電車通学
私は十八歳である。もう十八歳。いや、まだ十八。
成人ではあるが酒やたばこに手を出すことはできない。大人といわれれば大人だが、子供だろ。と言われてしまったら否定はできない。
なんとも中途半端な年齢だ。
そんなどこにも所属しない私はどこか特別な感情に包まれていた。
だがその中には孤独をも感じるのだ。私はその孤独をまぎらわせる何かを常に探していた。
私は毎朝母に怒鳴られながら目をひらく。
そこから私の日が始まる。
髪を繕い、少しよれたYシャツに手を通し、
ホックのはずれたスカートを安全ピンで留める。
朝ごはんさえ食べる間もなく時間ギリギりの電車の一号車に飛び込む。
息を切らすのがばれぬよう平常心を保つ。
朝の電車に揺られる三十分は私にとって至福の時間だ。まだ少し眠たく重いまぶたと寄り添い、ほんのりあたたかい日差しが窓も通りぬけ私にふりそそぐ。
ああ。心地良い。
そんな穏やかな時はいつのまにか過ぎ去り、
駅に着くと怒濤のラッシュに呑まれる。
やっとの思いで抜けだすと次に立ちはだかるのは長く、起伏の激しい拷問のような通学路だ。
息をのみ自転車に足をかける。
本当に朝かと疑ってしまうくらい重たい空気を切るまうに三十分間足をまわす。
果たしてこの時間はさっきまでの至福の時間と対当なのであろうか。
謎につつまれながらもしぶしぶと攻略していく。
そして、たどりついたという達成感すら味わうことのできぬまま八時間越えの拘束が待ち望んでいる。
まただ。またである。
またもや私に追い打ちをかけてくる。
「恋しい。あの時間が恋しい…」
そんな私の想いが届くことはなく、ただただ時が過ぎるのを待つしかない。
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私は解放された。解放されたのだ。もう私を蝕むものなどなにもない。青々とした空が私を包み込む。
私の世界だ。
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