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埃だらけのすももを売ればよい
埃だらけの すももを売ればよい
広場で 安値で
賢き者も 幸せな者も ことばを知らず
なによりつまらぬ才は 俗世に囚われしこと
像も流れも 黄昏ゆけばよい
富める都市人らの 空虚な庭では
異国の賜物をうけとるための
理性あることばを 私は決して見つけえぬ
アデリーナ・アダーリス(1900-1969)の叙事詩『日々』のプロローグ。1920年頃に書かれた詩のようだが、ぺテルブルクで生まれたアダーリスがちょうどモスクワへ移った頃? モスクワでブリューソフとの運命的な出会いを果たしたアダーリスは、期待を裏切ることを恐れ、なかなか作品を発表しようとしなかった。
運命は連れゆく 黒き中庭のごとく
驚くべき郷々の 秘められし庭へと
そこではあまたの菩提樹 丘のふもとの薔薇たちが
噴水を囲み つつましく燃えている
我らは誰しも 恥ずべき悩みがある
ある朝 それを数え上げたなら
散歩にゆき より深き遠方を目にする
不可解なる詩行も 理解できよう
さあ 敬愛する人へこころを手向け
我ら はした金を貯めるべし のちに
百の小さきコペイカ玉と引き換えに
ずしりとした 銀のルーブルが与えられん
昨年ぺテルブルクで偶然見つけた『銀の時代の101人の女性詩人たち』という一冊。最初に登場するのがアダーリス。尊敬し愛するブリューソフが亡くなったとき、棺のそばで彼の詩を読んであげていたという。人間は死後40日間、聴覚は働いているという説を信じていたから。その後の彼女は、「首を吊りたいのに、不器用でロープがうまく結べない」と嘆きの手紙を友人に送り、1935年になってようやく初めての詩集を出版する。
とても不思議な詩人だ。