「恋の病」を治すため「熊野」へ(熊野旅その10)~人生で一番美味しい水「熊野那智大社」~
【前回までのあらすじ】
後輩が年末に患った「恋の病」。なかなか良くならない「恋の病」を治すため、年始早々に蘇りの聖地「熊野」を目指す男二人。道中様々なダメージを受けるが、蘇生伝説のある「つぼ湯」にて奇跡の復活を遂げたのだった。しかし、宿泊施設の段差にぶつかってしまい精神的なダメージをくらってしまう。しかし、トルコと日本の感動の歴史に胸を震わせ、いざ那智大社を目指すのだった。
熊野那智大社は山中のため、那智勝浦町まで戻らねばならない。
実は三島由紀夫の「三熊野詣(みくまのもうで)」を読んだ時に、海から那智の滝が見えると書いてあって、猛烈に参拝したくなったのだ。いや、大事なのはそこじゃないだろう、と思われるかもしれないが、仕方ない。
なんだか信じられないほど山奥に入っていく。
割と順調に到着したが、車の多いこと。
駐車場から結構石段を登らねばならない。初めての方は、どうか気合を入れて参っていただきたい。
「日本のマチュピチュってここのことなんすかね?」と後輩が言うが、いや違うだろ。でも気持ちはわかるぞ!
すごいところまで来たもんだ。
熊野那智大社の由緒は、神武天皇が丹敷浦(にしきうら)に上陸した際に、光り輝く山を見て進み、那智の滝にたどり着いたことに始まる。瀧を大己貴神(おおなむちのかみ)=大国主命の別名の現れた御神体としてお祀りしたとのこと。
瀧こそ御神体だったとは・・・・
【樟(くすのき)からぬるっと産まれてきた後輩】
近くに「那智の樟(くすのき)」というご神木があり、木の洞(うろ)を通って産まれ直すことができるのだという。これを「楠霊社胎内くぐり」と言う。護摩木(300円)あるいは絵馬(500円)に願い事を描き、通り抜けるのだ。
木の中を通ることで産まれ直すというのは、なんだか原始的な信仰を感じる。
もちろん「恋の病」など吹き飛ぶだろう。
後輩はぬるっと木に吸い込まれていった。
なんだか「となりのトトロ」の楠のようだ。
もちろん、すぐに出てきたが、割と地味な光景だった。
「どうだった?」
「いや、すごいっすよ!!」
語彙力が死んでいる・・
【那智の瀧の音が聞こえる】
さっきからゴーゴーと音が聞こえる。
音の聞こえる方向を見ると、瀧が見えた。
すごい!この距離で音が聞こえるんだ!
地道に歩いていくと、瀧の音がどんどん大きくなる。
神仏習合の施設が立ち並び、浮世離れした風景が広がる。
ショートカットすると熊野古道のような道がある。
【那智御瀧 飛瀧神社】
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
声が出たのは最初だけで、その姿に声が無くなっていく。
神武天皇が御神体だと思われたのも然り。これはすごい。
高さ133メートルから降り注ぐ水飛沫が漂っている。
【人生で一番美味しい水】
300円を納めると「御滝拝所舞台」へ進むことができる。
そしてここでは延命長寿の水と呼ばれる滝壺の水を飲むことができるのだ。
土器(かわらけ)に水を汲んで、御神体の瀧を拝みつつ、口に含む
「!!!!!!?????」
ふたりとも顔を見合わせた。
「めちゃくちゃ美味い!!!!」
今まで飲んだ水とは比べ物にならないほど清涼で美味しい水だった。
その後も様々なミネラルウォーターを飲んだがこの時の味に勝るものはない。やはり神威なのだろうか。
本当に不思議な出来事だった。
嘘だと思う方がいたら、ぜひお参りして飲んでみてほしい。
滝壺に近づくと、水に砕かれた石が散らばる荒々しい姿が見える。
思わず手を合わせる。
古代の人々の信仰を追体験している気がする。
さて、残る熊野三山の一つ、熊野速玉大社を目指そう!
【後輩のライフポイント】
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴◯ 9/10
滝壺の水で超回復