました。Yazooのリリースの翌年にはThe Flying PicketsがアカペラでカバーしてイギリスチャートでNo.1を獲得し、、日本でもビールか何かのCMソングとしてテレビで流れてました。

こっちはThe Flying Picketsのアカペラバージョン。クリスマスにはこっちの方が良いかも。


佐藤くん(兄)のレコードリスト

Yazooに衝撃を受けた僕は、佐藤くん(仮名)に懇願して、佐藤くん(兄)の一押しレコードリストをゲットすることができました。さすがに全ては覚えていませんが、数枚の紙に手書きでギッシリと知らないアーティスト名とアルバム名が書いてある中、以下のようなレコードがリストに載っていた記憶があります。それぞれにひと言コメントと5点満点の評価が付いていて、しばらくバイブルのように何度も見返していました。

  • Never Never (The Assembly)

  • Working with Fire and Steel (China Crisis)

  • Singles (Classix Nouveaux)

  • Construction Time Again (Depeche Mode)

  • Porcupine (Echo & The Bunnymen)

  • The Luxury Gap (Heaven 17)

  • The Golden Section (John Foxx)

  • Power, Corruption & Lies (New Order)

  • Architecture & Morality (Orchestral Monoeuvres in The Dark)

  • War (U2)

  • Pillows & Prayers : Cherry Red 1982-1984 (Various Artists)

  • Upstairs at Eric's (Yazoo)

こうやって改めてリストを眺めると、確かに日本のFM番組のチャートに入るようなアーティストは少ないけど、イギリスのナショナルチャートでトップ5に入っているものも多く、それ程マイナーでもなかったことが今さらながら分かりました。

ただ、UltravoxではなくJohn FoxxThe Human LeagueではなくHeaven 17を選ぶあたりに彼の拘りが感じられるのと、エレクトロポップ満載の中にEcho & The BunnymenU2、さらにはネオアコースティックのバンドを大勢抱えていたCherry Redレーベルのコンピレーションを忍び込ませるところに、全方位的な戦略で僕をオルタナティブな道に引き込もうとしている感が垣間見えます。

そして、元Depeche Mode、元YazooVince Clarkeが結成したユニットThe Assemblyのシングルが入っているのは、エレクトロポップ好きだったであろう佐藤くん(兄)の嗜好が溢れていて、なかなか味わい深いです。

下のビデオは、そのThe Assemblyの"Never Never"。当時は輸入レコード屋でも見かけることがなく、取り寄せにも随分時間がかかった一品です。YouTubeにはこんなものまであるのかと、プチ衝撃。

このレコードリストと一緒にカセットテープ2本をもらってしまい、その日が陽の当たらない道を歩き始める記念日になったのでした(何月何日かは覚えてないけど、とにかく記念日)。ちなみに、以前の記事に書いた大阪・梅田の輸入レコード屋さん「リバーサイド」を教えてくれたのも佐藤くん兄なので、色々と茶化して書いていますが、本心は感謝しかありません。

佐藤くん兄から有り難く頂いたカセットテープの1本は"Working with Fire and Steel (China Crisis)"。こちらは日本では無名でしたがイギリスではシングルもアルバムのトップ20のセールスは持っているバンドで、牧歌的なエレクトロポップが好みにピッタリで、80年代のフェイバリットバンドになりました。この2ndアルバムは時代を感じさせるところは多分にありますが、捨て曲のないとても良いアルバムです。China Crisisはメンバーの増減はありますが、今でも一応活動はしてます。2000年に入ってからは、ずっとレトロスペクティヴツアーをやってましたが、2015年に突然新譜をリリースし、しかも結構良い感じに仕上がっていたので驚きました。

佐藤くん兄から有り難く頂いたもう一本のテープは"Architecture & Morality (Orchestral Manoevres in The Dark a.k.a OMD)"でした。当時、OMDは既に"Enola Gay"がヨーロッパではスマッシュヒットしていて、このアルバムもイギリス本国ではプラチナディスクに認定されているので決して「マイナー」ではないですが、日本で大々的に紹介されていたことは(少なくとも気付いて)なかったので、全く知りませんでした。あまりアルバム全部を聞き込まなかったのですが、以下のシングル"Souvenir"は当時のフェイバリットソングになりました。OMDは今も絶賛活動中で、インターバルはやや長めですが、コンスタントにアルバムもリリースしてますし、ツアーも行ってます。

おわりに

今回は中学3年生に出逢って衝撃を受けた曲と、その後のミュージックライフに大きな影響を与えた「佐藤くん(兄)のレコードリスト」について書いてみました。

リストに入っているDepeche Mode(来年5年ぶりのニューアルバム"Memento Mor"発売!)もNew Order(コロナ禍での来日中止は残念、是非再来日を!)も今でも大好きなバンドで、佐藤くん兄に出逢って(実際に会ったことはないですが)、道を踏み外して歩んできたミュージックライフは刺激的で面白く、本当にラッキーな出逢いだったと思います。

佐藤くん兄、今どんな音楽を聴いてるのかなあ。

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