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狐の嫁入り体験談

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#ホラー小説

首を……奉れ

首を……奉れ

  これは、古い空き家などをリフォームし、古民家として再利用する事を生業としていた、自治体のメンバーであるAさんと狐こと私が体験した話。

その日、Aさんの家に泊まりに行った狐は、Aさんの仕事に興味を持ち、翌日二人で一緒に出かける事にした。

仕事内容は冒頭で説明した通り、自治体が管理する事になった空き家をリフォームする事だ。
町おこしの一環でもあり、大事な事業の一つでもある。
ただし、今回はちょ

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血に誘われし

血に誘われし

これは、私こと狐が高校生の頃に体験したお話。

私は訳あって両親と離れて、学生の頃から一人暮らしをしていあた。
そんな私には、昔から嫌いな習慣が一つあった。
それは……生理。
量は多いけれど人より痛みは軽い方だが、それ以前に嫌な事がもう一つある。
それを今から話したい。

その日、私は生理になってしまい、軽い貧血気味で学校を早退してしまった。

普段はこんな事ないのだが、慣れない一人暮らしの心労が

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鎮魂歌

鎮魂歌

これは、私こと狐が生涯忘れられない出会いをした、占い師Yさんとのお話。

その日、狐は友達数人と、とある廃墟を訪れていた。
時刻は午前一時。
きっかけはカラオケの後、友人I子の彼氏Tが、皆で肝試しに行こうとその場のノリで言い出した事が発端だった。
蒸し暑い夏の夜、カラオケもお開きになり、時間を持て余した彼等にとっては、良い時間潰しにはなると思ったのだろう。

そんな中、狐だけは少し浮かない顔をして

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魅せられた予知夢

魅せられた予知夢

  予知夢、というものをご存知だろうか?
これは、私こと狐が、そんな予知夢を起因とした実体験となる。

何もかも澄んで見えてしまいそうな程の秋晴れ。
色濃い紅葉が映える林道の景色の中、車は山道を走って行く。

手彫りらしき痕を残す、不気味なトンネルを抜けた時だった。
いつの間にか外には雨が降っていた。
しかも先程まで昼間だったのに空は真っ暗、夜だ。

車が曲がり角に差し掛かる、その瞬間、唸るような

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記憶の残滓

記憶の残滓

 これは、私こと狐が体験したお話です。

その日は少し肌寒く、私は何か温かいものでもと思い自動販売機の前にいた。
そこは駅からも近いコインロッカーの側、人通りも多く、帰宅ラッシュもあって人でごった返していた。

ココアを買ってそれを一口、ホッと息をつくと、白い吐息がふわりと宙を舞った。

その時だった。

──ん?

急に何かに服の袖を引っ張られる感触。
ふと視線を向けても、そこには何も無かった。

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私が実家に帰れなくなった理由

私が実家に帰れなくなった理由

これは、狐こと私が体験したお話です。

私は高校の頃から一人暮らしをしていた。
理由は両親の長期出張。
やがてそれも終わり、私は再び家族と一緒に暮らす予定だった。
しかし……。

これは遡ること数年前の出来事。

両親が長らく開けていた家に戻り落ち着いた頃、私は久々に実家に帰省する事にした。
僅かな荷物だけを持って、駅から徒歩十分の道を歩くと、見慣れた白い二階建てが見えてきた。

小さい頃妹とよく

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経を詠む

経を詠む

これは、狐の友人、Aさんが体験した話だ。
Aさんは短大卒業後、地元のとある島で、自治体の仕事を任されていた。
仕事の内容は、寄付などで募った空き家を改築し、オシャレな古民家として再利用するといった、所謂町興しの一環だった。
改築と言っても、中にはスタッフやボランティアだけで行うものから、正規の業者を雇い入れ、本格的な解体工事を行うなど様々であった。

今回Aさんが受け持ったのは後者の方で、解体工事

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影纏う蛇

影纏う蛇

これは、私こと狐の恩師でもある、Yさんの話だ。

Yさんは占い師の傍ら、霊媒師という顔も持っている。
そのYさんが暫く店を留守にし出張先から帰ってきた時、店に立ち寄った私に、こんな話を聞かせてくれた。

Yさんはとある知人からある事を頼まれたという。
死んだ息子の怒りを沈めて欲しい……と。

一応霊媒師としての仕事の依頼という事もあり、Yさんは早速依頼主のいる東北にある地方へと向かった。

そこは

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御守り

御守り

これは、私こと狐が、高校時代に体験したお話。
私はその頃、告白されると取り敢えずお友達からという理由でお付き合いする事が多々ありました。
ですが何分奥手なもので手すら握らせない私に嫌気がさし、向こうから別れを告げるという展開ばかりで、まともなお付き合いをした事がありませんでした。
そんな中、ある日一学年上の先輩に告白され、いつもの様にお友達からという事でお付き合いを開始したんです。
放課後一緒に帰

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狐に抓まれそうになった話し

狐に抓まれそうになった話し

  これは、狐こと私が体験した話しだ。
その日、高校生なった私は東北にいる叔父の家に遊びに来ていた。
親族の間では変わり者である叔父は、無愛想で人付き合いも悪い。
そのせいか四十になっても未だ独身である。
まあ本人がそれを望んでいるのなら、口出し無用と言うところなのだろう。
だがそんな叔父が、私は嫌いではなかった。
雪国で農業を営む叔父は、たまに連絡を寄越して来ては私達姉妹に。

「美味いもん食わ

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私の瞳が死んだ時

私の瞳が死んだ時

  これは、狐の嫁入り事私が幼い頃に体験した話です。

それはまだ蒸し暑い夏休み真っ只中の事でした。
近所にある神社の裏手にある森の中で一人遊んでいると、ふと周りを見て帰り道が分からなくなったんです。
焦った私は森の中を彷徨い歩きました。
お生い茂る木々が影にはなっていましたが、それでも暑さは防げず、額に浮かぶ汗を拭い必死に歩きました。
若干の立ち眩みを覚え立ち止まった時でした。
視線の先、草木の

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赤い折り紙

赤い折り紙

これは、狐の嫁入りこと私が体験したお話。
私は訳あって高校生の頃から一人暮らしをしています。
そんな私が住んでいるマンションで先々週、こんな事がありました。

時刻は深夜三時頃。
突然玄関の方から微かに足音が聴こえたんです。
睡眠が浅い私はその音で目が覚めてしまいました。
近所の騒音などで悩まされた事もないので、珍しいなと思いながら、寝台に置いたペットボトルを手に取った時でした。

ーータタタタタ

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睡死

睡死

  これは狐こと私の叔父が、まだ二十歳の頃に体験した話。
以下は叔父の語り。

当時貧乏大学生だった俺は一人暮らしを始めるに至って、不動産屋にどんな条件でもいいから安い所を見繕ってくれとお願いした。
すると。

「本当にどんな所でも?」

なぜか念を押すように返事を返してきた。
正直バイトと大学だけなので住めればどこでも良かった、なのでどんな条件でも有りだというこちらの要望を伝えると、不動産屋がと

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彼の者達が棲む家

彼の者達が棲む家

  これは私こと、狐が高校卒業に伴い引越しをする事になった時に体験した話だ。
本来狐は高校時代、実家に戻る予定だったが、以前に語った【私が実家に帰れなくなった理由】の一件もあり、卒業後も一人暮らしをする事となった。
色々とあったが気持ちを改めた狐は、父親に紹介された不動産屋の社員の男性と共に、幾つかの内見に出掛ける事になった。

「今日は宜しくお願いします」

狐がそう言って頭を下げた。

「いえ

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