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創作脚本「星と屋根」

初めに

この脚本を使用する際の注意事項です。
どのような公演であっても使用料は不要です。
必ず稽古が始まる前に使用連絡をお願いします。
広報物やパンフレットに作者クレジットの記載をお願します。
読み合わせに使用した場合、連絡の義務はありませんが、連絡していただけると嬉しいです。
何か質問や相談などありましたら気軽にお問い合わせください。
作者クレジット:星水慕

登場人物

僕・・・この物語の主人公。貴女よりは若い。健気な性格で忠実に尽くすタイプ。自分の体を顧みない。登場時には自暴自棄を含んだ性格を持っている。

貴女・・・僕よりは年上のイメージ。星が好き。人よりも白い肌をしている。自分の好きなものがしっかりしているイメージ。男性の思い描く女性の不思議な部分をそのまま形にしているキャラクター像。

本編

    どこか殺風景で抽象的な景色。心象風景。
    「僕」の荒む心情を表すような砂漠。風速を感じる吹き曝し。
    誰かが築いた四方を囲む壁がある。屋根はない。
    目線を足元に落としながら、重い足取りで進んでいく。

僕  どこかを歩いていた。水が抜けきった砂漠みたいな場所だった。自分の体などどうでもいい気もしたのだが、疲れた僕は、休める場所を探していた。ふと目線を上げると、壁で切り取られた空間を見つけた。静かな空間だった。惹かれるように・・・・・・

    「僕」、その中に入っていこうとする

僕  屋根はなかったが、風と砂を防げるだけでもありがたかった

    建物の中には「貴女」がいる

僕  人が座っているのが見えた。目を凝らして見ると・・・・・・それは僕が初めて見た貴女だった

僕  あなたは僕にこう言った

貴女 私はね、星が好きなの

僕  僕はとっさにこう答えた。「僕もです」

貴女 あら、気が合うわね

僕  貴女はそうやって答えて、また星を振り返った。僕は、僕を映したあの瞳を忘れられない。あの儚く澄んだ黒い両目が、とても綺麗で仕方がなかった。

僕  「ここで一緒に暮らしませんか?」

僕  あの目がもう一度僕を見る。綺麗な目だ。とても綺麗な目だ

貴女 ええ、ぜひ

僕  この時から僕たちはこの地で身を寄せ合った。家は壁。屋根はなく、雨や太陽から守ってくれはしない。それでも僕たちにとってここは家であった。だから、お互いが何を言うでもなく、この場所に留まった。この砂漠を抜けたもっと先で桜が散る頃、貴女は星と僕を、僕は星と貴女を見ていたこ。ここから確かに星が見えたんだ

    砂漠に草木が芽生えるような生命感が満ちる。その中で二人でしばらく暮らしている。
    春の終わり。空が雲に覆われ始めた。雨の季節が来る。
    「貴女」、なんてことのないように口を開く。

貴女 もうすぐ梅雨ね

僕  そうですね

貴女 雨が沢山降るんでしょうね

僕  このままじゃ雨晒しですね

貴女 どうしましょう

僕  雨具を買いましょう。傘を買ってきますよ

貴女 傘?

僕  二人で入れるような、大きめのやつをです

僕  それじゃ、しばらく行ってきます。帰ってきますから

貴女 ええ。いってらっしゃい

    「僕」、壁の中から出る。
    以前とは比べようもない程確かな足取りで進んでいく。
    とても大きな傘を持ってくる
    静かに壁の中に入る。

僕  ただ今帰りました

貴女 おかえりなさい

僕  こっちは雨は降りましたか?

貴女 いえ、降らなかったわ。これから降るみたい

僕  よかった。これ、傘です。開きますね

貴女 大きいわね

僕  濡れちゃいけませんから

貴女 遠かった?

僕  はぁ、まぁ、それなりです

貴女 ありがとう

僕  いえいえ。いいんですよ

貴女 入って

僕  失礼します

    これまでより距離が縮む
    不自然な間が空く
    雨が降り始める

貴女 雨が終われば、夏が来るのね

僕  そうですね。お好きですか?

    沈黙

貴女 私はね、日の光が苦手なの。強い日の光を浴びると、皮膚が痛くなって、体が痛くなって、そのうち心まで痛くなるの。だから、ここにはいられない。ずっと一緒に居たかったけれど、ごめんなさいね

僕  そう・・・・・・ですか

    沈黙

僕  もしここに、屋根があって、ここが家になったら、このまま一緒に居られますか?

貴女 日の光を遮ることができるのなら、できるかも

僕  僕が作りますよ。木と釘を持ってきて、ここに屋根を作ります

貴女 いいの?大変じゃない?

僕  僕たちのためですから

貴女 ありがとう

    雨が上がり、夜が明ける。
    空は快晴。朝日がのぼると共にどちらともなく起きる。
    夏を先取る太陽の光。

僕  今日は暑いですね。傘の中に入っていてください。そこなら、いくらか光もマシでしょうから。僕は作業に取り掛かります

貴女 何か手伝うことある?

僕  大丈夫です。頑張りますよ

貴女 わかった

    「僕」、作業を進める。
    木材を運び、頭を抱える。まだまだ釘の音は聞こえそうにない。

貴女 どう?完成しそう?

僕  まだまだ・・・・・・夏までに間に合うかな

貴女 そろそろ休む?

僕  もう少しだけ

貴女 無理しないでね

僕  うん

    どんどん夜になっていく。金槌が歪なリズムで刻まれていく。そして完全な夜になる。

彼女 少し進んだね

僕  ほんの少しですけどね・・・・・・

貴女 でも、ほら、もうちょっとで影ができる

僕  そう・・・・・・ねぇ・・・・・・

貴女 今日はあんまり貴方の顔を見なかったわ

僕  まぁ、傘の中にいたから

貴女 寂しい気持ち半分。嬉しい気持ち半分

僕  嬉しい?

貴女 頑張ってくれているんでしょ?

僕  ・・・・・・

貴女 寝ましょうか

僕  そうしましょう

    深い夜を過ごす。呼吸音だけを響かせて二人は眠る。
    翌朝、鈍重な雨雲が活発に活動。二人の呼吸音をかき消すほどの雨が降り始める。
    どちらともなく二人とも起きる。

貴女 雨だね

僕  雨ですね

貴女 今日は休みにする?

僕  もう少し進めたいです

貴女 風邪ひかない?

僕  気を付けます。少しだけですから

貴女 ほんとに?

僕  ほんとに

    「僕」、しらばく貴女の事を少し見つめた後、作業を始める。
    しばらく作業

僕  今日はこのぐらいにしておくかな

貴女 夕方になったら晴れるかも

僕  じゃあその時に少し進めようかな

貴女 疲れた?

僕  えぇ、まぁ

    「貴女」、笑う

僕  どうして笑うんです?

貴女 貴方、嘘が下手だから

僕  そうでしょうか

貴女 顔に出てるわ

僕  今日はいつにも増して元気ですね

貴女 今日は日差しが少ないから

僕  いっそこのまま雨だといいんですがね

貴女 それじゃ気が滅入るじゃないの

僕  それはそうですね

貴女 つらくないの?ずっと雨だとして

僕  つらいかも

貴女 ほら。どこまでいっても、雨は雨だよ

僕  ままなりませんね

貴女 そういうものだよ。人間って

僕  そういうものですか

    雲間から傾いた日が見える。時刻は夕方ごろ。雨がやみ、つらい晴れになる。

僕  晴れてきましたね

貴女 もうすぐ日が落ちるよ

僕  もう少し作業してきます

    初日よりリズミカルな金槌の音が響く。
    日没。作業が終わる。まだ「僕」は壁の上にいる

僕  ずいぶん暗くなりましたね

貴女 もう傘がなくても平気

    「貴女」、傘から出てくる。

僕  今日はあんまり貴女の顔を見なかったですね

貴女 あら

僕  今日は僕から

貴女 でも、残念

僕  ?

貴女 今日はこっそり貴方のこと、見ちゃったから

僕  いつ?

貴女 昼間。傘の端から顔を出して、ちらっとね

僕  ちゃんと入っててください

貴女 でも、嬉しいわ

僕  何がですか?

貴女 私の言ったことを覚えてくれていたんでしょ?それが嬉しいの

僕  そういうものですか?

貴女 そういうものよ

    お互い照れて、間が開く。

貴女 わたしね、貴方のその位置好きよ

僕  位置ですか?

貴女 あなたはずっと私を見てるから、気付くことはないでしょうけどね。私からは貴方と星が一緒に見えるのよ

僕  なるほど。たしかに、綺麗な星空ですね

貴女 それが好きなの

僕  僕ですか?それとも星ですか?

貴女 どっちも

僕  よろこんでいいんですか?

貴女 そうしておいてちょうだい

僕  ・・・・・・・寝ましょうか

貴女 ええ

    昨日よりも少し深い夜。疲れ切った「僕」の体にはたちまち睡魔が襲い掛かる。
    少し遅れて「貴女」も寝付く。
    翌朝。空は澄み切った快晴。いつもと同じようにどちらともなく起きる。

僕  見事な晴れですねぇ

貴女 一段と日差しが厳しくなったわね

僕  もうほとんど夏ですね。さて、そろそろ始めます

貴女 大丈夫?日差し?貴方もなんてことないって訳じゃないでしょう?

僕  まぁ。多少

貴女 屋根を作るの。つらくない?

僕  大丈夫ですよ。完成するんまでの辛抱です

貴女 ごめんね

僕  いえいえ。ほら、ちゃんと傘に入っておいてください

貴女 ありがと・・・・・・

僕  がんばりどころだな・・・・・・

貴女 ん?

僕  なんでもないですよ

貴女 そう・・・・・・・

    金槌の音色がリズミカルに響き渡る。
    そのうちに暗い夜になる。

僕  今日はこのぐらいで終わりましょうか

貴女 完成までもう少しね

僕  ええ、だいぶ近づきました

    「僕」、肩で息をする。だいぶ疲れている様子。

貴女 大丈夫?

僕  ちょっと・・・・・・疲れましたね

貴女 今日は早めに寝ましょう

僕  そうします

貴女 ねぇ質問していい?

僕  なんですか?

貴女 無理してない?

僕  してませんよ

貴女 ・・・・・・ごまかしちゃダメ

僕  ちょっとは

貴女 だめだよ

僕  でも、今が頑張り時なんです

    どちらかが何を言うのか、お互いに探り合う。
    「貴女」、「僕」を見つめる。

僕  分かりました。明日は休みます。でも、少し進めさせてください。このままじゃ夏までに間に合わないんです。無理はしませんから

    「貴女」、しばらく返事に悩むが、飲み込み首を縦に振る。
    翌朝、夏の近づきを知らせる快晴。
    二人、どちらともなく起きる。

僕  じゃあ、少しだけ

貴女 無理しちゃ、ダメだよ

僕  はい

    日差しを背中に感じながら屋根を使い続ける

僕  はぁはぁ

貴女 ねぇ?

僕  はい・・・・・・休みます

貴女 そうして

    「僕」、汗をぬぐいながら、遠慮がちに傘の中に入る。

僕  疲れた・・・・・・

貴女 ・・・お疲れ

    「僕」、「貴女」の隣に座る。体の力が抜け、頭を「貴女」に預ける。
    「貴女」は体に少し力を入れて、それを受け入れる。
    「僕」の顔は火照り、息の荒さが目立つ。
    酷暑に耐えた証の大粒の汗が「僕」の額から「貴女」の体に伝う。
    「僕」、汗を拭おうと試みるが、「貴女」に腕を抑えられる

貴女 いいから。動かないで

僕  はい・・・・・・

    「僕」の体から流れる汗が次々に「貴女」の体に付着していく。
    「貴女」、白い手で「僕」の額に触れる。熱と疲労が伝わっていく。

貴女 すごい熱

僕  太陽の陽を浴びていると、どうしても熱が体に籠ってしまうんです

    「貴女」、正面へと座りなおし、「僕」の頭を自分の白い右鎖骨部へと抱き寄せる。
    「僕」、体に力が少し入る。

貴女 しっかり休んで

    「僕」、体から力を抜く。

僕  冷たくて気持ちがいいです
    
    「貴女」が「僕」の体を自分の鎖骨部に押し付ける時、「貴女」の黒髪が「僕」の頭を包む。

僕  貴女の髪は夜みたいですね

貴女 どういうこと?

僕  ひんやりしていて、暗くて、日の光が届かなくて・・・・・・僕は、夜が好きなんです。夜になれば暑くないし、星は見えるし、あなたの近くにいけますから

貴女 ・・・・・・

    「貴女」、少し照れた様子で押し黙る

僕  もう少しこのままいてもいいですか?

貴女 ええ

    二人、しばらく互いの熱を確かめ合う。
    「僕」の熱が収まったところで、少し名残惜しそうに「僕」が頭を離す。

僕  もう大丈夫です。熱かったですよね

貴女 ううん。平気

僕  ・・・・・・あの?

貴女 なに?

僕  また、さっきの、頼んでもいいですか?時々で、

貴女 わかった

僕  ありがとうございます

    夕暮れ。
    体を休めているうちにまた夜が来る。
    もう入る必要のない傘の中。どちらとも出ようとせずに、むしろ体を近づけていく。

僕  もう夜ですね

貴女 ねぇ?

僕  はい?

貴女 私の髪を夜と重ねてくれたじゃない?

僕  はい

貴女 今もそう思う?

僕  はい

貴女 そう・・・・・・

僕  あまり共感はできませんか?

貴女 うーん、少しだけ分かるかも

僕  そうなんですか

貴女 この傘、貴方が私のためにくれたもの。私、この傘が好きよ。私だけの優しさだもの。貴方みたいで好き

僕  そんな風に言ってもらえると、照れますね

貴女 でもね、この傘に一人で入っていると少し寂しい心地がするの。こんなに広いんですもの。でも今は寂しくない。きっと今は夜なのね

僕  そうですね。今はすごくいい夜です

貴女 いい夜ね。幸せよ。貴方が隣にいるのだから

僕  僕も、幸せです

貴女 私、もう何が好きなのか分からなくなってきた。星が好きなのか、貴方が好きなのか、夜が好きなのか、もうなにがなんやら

僕  考えると、もう分からなくなりますよね

貴女 はじめは星が好きなだけだった。でも、そのうち貴方が好きになって、私は夜は最初から好きだった気がして

僕  好きなものが沢山。いい世界になりましたね

貴女 そうね

僕  僕は夜が好きです。そして貴女も好きです

貴女 私も、それでいいのかな

僕  いいんですよ。それで。きっと

    お互い、これ以上野暮な言葉は交わさない。
    目を閉じて、いつもより深く温かい夜を過ごす。
    気怠い熱が飽和する朝。朝日から少し遅れた頃、「貴女」の寝息の隣で僕が目を覚ます。
    「僕」、傘の中から出ようとする。
    「貴女」、遅れて目を覚ます。

貴女 もう起きたの?元気ね

僕  はい。今日も快晴ですよ

貴女 ほんとうだ

僕  僕は屋根を作ります

貴女 私、少し買い物に行ってきていい?

僕  はい。いいですけど、何を買うんですか?

貴女 お楽しみ

僕  そうでしたか

貴女 行ってくるね

僕  お気をつけて

    「貴女」、長い髪を束ねて出発の準備をする。
    そのまま傘を持ちあげ歩いていく。
    「僕」、屋根を作り続ける。
    「貴女」、しばらくして帰宅する。

僕  おかえりなさい

貴女 ただいま

僕  さて、怒られないうちに休もうかな

    「僕」、顔ほ少し綻ばせながら傘の中に入ってくる。
    「貴女」、髪をほどき両手を広げる。

貴女 来る?

    「僕」、誘われるがまま、「貴女」へと体を任せ、「僕」に夜が来る。
    「僕」、「貴女」の耳に輝くピアスに気づく。

僕 あれ?ピアス?

貴女 気付いた?星みたいでしょ?

僕  触ってもいい

貴女 どうぞ

    「僕」、ピアスを弄る。

僕 綺麗

貴女 あなたに少しでも休んでほしくてね。夜に近づいてみたの

僕  ・・・・・・ありがとう

貴女 もう少し、休もう?

僕  もう少し、頑張らせてくれませんか

貴女 分かった

    太陽の外と髪の中を繰り返す。太陽と夜を繰り返す。屋根作りと貴女の中を繰り返す。
    そして屋根が完成する。

僕  さぁ、完成だ 

    最後の釘を打つ。

貴女 ほんとうにありがとう

僕  もう随分夏が進んでしまって、とっくに月が元気になってますけども

貴女 うん。ありがと

    どこを見る宛もなく、ただ、お互いの顔を見合わせる。ふと、僕が気付く

僕  ピアス?外しているの?

貴女 うん。もう必要ないでしょう?

僕  似合ってましたよ

貴女 ありがと。また付けるよ

僕  ピアスの跡、残っているんですね

貴女 うん。そういうものだから

僕  痛くない?

貴女 ちっとも、痛いのは最初だけ

僕  この傘も、もう必要がなくなりましたね

貴女 そうね。名残惜しいわ

僕  大切に使っていきましょうよ

    少し息を付き、また「僕」が話始める。

僕  貴女は、この傘を、僕の優しさだと、そう言ってくれたこともありましたよね

貴女 ええ

僕  だから、この傘のことも好きだと

貴女 ええ

僕  その気持ち、よく分かります。僕には、このピアスがとても愛おしい。そう感じるのです

貴女 似た者同士ね、私たちは

僕  そうですね
 
    僕、貴女の顔を見て、おずおずと提案する

僕  少し星を見ていきませんか

貴女 ええ、いいですよ

    「僕」語り始める

僕  傘も、ピアスも必要が無くなった僕たちは星を眺めた。ひとしきり星を楽しんだ後、家に入った。

僕  彼女は家に入るなりピアスを付けて、白肌の鎖骨を見せた。

僕  夜は深く、そして暗い。そこにかかった屋根は、外と僕たちを一層隔てた。翌日の朝、僕らは光に起こされることはなかった

僕  雲が薄くなり、貴女の白い肌が布に隠れ始めた頃に、貴女が遠くを見た

貴女 ねぇ、あそこに緑が見えるよ

僕  そう?僕も目が悪くなったかな

貴女 夏が過ぎて、秋が来たのよ。この肌寒い風が、種を運んできたんだわ

僕  ここは砂だらけだよ?

貴女 あっちは土がある

    貴女、草原に向かって進み始める。追いかけようとするが、砂に足を取られて、追いかけることができない。

僕  そうして貴女は草原に行ってしまった。砂漠に僕を残して

僕  貴女は何を見たんだろう。なぜ、それを見たんだろう。僕にはなぜ見えないんだろう。

僕  この砂が貴女と逆さまに流れていくのは、きっと僕が変わらないせいだ

僕  屋根にしがみついて、あの時のように登り、草原の方向へ流れる雲を一人で眺めた。そして僕は壁の外にでた。この屋根には僕一人では入れない。砂の流れのまま、僕はより砂の多い方へ。

僕  この屋根はしばらく後に崩れたらしい

                   完

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