【感想】この日々が凪いだら
ひとり映画の楽しさに目覚めたのは、大学生の時でした。
年次があがると「空きコマ」という魅力的な時間が増え、
いかにその時間で遊べるかを必死に考えておりました。
たまたま乗り換えの駅に映画館があり、ひとり行動にも抵抗がなかった私は「絶対じゃないけど気になる」「人と見たら気まずくなりそう」
といった作品をこっそり見に行くようになりました。
誰の目も気にすることなく泣き、笑い、
スマホの通知だって放り出して、
暗闇の中静かに色々な世界に没入できる楽しさが、
今では休日のひとつの過ごし方になっています。
さて、今回は「この日々が凪いだら」という作品を観に行きました。
というのも、こちらの監督がなんと同級生。
といいつつクラスも違いましたし、お話ししたこともありません。
時々友人の話にあがっていたので勝手に知っていた、というくらいです。
久しぶりに名前を聞いたと思ったらとんでもなく大きくなられていて、大変驚きましたし、絶対に見たい!と思っていました。
私は映画に詳しいわけではないので、素人の感想にはなりますが、これをきっかけに作品がじわじわと広まってくれたらいいなとささやかながら願っております。
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個人的にはなりますが、撮影されている場所がなじみ深いところが多く、リアルとフィクションがじんわりと溶けていって世界観に入り込めました。
多種多様な登場人物たちがそれぞれのこの先の人生について悩みながら進んでいきます。
色々なタイプのキャラクターがいて。自分に似ているところを持っている人や、真逆の価値観を持っている人。
まさに今、自分が人生に迷っている状況そのものが描かれているようで、
「ああ、これを私と同じ年数歩んだ人がもうすでに乗り越えて作品に落とし込んでるんだ」と思ったら、なんだか感動と劣等感がないまぜになって複雑な気持ちになりました。
キャラクターによっては万人に好かれないような性格の人もいましたが、必ずどこかであたたかい面があって、本当に全員が愛すべきキャラクターになっているところがとても印象的でした。
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表現の部分で面白いなと感じたのは、
監督がおっしゃっていた「お葬式とたばこ」を重ねているという部分です。
なんだか不釣り合いなものに感じますが、綺麗に重なるところがたくさんあり、穏やかに、でもしっかりこだわりを持って語られる監督の言葉に物凄くワクワクしました。
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学生の頃は「社会人=働く大人」という単純な方程式しかありませんでした。よく聞く「社会人って結局何?」という問いにも真剣に向き合ったことがありませんでした。
でもここ最近ようやくその問いに答えが見つかった気がします。
記念日にパティシエの友人が作ったケーキでお祝いしようかな、とか
引っ越すときは不動産屋の友人に相談しようかな、とか
ライフステージの途中でふと、今までの出会いの点がつながってくるわけです。
そんな時、物凄く「社会」を感じるんです。
それが「社会人」ってことなんじゃないかなと思うし、
自分もその点のひとつになりたいともがいています。
この映画に関係があるのかは分かりませんが、
私はこの作品を見てそんなことを思い返していました。
映画監督というまたひとつの点に出会えたことが、とても嬉しいです。
上映本当におめでとうございます。これからも応援しています。
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