FAR1-3 10.Leases

○リース(Lease)の定義
→一定期間にわたり、有形固定資産の使用に対する支配権(the right to control the use of identified property, plant or equipment)を対価と交換に移転する契約のこと。

リース契約において資産を貸し付ける側を貸手(lessor)、資産を借りて使用する側を借手(lessee)という。
LessorはLesseeからリース料(rent)を受けることができる。

原則は貸手も借手もオペレーティングリースとして会計処理を行う。(貸手側は5つの要件のいずれかを満たしはしないが、一定の要件を満たしている場合は直接金融リース(Direct financing lease)として処理する)
但し、下記の5つの要件のいずれかを満たした場合は、借手側はファイナンスリース(Finance lease)として、貸手側は販売型リース(Sales-type lease)として処理する。
短期リース、重要ではないリースについては定額費用認識(Straight-line basis)を行うこともある。

5つの要件
→①リース期間の終了時に原資産に対する所有が借手に移転する。
 ②原資産の購入選択権が借手に付与されており、かつ借手が当該購入選択権を行使することが合理的に確実である。
 ③リース期間が原資産の耐用年数の大部分(75%)を占め、かつリースの開始日が耐用年数の終了日または終了日の近くではない。
 ④リース料及び借手による残価保証額の合計の現在価値が実質的に原資産の時価(90%)と等しいか時価を超える。
 ⑤原資産の性質が特殊でリース期間終了時に貸手が転用できないと予想される。

○借手、短期リースと重要でないリースの会計処理
→リース開始日におけるリース期間が12ヶ月以内であり借手が行使することが確実な購入権が含まれてないリース契約については、簡便的な会計処理が例外的に認められている。
また、そもそもリース料総額が少額で重要性がない(immaterial)と企業が判断したリースについても簡便法での処理が認められている。

使用権資産(right-of-use asset)を認識しない簡便法では、リース料支払い時に費用を認識する処理を以下のように行う。

Dr)Rent expense XXX
   Cr)Cash XXX

※リース料が変動する(uneven payment)場合、毎回均等額を費用として認識する点に注意する。
例)1年目$1000
2年目$1100
3年目$1210
である場合の毎年の支払額は、(1000+1100+1210)÷3を費用として毎年支払う。
支払額との差額は未払金として扱う。

○借手、リース物件改良費
→リースの借手が原資産に対して自己負担により改良や設備の増強を行なった場合に、リース物件改良費(leasehold improvement)という資産を計上する。

また資産計上後、リース物件改良費は残存リース期間(residual lease term)とリース物件改良費の耐用年数(useful life)のいずれか短い方の期間で償却する。

ただし、原資産の購入権が借手に付与され、かつリース期間終了時に借手が当該購入権を行使することが合理的に確実であると見込まれる場合は耐用年数により償却する

○借手、オペレーティングリース(リース負債について)
→リース開始日にリース負債を計上する。
リース負債とは借手がリースの条件に基づいて貸手に支払うリース料(lease payments)の現在価値のこと。

リース料は以下の項目から構成される。
・固定リース料(fixed lease payments)
・変動リース料(variable lease payments)
・原資産の購入権(option to purchase)の行使価格(exercise price)
・解約違約金(termination penalties)
・借手が残価保証(residual value guarantees)を行う場合、借手に発生する可能性が高い(probable)金額

リース期間終了時に返金される敷金(refundable deposit)はリース料には含まれない。

リース料支払い時と期末日に利息法(実効金利法)によりリース負債を随時取り崩していく。

〇借手、オペレーティングリース(使用権資産について)
→借手はリース開始日にリース負債同様、使用権資産(right-of-use asset)を認識する。使用権資産は以下の金額の合計額である。
・リース負債の当初測定額
・リース開始日以前に貸手に支払われたリース料からインセンティブを差し引いた金額
・初期直接コスト(initial direct costs)
   
ex)・legal fee(弁護士費用)
   ・sales commission(販売手数料)
   
※一般的な経費(general overheads)や広告費(advertising expense)は初期コストには含まれない。

すなわち
使用権資産=
     リース負債+リース開始日以前に支払ったリース料-
                  インセンティブ+初期直接コスト

また、使用権資産はリース期間で償却するがその性質によって償却方法は異なる。
①リース負債の当初測定額に相当する金額
→リース料支払い時においてリース負債と同額を償却する。
②その他の使用権資産
→リース期間にわたり定額法で償却する。

借手側のオペレーティングリースで認識する金額は、支払利息と使用権資産の償却費をまとめてLease Expenseとして計上する。
仕訳は以下のようになる。
Dr)Lease expense(支払利息+使用権資産の償却費)   XXX
     Lease liabilities   XXX
        Cr)Cash   XXX
             Accumulated amortization   XXX

〇借手、ファイナンスリース(リース負債について)
→オペレーティングリースと同様リース開始日にリース料の現在価値をリース負債を計上する。割引率は原則としてリースの計算利子率(rate implicit in the lease)を使用し、リースの計算利子率を容易に計算できない場合は借手の追加利子率(incremental borrowing rate)を使用する。

オペレーティングリース同様、リース料支払い時に利息法(実効金利法)によりリース負債を取り崩していく。

〇借手、ファイナンスリース(使用権資産について)
→使用権資産の償却時には自己所有の有形固定資産と同様な償却を行う。
具体的には、耐用年数(useful life)とリース期間(lease term)のいずれか短い期間にわたって原則定額法(straight-line basis)により償却する。

※購入権を行使する、すなわちその資産を購入することが合理的に確実である場合は、リース期間ではなく耐用年数で償却することに注意。

〇貸手、リースの分類
販売型リース(Sale-type lease)
→以下の5つの要件のうちいずれかを満たす場合。
・リース期間の終了時に原資産に対する所有が借手に移転する
・原資産の購入選択権が借手に付与されており、かつ借手が当該購入選択権を行使することが合理的に確実である
・リース期間が原資産の耐用年数大部分を占め、かつリースの開始日が耐用年数の終了日または終了日の近くではない
・リース料及び借手による残価保証額の合計の現在価値が実質的に原資産の時価と等しいか時価を超える
・原資産の性質が特殊であり、リース期間終了時に貸手が転用できないと予想される

貸手において販売型リースに分類される条件は、借手においてファイナンスリースに分類される条件と同じである。

リース開始日において原資産が借手に販売されたものとして以下のような会計処理を行う。
リース債権(lease receivable)及び無保証残存資産(unguaranteed residual asset)を現在価値で認識する
②原資産をオフバランスする
販売収益、売上原価を認識する
④貸手に初期直接コスト(initial direct cost)が発生している場合
 ・原資産の時価が帳簿価格と異なる場合は一括して費用計上する
 ・原資産の時価が帳簿価格と等しい場合は繰延償却する

リース開始日以降は、リース料支払い時に利息収益(interest income/interest revenue)を利息法により認識する。

直接金融リース(Direct financing lease)
→販売リースの上の5つの要件を満たさないが以下の2つの要件の両方を満たす場合。
・リース料と借手及び第三者による残価保証の金額の合計額の現在価値が原資産の時価の90%以上である
・貸手がリース料及び残価保証を満たすために必要な金額を回収する可能性が高い

リース開始日に売上原価を認識せず、利益に相当する金額を繰延てリース料支払い時に随時取り崩して収益を認識する。
リース債権(lease receivable)及び無保証残存資産(unguaranteed residual asset)を現在価値で認識する
②原資産をオフバランスする
③①と②の差額を繰り延べる
④貸手に初期直接コスト(initial direct cost)が発生している場合、すべて繰延償却する

リース開始日以降は利息収益を認識する。

オペレーティングリース
→販売型リースと直接金融リースのすべての要件を満たさない場合
原資産は借手に移転されずに引き続き貸手が保有するものとして会計処理を行う。
→リース料支払い時に定額法により収益を認識する
→貸手に初期直接コストが発生している場合、資産を計上しリース期間にわたって定額法で償却する
→自己所有の有形固定資産として原資産を耐用年数にわたって減価償却する
初期コストはリース期間で償却する

〇セール・アンド・リースバック
→ある資産を売却すると同時に買い手が当該資産を売り手に貸し出す取引のこと。

①資産の売却取引&②売却資産のリース取引の2つのプロセスから構成される。

セール・アンド・リースバックの会計処理は取引の経済的実質によって異なる。最初の売却取引が実質的な売却と言えるかどうかによる。

〇実質的な売却と言える場合
→資産の売却とリースの複合取引と考え以下のように会計処理を行う。
資産の売り手(リースの借手)
→①資産をオフバランスし、減価償却は行わない
②契約条件に従ってリースをファイナンスリース、オペレーティングリース、短期リースに分類する。

※ファイナンスリース又はオペレーティングリースに分類された時は、使用権資産の償却を行う。

資産の買い手(リースの貸手)
→①資産を認識する
②契約条件に従ってリースをファイナンスリース、オペレーティングリース、短期リースに分類する。

※資産の売却価格は当該資産の時価(fair value)で行われたものとみなして、売却益(gain on sale)を計上する。

〇実質的な売却と言えない場合
→金銭貸借取引とみなし、以下のような会計処理を行う。

資産の売り手(リースの借手)
→①資産をオンバランスして、自己所有の資産として会計処理。
②売却によって受け取った対価(consideration)は、金融負債(financial receivables)として会計処理

資産の買い手(リースの貸手)
→①購入取引において資産を認識してはならない
②資産を購入するために支払った対価は債権(receivables)として会計処理

実質的な売却と言えない場合は、売り手は売却により受け取った対価を金融負債として認識する会計処理がよく出題される。

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