信仰か自然保護か?
ブータンに行くとあちこちでカラフルな旗を目にします。ルンタと呼ばれる仏教の「経文旗」で人々が幸せを願って掲げるものです。ルンタとはゾンカ語で「風の馬」という意味だそうで、旗に書かれている経文が風に乗って遠くまで運ばれ祈りが届くと考えられています。ルンタには馬の絵と経文が印刷された小旗がたくさん取りつけられており、木の枝に結んで掲げたり、川に渡したりして旗を風にたなびかせます。旗は五色あり、青は空、白は雲、赤は火、緑は水、黄色は地を表していると言われています。国民の8割近くが敬虔な仏教徒であるブータンでは仏の教えは人々の間に深く浸透しており、幸福を祈願し掲げられるルンタはブータンの至るところに見られます。
でも、問題もあります。ルンタが結ばれた紐によって木が痛んだり、時に死んでしまったりすることです。だからと言って人々が掲げたルンタをむやみに取り外したりすることは仏教の教えに反するとみなされています。さらに、古くなったルンタが山に放置されたままで自然を破壊することにつながる例も少なくありません。
一方でブータンの憲法では「国土の60%を森林として維持して保護する」と定め、森林保護を義務としています。実際に国土の7割強は森に囲まれていて、国の半分以上を国立公園、自然保護区、野生生物保護区として保護しています。ブータンの国是に「GNH(Gross National Happiness、国民総幸福量)」がありますが、それを実現させるための4つの柱の中に「環境保全」が含まれ、森林を保護することは重要な役割を果たしています。そして、森林を伐採する数を制限するだけでなく、植林も積極的に行われています。
仏教の教えを守るか森林を保護するか、すごく難しい問題だと感じました。私の中では答えは出ていません。
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