母から、知人から、受け継いだきものをどうするか
昭和を生き抜いた人々が着用されたきものを、次の世代に引き継いでいく、そんな時期に来ているのだとおもいます。
昭和期のきものは、業界全体が活気に満ちて、今では考えられないような色や、柄や、発想、技術で作られた秀逸なものが多いのです。
お母様のきもの、お知り合いのきもの。
いただいたものの、さてどうしましょう。
以前、家にあるきものをどうするか、でもいろいろ書きましたが、今回は一歩進めて、着る前提でどうするか?というお話です。
きものを受け継いだものの、悩むところはだいたい同じで
①裄が短い
②胴裏が黄変している
③収納に困る
などではないでしょうか?
裄が短いきものをどうするか
これについては、お直しをせずにそのまま着ている人が案外多いのではないでしょうか。なぜお直しをしないか、というと自分で直すには難しく、専門のところにお願いすると費用が高くつくから。きものを直すと、長襦袢も直さなくてはいけなくなります。また、裄だけではなく、八掛の色や、衿下の長さなど、いまのきものと違うところは多々あり、汚れがあるなら染み抜きもして、あれもこれもと直すぐらいなら、洗い張りをして仕立て直しをしてもらった方が綺麗ですし、安くつく場合が多いです。
なので、よくよく気に入ったものは仕立て直しをして、それ以外は普段着として気軽に着るなら、そのまま着るというのもアリということ。
明らかにサイズが違いすぎて着用が難しいものについては、潔く諦め、着れそうな人に譲るか、リメイクの材料に。
胴裏が黄変しているきものをどうするか
胴裏の黄変は、かつてきもののお手入れができていないということで、恥ずかしい事とされてきました。古いものの中には絹の特性として変色しているものもあれば、カビなどの汚れである場合も。胴裏を替えるとなると、新品の胴裏地を購入する必要がありますし、費用に関してはお仕立て代と同じくらいの費用がかかります。ならば、胴裏を外してしまって単衣のきものにするのはどうでしょう?単衣のきものはもともと、6月と10月、1年のうち、2か月しか着られないという事であまり必要ないように思われてきましたが、地球の温暖化で春先から初夏までと、初秋から晩秋まで、着る機会は結構あると思われます。
きものの収納について
これについては、全てのきものをたとう紙に入れた上で、桐の和箪笥に入れなければならない訳ではありません。たとう紙に入れるのは特別なものだけにして、あとは普通に畳んで、三つ折りにすれば、和箪笥でなくても普通の整理だんすでも綺麗に収まりますし、プラ製の衣装ケースでもぜんぜんOK。もっというなら、オンシーズンのものはハンガーにかけてサッと取り出せるようにしてもいいと思います。畳んだままズボンハンガーにかけてみてはどうでしょう。コンパクトですし、今日着るきものを選びやすいし、広げてハンガーにかけっぱなしにして裾が袋になる(膨らんでくる)心配もありません。
季節が終われば箪笥や衣装ケースにしまって、入れ替える。これはいいアイデアだと思うんだけどなぁ。きものを着るとなるといちいち部屋が散らかる。きものを出す、着付け用の小物も出す、帯や帯揚げ帯締めのコーディネートのためいろいろ出す、部屋がぐちゃぐちゃになる、きものを着るのがめんどくさくなる。なんて事ないようにしたいもの。
きものの収納で一つだけ注意点。ウールのきものやモスの長襦袢などは、虫がつきやすいので、絹物とは別に収納するように。