がんばれ元気・・・今こそ、若者に読んでもらいたい
「アッパーストレート」
「関券児」
50歳以上の人には、これらの単語の羅列を聞いて、「懐かしい」と思う人もいるんじゃないだろうか?特に男性。
私は40代だが、年の離れた兄がいて、昭和51年から56年まで少年サンデーに連載され、爆発的に人気を博したこのボクシング大河漫画を小学生の時にまず読み、続いて高校生の時にワイド版で読んだ。
この漫画の要点や魅力を簡潔に述べると、主人公・堀口元気はシャーク堀口と言う、お世辞にも強豪選手とは言えないボクサーの息子として生まれ、「父ちゃん」に憧れ、5歳にしてボクサーを強く志すが、「父ちゃん」ことシャーク堀口は関券児と言う若手のホープと大熱戦の末、試合中の事故で命を落とす。この、あまりにも早い「父ちゃん」との別れ(サンデーコミックスは28巻で完結するが、シャーク堀口は2巻にて死去する)の件は、様々に涙なくしては読むことが不可能と言ってよく、そしてこの時、自分の強打に怯むことなく立ち向かってきたシャーク堀口と対峙したことで、関は覚醒してフェザー級の世界チャンピオンにまっしぐらとなり、それがこの漫画の壮大なストーリーを展開していくのである。
この漫画に関しては、私は詳しく述べると1冊書けそうなくらい想いが強いので(笑)本当にポイントを述べると、登場人物の描き方が秀逸である。
主人公、堀口元気はじめ、取り巻く人物たちも、その数年前に一世を風靡したボクシング漫画「あしたのジョー」と正反対の世界観を心がけた、と作者の小山ゆう氏は述べていたが、まさにその通り。
堀口元気は、一言でいうと「優しいスポーツマン」である。
後に物語の登場人物となる小学校の担任の芦川先生は元気を「こんな優しい性格でボクサーとして戦っていけるのか」と心配もしていた。
そして小学校時代に知り合い、常に意識し合った元気の先輩でライバルのボクサー・火山尊(ひやまたける)は、元気を「お前は、あまっちょろいんだよ!」という旨のことをしばしば元気に言い放っている。ちなみに、この火山も登場した当初は「ムカつくやつ」という感じだが、成長しても「ボクシング・そして世界チャンピオン」という、堀口元気と同じ目標を持った宿命のライバルとして登場し続け行くにつれ、内面の想いや、恋に不器用な一面など、「一人の人間」として丁寧に描かれている。そう、この漫画は、全ての人物の息遣いが聞こえてきそうな漫画なのだ。
また、私自身、ボクシングのことはこの漫画を通して子どもの頃、学んだものだが、「海道卓」という天才ボクサーが、陽気な性格の四国のスポーツマン御曹司であったのが、興味本位で始めたボクシングで堀口元気に完敗し、以後「ボクシング地獄」にのめりこみ、「終着駅」は「末期のパンチドランカー」であった、という件がある。海道卓は世界チャンピオンになっていたため、堀口元気は自滅した海道卓に変わり世界チャンピオンになるという話だが、海道卓の最後の登場シーンは‥もはや、その後の彼の運命を想うと、涙が出てくるレベルだ。
まず、この大河ボクシング漫画は、私のバイブルともいえる。
今の時代では到底描けない描写もあるが、今の若い人たちにも読んでもらって、堀口元気のように「目標や夢に向かって走る」ことをダサい、とか言わないで、堀口元気や一生懸命に生きる、この漫画の登場人物たちのような生き方を皆で見習っていきたい、そんな世の中にしていきたい、と思う。
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