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Netflixドラマ『三体』三体世界からの宣戦布告に人類はどう立ち向かうのか

科学者の怪死事件と謎のVRゲームの登場、そして、ある秘密結社の存在から世界中に明るみになってしまった人類滅亡へのカウントダウン
しかし、そのカウントダウンは数十年前から既に刻み始めていた。

Netflixドラマ『三体』は世界シリーズ累計2900万部を売り上げている大人気SF小説です。それがついにNetflixの潤沢な資金で映像化されました。

僕は文庫化されていた『三体Ⅱ黒暗森林』までを読了してからドラマに望みました。

理解不能な事象の連続、三体の真実、人類存続への道、それが読み進めるごとに少しずつ明らかになっていく構成になっており夢中に読んでしまう。

しかし、この物語の中に含まれたテーマが科学・SFの相互性はもちろん、政治・宗教・社会学などなど背景にある学術要素も多すぎて、正直自信を持って理解できているとは言えませんでした。

さらに、三体を読んでいる人もあまりいないので、まさに僕は『面壁者』(本かドラマ見ればわかります)一人であれこれ考えるしかなく『破壁者』の存在を待っているしかありませんでした。

だけど安心、ドラマはわかりやすい!
ドラマは原作のストーリーに沿いながらも難しい話はぱぱっと進んでくて、なにより素晴らしい映像で情報を補ってくれています。
なので、今回はドラマ版『三体』の話をしていきたいです。
ドラマ版と小説版の違いを説明したいですが、小説の知識に自信がないのでやめます。

それと、感想を言う前に1つ、間違いなく面白いのは原作の方です。
原作はまさにSFのオールスター感謝祭、エンターテイメント要素満載でわくわく感が半端ない。ドラマ版は先に原作を知っているからもあるけど、良くも悪くもTHE海外ドラマみたいな味付けで、もう少し深く切り込んでもよかったかなと感じました。

文化大革命からはじまる物語

文化大革命の時代、悲劇に巻き込まれてしまった葉文潔(イエ・ウェンジエ)人類滅亡へのカウントダウンは彼女の実験から始まりました。


文潔は学生時代に物理学をしている父親が目の前で殺されてしまいます。
事件ではなく、この時代文化大革命という西洋的な資本主義や技術を否定して新しい社会主義を作りましょう的な政治闘争が起きていたため、先端技術を研究していた父親が見せしめで殺されてしまいます。

文潔も科学者の卵だったため、粛清されかけますが、度胸と将来性を買われ文化大革命を仕切る紅衛兵の下、科学の研究を続けることになりました。
赴任した研究所で行われていたのは、宇宙へメッセージを送る研究。
アメリカやソ連よりもはやく宇宙のどこかにある文明のある星へ交信せよと命令された文潔は太陽エネルギーを通して発信することでより遠くにメッセージを発信できるという誰も思いつかなかった発想で、交信を試みます。

すると発信したメッセージがある日、返答がきたのです。

内容は「これ以上、応答するな」
これだけでも驚きですが、応答すれば宇宙における地球の位置がバレて『三体人』が地球に向かうという、返答してはいけない理由も告げてきます。
小説ではこのシーン『応答するな! 応答するな!! 応答するな!!!』と記載されてゾクゾクします。

普通だったら宇宙と交信している確証あるなしに関わらず、不気味でそっ閉じするところですが、文潔は「地球の問題は人類が解決できないからきてくれ」とメッセージを発します。

文潔は父親が殺された文化大革命という時代や、紅衛兵の下で研究を続けることに耐えられず、人類の未来を見知らぬ宇宙人に託したのです。
「来ていいよ」と言われた三体世界の住民は地球へ向けて旅立ちます。
これが400年に及ぶ人類と三体世界の戦いの第一歩。

時は流れ、21世紀になり科学者が殺される事件が起き始めます。その頃文潔は70代くらいで、彼女は『三体世界』に地球を受け入れる新興宗教のような組織の第一人者として名を馳せることになります。

三体を知る人類

現代編の主人公はそれぞれの分野で才能を開花させた5人の男女でメインストーリーで進んでいきます。
原作では1人の科学者が身の回りの科学者が怪死しているという事件を知り、そこで不思議なゲームに出会うことで三体の秘密を明らかにするストーリーになっており、1人の科学者の役割をドラマでは複数のキャラが分担。

ここでは2人のメインキャラクターを紹介します。
1人目はオギー

ナノテクノロジーの第一人者で企業の開発責任者を担い研究をしていましたが、ある日自分の視覚に常にカウントダウンが表示されるようになります。
寝ても覚めてもカウントダウンが進んでいく幻覚症状のようなものを起こし精神を病んでしまいます。
この事象が科学者の怪死事件に繋がっていました、科学者は止まらぬカウントダウンに精神を病み死を選んだのです。
それを止める方法はただ一つ、研究を止めること。死を恐れたオギーは最先端の研究をストップしてしまいました。

オギーのカウントダウンは止まりましたが、何故科学者に不思議な事象が起きるのか大強(ダーシー)という諜報捜査員と調査を開始します。

大強は『三体』の人気キャラクター、原作では登場人物がほとんど中国人に対しドラマでは様々な人種に変更されていますが大強だけはそのままの設定。名前通り屈強な男。
大強役にドクターストレンジの頼れる相棒ウォンを演じているベネディクト・ウォンを起用したのはナイスキャスティング、彼かマ・ソンドクしか適任はいません。

続いて2人目の紹介、ジンという人物です。

理論物理科学者であり、宇宙への探求心が強く、様々な問題に挑みます。
また、文潔とも面識がありました。

ジンはオジーのように視覚にカウントダウンが現れることはありませんでしたが、代わりにVRゲームを手にすることになります。
そのVRゲームの名前は『三体』
銀のヘッドギアを装着すると目の前にリアリティある世界が広がるだけでなく、五感も感じることができる、現代技術では開発不可能な未来的なVRゲーム機を手に入れます。
ゲームの内容は『三体』という世界が舞台です。

『三体』という世界は星の軌道上に3つの太陽があり、太陽の軌道は常に変化するため非常に不安定である。
さらに、3つの太陽が1列に並んでしまうと、地表が灼熱化して、生物が生きられない環境になってしまう。

そのため常にその星に住む者達は滅亡の危機に瀕していて、どのようにすれば救えるか、プレイヤーは太陽の動きを予測し、世界の王にアドバイスを与えるという内容。ジンはそのゲームにのめり込み、理論物理学の知見からゲームをクリアしてみせます。

ゲーム『三体』をクリアすると『三体』は宇宙に実際に存在する星で起きていたことを基に作られた実話をもとにしたゲームだったことを知ります。

『三体』に住む者は地表が灼熱化した際、自らの体を乾燥化することで灼熱する大地を一時的に凌ぐ能力を持っていますが、ついに星が寿命を迎えてしまうのです。

もう分かっていると思いますが文潔が交信をとっていた『三体世界』はゲーム『三体』と同じ星です。

『三体』に住む者達は、いずれは滅びゆく星を捨てて、別の安定した地を求めており、文潔による地球の交信があったことで地球への移住を決めます。地球にたどり着くまで約400年、これが地球と三体世界の距離。

三体人は地球に住む人類に移住を認めてもらうために、いくつか準備をしていました。その1つがゲーム『三体』の開発と普及です。
ゲーム『三体』は地球に住む人類に三体人を受け入れてもらうように作られたゲームで、いわば『三体世界』を知る歴史ゲームになっていました。

そして、ゲーム『三体』をクリアした頭の良い人にもっと『三体世界』を知ってもらい、広めてもらう目的で、とある秘密結社に招きます。
それが文潔が率いる三体からのメッセージを『主』(あるじ)と崇め、布教する組織です。
この辺から小説では読むのが止まらなくなります。

三体人の脅威

ゲーム『三体』をクリアしたジンでしたが『三体』を地球に受け入れることは反対します。そこでジンはオギーや大強に協力、信者になったふりをして組織の集会へ潜入します。
ジンの働きにより、集会を仕切っていた文潔を拘束することに成功しますが、組織の保有するタンカー船で『主』と交信していることを知ります。

『三体』と通じていることを人類への裏切りと捉え、大強らは組織を根絶やしにするためにオギーにナノテクノロジーの開発の再開を命じ、タンカー船を破壊する兵器を制作、公安部隊はその作戦を実行します。

ナノテクにより作られた兵器の威力は凄まじく、タンカー船は乗船している組織員とその家族を巻き添えにシュレッダー機に飲み込まれたかのようにずたずた引き裂きます。
このシーンはかなり衝撃的でした……マジでグロいので注意。

人類の技術発展力とそのスピードは恐ろしい、そう実感します。
実はこの『三体』物語はシリーズを通して、人類の爆発的な技術発展力が物語のカギになっていきます。

そして、この同時期に三体人は人類の爆発的な技術発展力の他に、人類のとある能力を恐ろしく感じます。
この能力というのは、決して特別なものではなく、全人類が意識・無意識で出来ることです。

三体人は人類が嘘をつけることを恐れました。
何故なら、三体人は嘘をつけないから。

三体人は思考を共有でき、思考は常に筒抜けであるという人類と決定的に違う特徴を持っていました。それゆえに集団活動が長けており、星が何度危機に晒されていても一人が生き残れば全員が生き残ることができていました。

三体人は人類が嘘をつけると知ると、そんな奴らに三体世界を知ってもらっても、裏では何を考えているか分からないから危険だと共存を諦め、侵略・徹底支配の道を選びます。

三体人は嘘をつかない、考えると最初文潔に『応答するな!』と警告したのは文潔に対して「押すな、押すな」の理論で返答させようとしているのではなく、本当に地球へ出発するから気軽に返答するなよという意味だったことが分かります。

三体人は地球へ平和に移住することを望んでいましたが、ゲーム『三体』の普及が出来ず、共存不可と判断した場合、もしくは人類が技術力を以て追い返そうとした場合、三体世界の技術力を人類に示し、恐怖に陥れることで諦めてもらうようにしたのです。
それでも人類が諦めることなく、技術発展を進めようとして歯向かうようであれば、三体人が作り出したとある兵器を駆使して対処し、無理やりにでも支配するというプランを用意していました。

実際に人類は、三体世界の驚異的な技術力を目の当たりにします。
地球の空を自由自在に操り、幻想を見せたり、空に巨眼を映し「お前たちは虫けら」だ、とメッセージを残すのです。

三体人は地球へ出発している最中ですが、到着するまでの間、地球の技術発展力の過程を監視できるように、【智子(ソフォン)】と呼ばれる原子ほどのサイズのスーパーコンピューターを2つ地球に送っていたのです。

智子は物理的にも電子的にも、ありとあらゆるものを乗っ取れる、最強のハック兵器。

原子サイズながら多次元物質という性質を持っているため膨張が可能であり、地球上空を覆い隠し空に幻影を映すことも可能、また人体に潜入して網膜にカウントダウンを映し出すこともできるのです。
また、地球のあらゆるネットワークに接続することができ、嘘の情報を流すことで情報を錯乱させたり、あらゆる情報やコンピューター近くにいた人間の会話を盗聴し、介入することが出来るのです。
人類の爆発的な技術開発力を止めるにはうってつけの兵器です。

人類の戦いは始まったばかり

地球に住む人類はたった2つの原子サイズの兵器にただ怯えて暮らすしかないように思われました。
しかし、人類は諦めない。
ただ指を咥えて、400年後の三体人の到来を待つことはしません。

人類が生き残るための課題は2つ
・智子に計画を知られないようにする
・地球に向かってくる三体人を追い返す、もしくは迎撃する方法を生み出す
途方もないような課題です。

そして、三体人に立ち向かえるかもしれない計画を人類は編み出しました。
名は『面壁者計画』


人類は嘘をつけます、三体人や智子は嘘をつけないし嘘を暴けません。
つまり、個人の頭の中で考えていることは、智子でも明らかにできません。
これが計画のベースとなります。

そこで人類の中で三体人を打ち勝つ計画を思いつきそうな人を選び、面壁者という役職につけます。
面壁者は計画を実行する直前まで他人に計画を共有せず、1人で計画を練り上げていくのです。
面壁者には三体人に打ち勝つ計画を考えてもらうためなら国際条約に引っかからなければ何でも手に入る立場になります。

面壁者は3名その1人に選ばれたのがオギーやジンの仲間である、ソールという男。研究所の助手をしている、他の登場人物と比べればぱっとしない経歴の彼が何故選ばれたのか……
ソールが面壁者に選ばれたところでドラマ1期は終了しますが、ドラマ2期で明かされることになるでしょう。

ここからの面壁者とその計画を明らかにしようとする破壁者と呼ばれる者達の駆け引きがとにかく面白いので楽しみにしています。










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