正装
ある中学生の男の子との会話
私が教室にジャケットを着て行った時
H…あれ?なんなんそれ
私…なんなんて何?
H…あかんやん
私…どゆこと?
H…どういう風のふきまわし?
私…きょとん
H…それはないやろ、正装?
私…あっ、これ?正装じゃない けど、おかしい?
H…なんでまた、そんなん
着たんそれはないやろ、先生
いきなり教室に入ってこの会話。主語がないから、訳がわからず、きょとんとした私だったが、ようやく、ジャケットのことだとわかった。
私は、夏はカットソーに、冷房から守る為に長袖のカーディガンをまとっているし、冬はセーターを着ている。
そういえば、ジャケットはあまり着ていなかった。
なぜ、こんな反応するのか分からなかったが、後で考えて見ると、正装していたら、近寄り難いと言いたかったかも知れない。いつも学校であったことや、悩みも話す子だ。
本人はそのつもりで言ったことかも知れないが、これをきっかけにハッと気付き、私は違う事に思いを馳せた。
昔はお化粧もして、ネックレスやピアスもつけて、教室に臨んでいた。
しかし、コロナが流行してから、マスク生活になり、お化粧しても、顔の三分の二の上部しかしない。マスクが汚れて気持ち悪いからだ。
そして、いつの間にか飾らなくなってしまった。病気をした事にも大きな原因がある。
私生活から仕事への切り替えとして、着飾ったり、お化粧したりしていたのに、その切り替えがおろそかになっていたんだと、この何気ない会話によって、自分を省みたのだった。
襟のない服装から、襟のある服装へ…襟を正さなければならない。だらけていた気持を引き締めなくては。
そう思って気合を入れて、次の週もジャケットを着て行ったら、その子は今度は、まるで役目を果たしたかのように、静かにしていた。
今日の短歌
秋夕焼
こと問ひかける
をのこあり
我が身省りて
襟を正さん
あきゆやけ こととひかける
をのこあり わがみかえりて えりをたださん
あきゆやけ…秋の夕方
こととひかける…話しかける
質問しかける
をのこ…男の子