「かんなみ仏の里美術館」で出会った仏像群
静岡県東部の町、函南町(かんなみちょう)には「かんなみ仏の里美術館」という静かで、落ち着いた美術館があります。先日ここを訪れ、素晴らしい仏様と対峙してきました。
同町の桑原地区では平安時代の木造薬師如来坐像など24体の仏様が、地域の人々によって大切に守られてきました。明治政府の「廃仏毀釈」でそれらの仏像が危機にさらされたときも、集落内の高源寺と長源寺に移して守り続け、「廃仏毀釈」の波が鎮まった明治30年代に人々は長源寺の裏山中腹に薬師堂を建立し、すべての仏像をそこに納めました。
その後、昭和から平成にかけて3体の仏像(木造阿弥陀如来及両脇侍像(ヘッダーの写真)が国指定重要文化財となり、さらに16体が県指定有形文化財に指定されたことで、桑原地区の人々は2008年に仏像群を函南町に寄付しました。町は貴重な文化財を後世に保存継承しようと旧桑村小学校の跡地に美術館を建設し、平成24年4月に「かんなみ仏の里美術館」としてオープンさせました。慶派の仏師である実慶の仏像を展示する国内唯一の仏像美術館です。
館内には平安時代の「薬師如来像」や鎌倉時代の「阿弥陀三尊像」「十二神将立像」などが展示されていて、貴重な仏様を静かに鑑賞することができます。こじんまりとした美術館で展示されている仏様の数は多くはありませんが、一体一体を間近で、じっくり鑑賞できるのが魅力です。ボランティアガイドの説明を聞くと理解がさらに深まります。
「廃仏毀釈」の嵐の中でこれらの仏様が地元の人たちによってしっかり守り継がれてきたことに私は心を動かされました。同時に明治政府の「廃仏毀釈」についても考えさせられました。「廃仏毀釈」とは、明治新政府の神道国教化政策に依拠しておこなわれた仏教排斥運動で、神仏分離令の布告・通達にともない、仏堂・仏像・仏具・経巻などを破壊する行為です。
アフガニスタンでタリバンによるバーミアンの仏像が破壊されたときは大きな衝撃を受けました。憤りもありました。でも同じようなことが自分の国でも行われていたことを考えると安易に非難することはできません。
美術館の建物。内部は写真撮影できませんでしたので、ヘッダーを含めて仏像の写真は美術館のホームページから借用しました。